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第9話 地下水路フォーマット依頼
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放課後、俺は単独で王都地下へ潜った。
狂信者に見つかる前に、デバッグを終わらせるためだ。
【System:目的地(王都地下・旧浄水プラント)に到達しました。対象エリアのウィルススキャンを実行しますか? [YES/NO]】
「ああ、YESだ。ちゃっちゃと済ませて帰るぞ」
俺が暗い地下水路の中を歩きながら頭の中で念じると、視界に緑色のプログレスバーが表示された。
『Scan 10%...30%...70%...100%』
『警告:スキャン完了。対象エリアに【自己増殖型ナノマシン暴走体(クラスA)】のコロニーを発見』
「自己増殖型……?」
嫌な予感がした。
地下道を進むにつれて、淀んだ水路の壁面や天井に、黒紫のような不気味な粘菌……いや、それ自体が蠢く血管のようなものがビッシリと張り付いているのが見えてきたのだ。
「うわ、気持ち悪っ……」
それはただのカビや苔ではない。
微弱な魔力を帯びており、水路の壁を浸食しながらドクドクと脈打っている。
おそらくこれが、AIの言っていた『重度システム感染』の正体だ。
『対象オブジェクトの削除(デリート)を開始しますか? [YES/NO]』
「YES! 頼むから一瞬で消してくれ!」
俺がYESを選択した瞬間。
視界の表示が、唐突に警告の『赤』へと切り替わった。
『エラー:アクセス拒否(Access Denied)』
『対象オブジェクトはローカルネットワークから切り離されています。ワンクリックでの遠隔削除(強制パッチ)は無効です』
「……は?」
思わず声が出た。
これまでは『YES』を押すだけで、どんな魔法も魔獣も一瞬でデータごと消去できていたのだ。それが効かない?
『推奨アクション:対象の中枢コアに物理的に接触し、管理者権限(マニュアル)によるルート上書きを実行してください』
「マニュアルってなんだ! 俺はワンクリックのデバッグしかできないんだぞ!?」
その時。
俺のデカい声に反応したのか、壁面にこびりついていた黒紫の粘菌が一斉に膨張し始めた。
粘液がボタボタと水路に落ち、それらが集まって人型のドロドロの怪物——スライムの変異種のような『魔物』を何十体も形成していく。
「嘘だろ……これ全部相手にしながら、一番奥のコアまで行けってのか!?」
魔力ゼロの俺に、そんな芸当ができるわけがない。
剣も魔法も使えない、ただ視界にUIが出てるだけの一般人なのだから。
「ピギャァァァス!!」
泥の化け物たちが、一斉に俺に向かって飛びかかってきた。
「終わった……俺の公務員ライフ……っ!」
俺が思わず目を瞑り、両腕で顔をかばった、その瞬間だ。
「——『絶対零度(コキュートス)』!」
凛とした声と共に、地下水路の空間全体が白く染まった。
飛びかかってきていた泥の化け物たちが、空中で完全に凍結し、パラパラと氷の粒になって砕け散ったのだ。
「え?」
目を開けると、俺の前に細い背中が立ち塞がっていた。
銀色の長髪を揺らしながら、杖を構える天才少女。
「エ、エレナ!? なんでお前がここに……!」
「アッシュ様一人でこっそり向かわれるとは、水臭いではありませんか」
エレナは振り返り、神に対するような敬愛の眼差しで俺を見た。
「アッシュ様が、我々のような俗物を巻き込まないよう、一人で王都の危機を救おうとされていたこと……このエレナはすべてお見通しでございます」
「違う! こっそり処理して目立ちたくなかっただけだ!」
しかし、俺の叫びなど彼女の耳には入っていないらしい。
「さあ、アッシュ様。私めが露払いを務めさせていただきます。大いなる『神の御業』を放つための道を、どうか私に切り開かせてくださいませ!」
頼もしいのかポンコツなのか。
かくして俺は、勘違いを極めた天才ヒロイン・エレナと共に、地下水路の最奥——『コアへの手動デバッグ(物理)』へと挑む羽目になってしまった。
狂信者に見つかる前に、デバッグを終わらせるためだ。
【System:目的地(王都地下・旧浄水プラント)に到達しました。対象エリアのウィルススキャンを実行しますか? [YES/NO]】
「ああ、YESだ。ちゃっちゃと済ませて帰るぞ」
俺が暗い地下水路の中を歩きながら頭の中で念じると、視界に緑色のプログレスバーが表示された。
『Scan 10%...30%...70%...100%』
『警告:スキャン完了。対象エリアに【自己増殖型ナノマシン暴走体(クラスA)】のコロニーを発見』
「自己増殖型……?」
嫌な予感がした。
地下道を進むにつれて、淀んだ水路の壁面や天井に、黒紫のような不気味な粘菌……いや、それ自体が蠢く血管のようなものがビッシリと張り付いているのが見えてきたのだ。
「うわ、気持ち悪っ……」
それはただのカビや苔ではない。
微弱な魔力を帯びており、水路の壁を浸食しながらドクドクと脈打っている。
おそらくこれが、AIの言っていた『重度システム感染』の正体だ。
『対象オブジェクトの削除(デリート)を開始しますか? [YES/NO]』
「YES! 頼むから一瞬で消してくれ!」
俺がYESを選択した瞬間。
視界の表示が、唐突に警告の『赤』へと切り替わった。
『エラー:アクセス拒否(Access Denied)』
『対象オブジェクトはローカルネットワークから切り離されています。ワンクリックでの遠隔削除(強制パッチ)は無効です』
「……は?」
思わず声が出た。
これまでは『YES』を押すだけで、どんな魔法も魔獣も一瞬でデータごと消去できていたのだ。それが効かない?
『推奨アクション:対象の中枢コアに物理的に接触し、管理者権限(マニュアル)によるルート上書きを実行してください』
「マニュアルってなんだ! 俺はワンクリックのデバッグしかできないんだぞ!?」
その時。
俺のデカい声に反応したのか、壁面にこびりついていた黒紫の粘菌が一斉に膨張し始めた。
粘液がボタボタと水路に落ち、それらが集まって人型のドロドロの怪物——スライムの変異種のような『魔物』を何十体も形成していく。
「嘘だろ……これ全部相手にしながら、一番奥のコアまで行けってのか!?」
魔力ゼロの俺に、そんな芸当ができるわけがない。
剣も魔法も使えない、ただ視界にUIが出てるだけの一般人なのだから。
「ピギャァァァス!!」
泥の化け物たちが、一斉に俺に向かって飛びかかってきた。
「終わった……俺の公務員ライフ……っ!」
俺が思わず目を瞑り、両腕で顔をかばった、その瞬間だ。
「——『絶対零度(コキュートス)』!」
凛とした声と共に、地下水路の空間全体が白く染まった。
飛びかかってきていた泥の化け物たちが、空中で完全に凍結し、パラパラと氷の粒になって砕け散ったのだ。
「え?」
目を開けると、俺の前に細い背中が立ち塞がっていた。
銀色の長髪を揺らしながら、杖を構える天才少女。
「エ、エレナ!? なんでお前がここに……!」
「アッシュ様一人でこっそり向かわれるとは、水臭いではありませんか」
エレナは振り返り、神に対するような敬愛の眼差しで俺を見た。
「アッシュ様が、我々のような俗物を巻き込まないよう、一人で王都の危機を救おうとされていたこと……このエレナはすべてお見通しでございます」
「違う! こっそり処理して目立ちたくなかっただけだ!」
しかし、俺の叫びなど彼女の耳には入っていないらしい。
「さあ、アッシュ様。私めが露払いを務めさせていただきます。大いなる『神の御業』を放つための道を、どうか私に切り開かせてくださいませ!」
頼もしいのかポンコツなのか。
かくして俺は、勘違いを極めた天才ヒロイン・エレナと共に、地下水路の最奥——『コアへの手動デバッグ(物理)』へと挑む羽目になってしまった。
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