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1章:十八禁BLゲームの中に迷い込みました!
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しおりを挟む「ヒビキさま?」
「ううん、なんでもない。少し気になって」
緩やかに首を左右に振ると、リーフェは不思議そうにおれを見たけれど、すぐに「それでは失礼しますね」と軽く会釈して廊下を歩いていく。おれは小さく息を吐いてから食事の乗ったトレイをテーブルに置いてソファに座る。
食事はサンドウィッチとサラダ、コーンスープだ。軽めのものにしてくれたことに感謝して手を合わせる。
「いただきます」
サンドウィッチに手を伸ばして頬張る。シャキシャキのレタスとハムの塩加減粒入りのマスタード入りマヨネーズがベストマッチしていて美味しい。サラダもさっぱりしていて、コーンスープはまろやかな塩味で整えられていて……食べ進める手が止まらない。すべて食べ終えて「ごちそうさまでした」と手を合わせる。
食器を下げてもらおうと鈴を鳴らしてすぐに扉がノックされた。どうしてこれだけの音でわかるのか謎だ。
「どうぞ」
おれがそう答えると扉が開いてじいやさんが入ってきた。手には紅茶を持っている。
「食後にいかがでしょうか」
「あ、ありがとうございます」
テーブルに紅茶を置いてじいやさんは食器を下げようとする。おれは紅茶の入ったカップを手に取って一口飲む。甘い……?
「甘い、ですね?」
「ええ。甘いものは心が和みますでしょう?」
ほう、と息を吐いた。確かに少し力が抜けたような気がする。じいやさんは食器を片付ける手を止めておれに微笑みかけた。それに気付いて首を傾げる。
「リーフェと仲が宜しくなったようですね」
「色々な話しを聞かせてもらいました」
じいやさんは「そうですか」と嬉しそうに声を弾ませた。なにがそんなに嬉しいのだろうかと彼を見上げると、じいやさんは深々とおれに頭を下げた。
「リーフェは私の孫娘なのです」
「え!?」
驚いて声が出た。リーフェがじいやさんの孫娘!?
じいやさんはひとつうなずき、ぽんぽんとおれの頭を撫でた。孫娘と仲良くなったのがそんなに嬉しいのだろうか。
「私がルードさまについて行くことを知ったリーフェが、王都の学園に入るのを理由に付いてきたのです」
「ん? 学園に通いながら働いていたの?」
「そうなりますね」
日本だとバイトしながら学校に通っているようなもんか? それで恋人も出来た、と。すごいなリーフェ。ちなみにおれはバイト経験ゼロだ。そのうちやってみたいとは思っていたけど。
「……あれ? でもじいやさんはどうしてルードについてこようと思ったんですか?」
「……心配だったから、ですな。あの頃のルードさまは不安定でしたから。それを旦那さまもご存知だったので、お目付け役としての意味もあったでしょう」
「へえ……」
不安定なルードとはどんな状態のルードなのだろう。でもまぁ、まだ小さい子がいきなり家族と離れて暮らすってのは不安だよな。
「そう言えば、ヒビキさまは生活魔法を使えないのですか?」
ドキッとして肩が跳ねた。その様子を見てじいやさんは眉を下げる。
「リーフェに聞いた?」
「はい」
「そっか……」
使えないことは本当だし……。おれが頬を掻いてなにを言おうかと考えていたらじいやさんはこう言い出した。
「明日から、練習をしてみますか?」
「え?」
「生活魔法が使えれば、便利ですから」
「そもそもおれ、魔力があるかどうかわからないけど……?」
「物は試しに」
ね、と微笑まれて思わずうなずく。おれにも使えるのなら便利なことは確かだし。
ルードの居ない間に覚えて驚かせてみるのもちょっと楽しそう、なんて悪戯心が。
「まずは、水をお湯に変えるところから始めましょうね」
「それも生活魔法?」
「応用すればすぐにお風呂に入れますからね。入浴はどうしますか?」
「あ、お願いします。……それと、水とタオルを寝室に持ってきてもいいですか?」
「構いませんが……。それでは、用意をしてきますね」
じいやさんは空になった食器の乗ったトレイを手にして部屋を出る。おれは残っていた紅茶を一気に飲み干す。すっかり冷めちゃったけれど、それでも美味しい紅茶だった。
水とタオルをお願いしたのは、これから行うことの後処理を考えて、だ。生活魔法が使えないおれだから、どうしても必要になる。
……それにしても、生活魔法ってどんな区分? 攻撃魔法や治癒魔法もあったりするのかな。そこら辺は明日生活魔法を習う時に聞いてみよう。
――そして、十分もしないうちに「用意が出来ました」と声が掛けられた。相変わらず早い。おれはソファから立ち上がって扉に向かう。
もうお風呂に入ってしまおう。そう思って扉を開けるとじいやさんが居て、浴室まで案内してくれた。いつもルードと一緒だった道をじいやさんと歩くのはなんとなく新鮮だ。
「バスローブとタオルは用意してあります。先程仰っていたタオルと水はいつお運びしましょうか」
「ええと、じゃあおれがお風呂から出たらお願いします」
「……ヒビキさま。私にも敬語を使う必要はないのですよ?」
「え」
意外な言葉に顔が固まった。だってじいやさんのほうがおれより年上だし、いやそれを言ったらリーフェも年上なんだけど、彼女の場合はじいやさんより年が近いと思ったし、でもじいやさんがそれを望むなら敬語をやめたほうがいいのか……?
「……ぜ、善処します」
今朝のルードがこんな言葉を言っていたような気がする。おれの返答にじいやさんはくすりと笑い声を上げ、「是非お願いします」と朗らかに笑う。
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