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1章:十八禁BLゲームの中に迷い込みました!
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しおりを挟む小鳥の鳴き声が聞こえて静かに目を開ける。カーテンの隙間から光が差し込んできてちょっと眩しい。
ベッドを抜け出してクローゼットに向かいチュニックに着替える。この世界の洗濯事情ってどうなっているんだろう……、水とタオルに視線に向けて肩をすくめた。
昨日渡された鈴を鳴らすと、すぐに扉をノックする音が聞こえた。
相変わらず早い。扉まで走り鍵を開けるとすぐにじいやさんが顔を出した。
「おはようございます、ヒビキさま」
「おはよう、じいやさん。早速で悪いんだけど、ここ洗濯ってどうなってますか?」
「洗濯、ですか? 無論、使用人がしていますが……」
「おれがやっちゃダメ?」
小首を傾げて問うと、じいやさんはなにかを悟ったように微笑んだ。そしてきっぱりとこう言った。
「ダメです」
「えっ」
断られると思わなくて思わず声が出た。じいやさんは部屋に入ると水とタオルを持ってそのまま「お預かりします」と出て行く。あまりの早業に止める隙もなかった。
慌ててじいやさんを追うように部屋を出る。そんなにタイムラグはなかったハズなのにすごく遠いところにいてびっくりした。
「な、なんでダメなんですか!?」
じいやさんに追いつくために廊下を走る。じいやさんは一度ぴたりと足を止めて、おれが追いつくのを待ってくれた。
「それが使用人の仕事だからです」
「おれがやりたくても?」
「ええ。坊ちゃんからもそのように言われていますしね。ヒビキさまには屋敷に関する仕事を一切させないこと、と」
「……それは、おれの信用がないから?」
「いいえ、ただ坊ちゃんがヒビキさまの手を煩わせたくないだけですよ」
クスクスと笑うじいやさんに、おれはどういう顔をすればいいのかわからなかった。
というか、今の今まで気付かなかったおれのバカ。本当は初日に出来ることがあるなら手伝うって言うべきだったんだ。
おれの表情の変化に、じいやさんが困ったように眉を下げた。
「それに、ヒビキさまには覚えないといけないことが多いでしょう?」
「……文字とか?」
こくりとうなずくじいやさん。確かに覚えないといけないことは多いけれど、ただお世話になっているだけじゃ……。
「ん? ルードが服を作るのはいいの?」
「ええ、それは伝統ですから」
伝統だといいのか……? うーん、この世界の常識がさっぱりわからないっていうのも問題だな……。
……この世界のことを知りながら自分に出来ることを探していくしかない、か。
「じゃあ、あの……、おれが刺繍をするのは?」
「ヒビキさまが?」
この国の伝統を聞いたときに、ふと思ったのだ。逆はどうなんだろうって。おれがルードになにか出来るならやりたい。
素人だから、下手だろうし練習しないといけないのはわかってる。だけど、それでルードが喜んでくれるのならやりたい気持ちが強いんだ。
「ハンカチにやってみたいんだけど……。でも、おれやったことがないから誰か教えてくれると助かるなぁって……」
「それならばこの屋敷で刺繍に長けている者を呼びましょう。が、まずは生活魔法の練習からですよ」
「もちろんです!」
「ヒビキさま、時折敬語が混じっています」
「……難しい!」
じいやさんの指摘通りだ。言わないように気をつけてはいるのだが、どうしても敬語になってしまう時がある。昨日の今日で敬語をやめるのは難しい。
「ヒビキさまはそのまま食堂に向かってください、朝食の用意が出来ておりますので」
「やっぱりそのタオルおれが洗っちゃダメ……?」
「ダメです」
一刀両断とはこのことか!? ってくらいばっさり言い切られた。どうやら諦めるしかないようだ……。
致したことを思うと自分で洗いたいけど、これは絶対に洗わせてもらえない流れだ。
大人しく食堂に向かい、美味しい朝ごはんを食べる。洗濯係の人に申し訳ない気持ちを抱きながら……。
食べ終わるとすぐにじいやさんに呼ばれた。
「生活魔法の練習はこちらで行いましょう」
彼の後を着いて行くと、ある一室に着いた。寝室からは遠いし、書庫からも遠い場所だ。
「ここは……?」
「魔法の練習をするには、この部屋が最適ですので」
「最適な部屋なんてあるんだ」
「ええ。魔力が暴走しても平気な仕掛けがあるんです」
魔力の暴走……、なんだか怖い言葉が出てきたぞ。そもそも本当におれ魔力あるんだろうか。魔力って日本ではどんな分類に入るんだ? 霊感? だとしたら完璧にないぞ。
「緊張されていますか?」
「魔力があるのかどうかが……、そっちが不安かな」
「それは、やってみないとわかりませんね」
じいやさんは部屋の真ん中にあるテーブルの上にコップを置いて水を注ぐ。最初から用意してあったみたいだ。
「まずはじいやがお手本を。このようにコップの上に手を翳
かざ
して、魔力を注ぐと……」
「湯気が出てきた!」
「このようにお湯になったら成功です」
じいやさんはお湯が入ったコップを下げると、別のコップを取り出して水を注ぐ。そしておれを促した。
おれはとりあえず、さっきの彼のように手を翳す。……魔力を注ぐってどうやればいいんだ?
目を閉じてお湯になれ、と念じてみたけれど、湯気が当たる感覚はない。目を開けて確認するけどやっぱりお湯にはなってない。
「……うーん?」
「最初はそんなものですよ」
どうやればお湯になるのか首を捻るも、ぽんぽんとじいやさんに肩を叩かれた。
慰められてるなぁ、と思いつつもう一度お湯になれと念じてみる。ちなみに手応えはない。
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