【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

守屋海里

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1章:十八禁BLゲームの中に迷い込みました!

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 ぐっすりと眠って起きたのは昼に近い時間だった。……そんなに遅くに寝ているわけでもないのにこの時間に起きるとは。目覚まし時計が欲しい……。
 ともかく着替えてリアに会わないと。早速刺繍のやり方を教わる気満々だ。
 ふとナイトテーブルに視線を向けるとこの前飾った花が凛と佇んでいた。起き上がって花弁に触れてみる。

「今日もキレイに咲いているね。ありがとう」

 一昨日一輪挿しに飾った花はまだ元気だ。紺色の花を撫でてからクローゼットに向かい、今日も今日とてチュニックを着る。それからカーテンまで走って、ばっと広げてみた。
 太陽が眩しく輝く、雲ひとつないキレイな青空。まるでルードの瞳のようだ。
 あと四日でルードが帰ってくるから、その間にリアに教わらなくちゃ。どんな刺繍にしたいかはもう考えてある。
 チリンチリンと鈴を鳴らすと、扉がノックされた。相変わらず早い。そしてよくこんな鈴の音だけでわかるな……。

「お呼びでしょうか、ヒビキさま」
「その声は――リア? 入って入って」
「失礼します」

 がちゃりと扉を開けたのはやっぱりリアだった。声でわかるようになってきたぞ。リーフェの声は凛としていて、リアの声は澄んでいる。どちらも良い声だと思う。暫定一位はルードなんだけど、彼の声は破壊力が強すぎる。

「ふふ、ヒビキさま、寝癖がついていますよ」
「えっ」

 慌てて髪を手櫛で整えた。そういや今日は姿見を見ていない。リアはおれに近付くと櫛を取り出してさっさと慣れた手つきで髪を梳いてくれた。

「……? 慣れてるね?」
「これでも二児の母ですもの」
「既婚者だったの!?」

 にこやかに肯定する彼女にびっくりして目を瞬かせた。若いお母さんだなぁ!
 二十代くらいに見えるんだけど、リーフェの時は外しちゃったし、おれの勘はきっと良くない。

「五歳と三歳の子がいます」
「へぇ……。男の子? 女の子?」
「五歳が男の子、三歳が女の子です」

 コウノトリに運ばれてきた子か。リーフェが愛し合った者が真に願った時にって言っていたっけ。

「その……、リアの配偶者はどんな人?」

 櫛を戻している彼女に尋ねてみると、彼女は一回ぱちくりと目を瞬かせてから頬に手を添えた。それから考えるように首を傾げて「そうですねぇ……」と呟き、それからパンっと頬の横で手を合わせて朗らかに言った。

「クマみたいな人――でしょうか」
「……クマ?」
「大きいんですよ、彼は。ルードさまより背が高くて、がっしりした筋肉が素敵な夫なんです」

 ……ルードより背が高くて……? ルードって百九十くらいだから、それより高いとなると二メートル以上あるってこと? そして、筋肉がすごい人……。リアってワイルド系が好みだったんだろうか、と変なことを考えつつも、リアたちは男女の夫婦なんだなって思った。
 BL、GL、NL、本当になんでも有りな世界なんだな、ここ。

「あれ? じゃあ旦那さんが育児しているの?」
「保育所が王都にあるので、そこで預かってもらっています。夫は商人ギルドの受付で働いていますよ」
「商人ギルドの、受付?」
「怖い顔しているから、用心棒にぴったりなんですって。ふふ、慣れるとチャーミングなんですけどね」

 まだまだおれが知らないことがたくさんありそうだ、この世界。やっぱり一度王都をこの目で見てみたいな。

「それで、ご要件は?」
「あっ、そうだった! 早速リアに刺繍を教えてもらいたいんだけど、良いかな?」
「もちろんでございます。場所はどうなさいますか?」
「ここでも良い? 実は、あの花を刺繍したくて。見本が近くにあったほうが良いかなって」

 ナイトテーブルの上にある一輪挿しを指すと、リアは一瞬息を飲んで、それからおれに向かって花のような笑みを浮かべた。

「坊ちゃんの花ですね……。素敵な刺繍になるでしょう。では、私は用意が出来次第戻りますので、ヒビキさまはお待ちください。それと、タオルと水は下げますね」
「うん、ありがとう」

 ナイトテーブルまでスタスタと軽快に歩いて、タオルと水を回収してからおれに頭を下げたリアは部屋から出て行った。
 おれはソファに座って背もたれに背を預ける。天井を見上げてゆっくりと息を吐いた。今更だけど、刺繍って難しそうだ。おれにも出来るかな……?
 十分もしないうちにリアは戻ってきて、それからおれにみっちり刺繍のやり方を教えてくれた。途中、昼食を摂りながら。
 たっぷり日が暮れるまで刺繍のやり方を教えてくれた……。ここの人たちは教え方が結構スパルタな気がするのは気のせいじゃないと思う。
 それでも何度も練習用の刺繍をしているうちに、どんどんとわかってきた気がした。それを見たリアが優しく目元を細めて声を掛けてきた。

「少し休憩しましょう。目もお疲れでしょう?」
「……うん、なんか疲れた……」

 ずっと集中していたせいか、目がちょっと疲れてる。シパシパする感じ。刺繍をローテーブルに置いてぐいーっと背伸びをした。同じ姿勢だったから躰が固くなっている気がして、解すように肩をぐるぐる回すとちょっとだけマシになったような気がする。

「夕飯はどうなさいますか? このままこちらで? それとも食堂で?」
「こっちにお願いします。食べたらすぐに練習したいので」
「かしこまりました」

 刺繍糸をそのままにしてもらって、リアが部屋から出て行くのと同時にもう一度背伸びをした。慣れないことをしているからもあるかな、この疲労感。だって日本に居た時刺繍なんて全然やらなかったし。
 家庭科はあまり良い成績とは言えなかったし……。リアの作ったお手本のキレイな刺繍みたいには出来ないかもしれないけれど、おれだってなにかしたい。練習用の布を手にして小さく息を吐いた。
 ――ルードって器用だったんだな、と袖の刺繍を見てしみじみ思った。そう言えばチュニックの刺繍も上着の刺繍も同じ花だった。花の種類なんてわからないけれど、日本で見たことのない花も多いしなー……。
 品種改良で出来た花を刺繍しているのかもしれないけれど、この花一体どんな理由があって刺繍したんだろう? ちょっと気になってきたぞ。
 リアが戻ってきたら聞いてみよう。
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