【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

守屋海里

文字の大きさ
36 / 222
1章:十八禁BLゲームの中に迷い込みました!

35

しおりを挟む
 スープを頂いてお腹も落ち着いたところで刺繍を再開した。何枚かワンポイントの刺繍を繰り返して、リアが一枚ずつラッピングをしてくれた。あとはこれをルードに渡すだけ、になったわけだけど……。
 午前中からずっと刺繍をしていたからか、なんだか躰が固くなった気がする。解すように肩をぐるぐると回す。

「ふふ、お疲れさまでした、ヒビキさま」
「リアもね。付き合ってくれてありがとう」

 お礼を言うとリアはただ微笑んだ。ここの屋敷の人たちは本当にいい人ばかりだなぁ……。しみじみとそれを感じつつ、おれはリアがラッピングをしてくれたハンカチをクローゼットに隠した。

「さて、これからどうしますか?」
「あー……、ちょっと躰を動かしたいんだけど、良い場所ある?」
「運動ですね。……それでしたら、庭をぐるりと一周するのも良いと思いますよ」
「庭を?」
「花壇をぐるりと一周するんです。そこそこ広いので、良い運動になるかと」

 なるほど……。おれがうなずくとリアは庭まで一緒に来てくれた。今日の庭当番は誰だろう……。昨日はニコロだったけど。
 庭にはじいやさんが居た。今日は彼が当番だったようだ。

「お疲れさまです」
「おや、リア。ヒビキさまも」
「今日はじいやさんが庭当番ですか?」
「ええ。少し休憩していたところです。ところで、花を見にいらしたのでしょうか?」
「あ、ううん。ちょっと躰を動かしたくて。庭をぐるりと一周すると良いってリアが教えてくれたんだ」

 そうでしたか、と優しく微笑むじいやさんに、うなずくリア。さっそく一周しようとするおれを微笑ましく見守るふたり。……ここの屋敷の人たちもおれに甘いよな……。
 とりあえず庭を一周。久しぶりに躰を動かす――……、あ、動く前に準備運動! 危ない危ない、忘れるところだった。しっかりと準備運動をしてから歩き出す。
 ウォーキング、かな。姉に教わった通りに体を動かす。少し歩いただけでも息が切れそう。体力落ちてるなぁ! そりゃそうだ……一週間以上屋敷の中に居たんだから。これからはもっと運動しないとまずいよな……。
 十分くらいも動いていると躰がポカポカしてきた。なんだか懐かしい。
 ぐるりと一周……体感二十分くらいだったけど……広いなこの庭!
 もう一周しようとまた歩き出す。今度は花に目を向けながら。色とりどりの花々は見ていて楽しい。きれいだなぁっていつも感心してしまう。
 久しぶりに躰を動かしたからか、二周しただけなのに心拍数がヤバい。これはもう日課にしよう……。せめて元の体力に戻りたい……。

「お疲れさまです、ヒビキさま」

 リアがおれにタオルを渡してくれたので、それを受け取って滲んできた汗を拭う。

「ありがとう。なんか久々に動いたなー」
「仕方ありませんよ、まだ一週間くらいしか経っていませんもの。この屋敷には慣れましたか?」
「それはもう。みんなよくしてくれるし……」
「ヒビキさま、これをどうぞ」

 じいやさんが渡してくれたお茶を飲む。水分が躰に染み込んでいくのがわかる。一気に飲み干すと、すかさずもう一杯空いたグラスにお茶を注いでくれた。それを今度はちびちびと飲む。

「どうしますか、今日はこのままお風呂に向かいますか?」
「あ、そうだね。汗流したいや」

 そのままにしておくと風邪引きそうだし。ルードが帰ってくるのは明後日のハズだ。体調は万全にしておきたい。

「それでは私たちはこれで失礼しますね」
「仕事を中断させちゃってごめん!」
「いいえ、お気になさらず。ヒビキさま」

 風呂場へ向かおうとしたおれを、じいやさんが呼び止めた。おれが首を傾げると、彼は人懐っこそうな笑みを浮かべてこう尋ねた。

「自分の心に、もう迷いはありませんかな?」
「――うん、大丈夫。ありがとう、じいやさん!」

 おれは自分の胸元に手を置いて目を閉じて、それからすぐに瞼を上げてじいやさんに弾んだ声を返した。じいやさんはそれに一瞬目を大きく見開き、それから大きくうなずいてくれた。
 そんなおれらを、リアが首を傾げて眺めていた。
 軽く手を振ってじいやさんと別れ、リアと一緒に風呂場へ向かう。リアがすぐに用意しますね、と風呂場へ向かい、本当にすぐに戻ってきて驚いた。生活魔法を使っているのはわかるけれど、どんな風に用意してくれているのかはやっぱり見せてもらえなかった。

「バスローブとタオルを準備しますので、少々お待ちください」
「うん」

 五分もしないうちにリアがバスローブとタオルを持ってきてくれた。おれはそれを受け取って脱衣所に入る。服を脱いで浴室に足を踏み入れ、シャワーを出すと髪を濡らして頭を洗い始める。
 ルードが明後日帰ってくるってことは、また彼に頭を洗ってもらえるのかもしれない。ルードって髪の洗い方うまいんだよなぁ……。気持ちよくて寝そうになるくらい。
 一緒に風呂に入っていた時はおれもルードの髪を洗わせてもらったけれど、彼の髪は案外固くて、絡まりづらい。まっすぐきれいなストレートの髪だ。……なんであんなに長くしているんだろう?
 わしゃわしゃと頭を洗いながらそんなことを考えていた。
 ……っていうか、おれ、ルードが居ない間、ほぼ彼のことを考えない日はなかったよな……。なんていうか、うん。……恋愛経験ゼロだからか、ただ単におれが鈍いからか、自覚するのが怖かったからなのか……多分、その全部。
 シャワーでシャンプーの泡をきれいに落として、トリートメントをつける。タオルを濡らして絞り、髪を包み込むようにして巻く。トリートメントを浸透させる間に躰を洗って、石鹸の泡を落とす時に一緒にトリートメントも流す。
 それからお風呂に入って躰を温める。少しぬるめのお湯は心地よく、全身に温かさがじんわりと広がっていく感覚。お風呂ってやっぱりいいなぁ……。
 しっかりと躰を温め、お風呂から出た。バスローブに身を包んでから精霊さんにお願いして躰と髪を乾かす。一瞬で乾いて本当に便利だ。
 ……さて、今日はこれからどうしよう。寝室に戻ってルードの手紙を読みなおそうか。それとも書庫で文字の練習?
 その前に着替えよう。さすがにまだ寝る時間じゃない……。
 とりあえず寝室に向かい、クローゼットから服を取り出して着替える。バスローブはチュニックの掛かっていたハンガーに掛けて、違うところに吊るしておく。
 それからルードからもらった手紙二通を持ってソファに座り、一通目から読み直した。
 ルードは昔からこういう丸い文字を書いていたのかな?
 昔のルードってどういう姿だったんだろうか。髪は今より短い? おれと同じくらいの年のルードが見てみたい。だって気になるじゃないか、ルードが服を作り出したのは、おれと同じくらい年だって聞いたら。
 それになにより気になるのは、『今はまだ、ヒビキが知る時期ではない』っていうルードの言葉だ。
 ルードが遠征に行ってからみんなに教えてもらった彼の過去。
 そっと手紙の文字をなぞって、小さく息を吐く。
 すべてがわかる時が、いつか来るのかな――?
 今はただ、ルードが無事に戻ってきてくれるのを祈る。……そういえば、この世界って精霊さんはいるみたいだけど、神さまっているのかな。むしろ精霊さんが神さま的な……? 教会はあるんだから、信仰しているなにかがありそうなんだけど……。
 あ、それとスキル。スキルも気になる。
 もしかしたらおれにもスキルがなにかあるかも。魔力が全然なさそうなおれにさえ、生活魔法が使えたんだし。そこら辺も気になるから、ルードが帰ってきたら教会で検査を受けられるか聞いてみよう。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

魔王に転生したら幼馴染が勇者になって僕を倒しに来ました。

なつか
BL
ある日、目を開けると魔王になっていた。 この世界の魔王は必ずいつか勇者に倒されるらしい。でも、争いごとは嫌いだし、平和に暮らしたい! そう思って魔界作りをがんばっていたのに、突然やってきた勇者にあっさりと敗北。 死ぬ直前に過去を思い出して、勇者が大好きだった幼馴染だったことに気が付いたけど、もうどうしようもない。 次、生まれ変わるとしたらもう魔王は嫌だな、と思いながら再び目を覚ますと、なぜかベッドにつながれていた――。 6話完結の短編です。前半は受けの魔王視点。後半は攻めの勇者視点。 性描写は最終話のみに入ります。 ※注意 ・攻めは過去に女性と関係を持っていますが、詳細な描写はありません。 ・多少の流血表現があるため、「残酷な描写あり」タグを保険としてつけています。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...