【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

守屋海里

文字の大きさ
64 / 222
2章:1週間、ルードと一緒です!

23

しおりを挟む

 え、リーフェ!? と思わず女性を凝視する。ルードに声を掛けられて、びくっと肩を跳ねさせて、ゆっくりと振り向く。あ、本当にリーフェだ。いつも三つ編みにしているのを下ろしていたし……考えてみれば私服を見るのも初めてだ。

「お、おはようございます、ルードさま、ヒビキさま」
「おはよう、リーフェ」
「おはよう。……怪しい人に見えたぞ」
「申し訳ございません……。その、休日なので恋人の様子を見に来たのですが……」

 天然パーマなのかな? それとも三つ編みの癖がついているのかな? ふわふわの長い髪を指で弄りながらおれらを見た。おれとルードは顔を見合わせてからリーフェの顔を見る。

「買う気がないなら帰れと言われてしまって……」

 ……心底残念そうに頬に手を添えてため息を吐くリーフェ。一体どのくらいの時間居たんだろう……?

「ルードさまとヒビキさまは、どうしてこちらへ?」
「あ、えっと。刺繍用の糸とかを買いに」
「えっ。屋敷を離れても刺繍を……? ルードさまと甘~い時間を過ごされていたのでは?」

 そういう時間も過ごしているけど、そこはノーコメントで! ルードに視線を向けると、楽しそうにクスクス笑っていた。それを見たリーフェが一瞬目を丸くしてそれからとても嬉しそうに表情を綻ばせた。ルードが楽しそうにしているのが嬉しいのかもしれない。
 ――そう思うと、ルードの屋敷に居る人たちって本当に『家族』なんだろうなぁ。

「しかし、ずっとここに居ては営業妨害だろう。私たちは中へ入るが、リーフェはどうする?」
「入ります!」
「おお、即答……」

 なら、とルードが店の扉を開けて中へと入る。リーフェも一緒に入って来た。

「いらっしゃいませー。あら、メルクーシンさま、お久しぶりでございます」

 出迎えてくれたのは眼鏡を掛けた女性だった。ストロベリーブロンド、なのかも。肩まであるその髪をハーフアップにして、はちみつ色の目をしている、とても綺麗な女性。おれのように服の袖を捲ってリボンで結んでいた。もしかして、この人がリーフェの?

「そして、リーフェ。あなたさっきからなにをやっているの。店の前に張り付いて……」

 呆れたようにリーフェを見る女性。彼女はおれの存在に気付くと、まず視線を服の袖に向けてそれからじっとおれを見て、ふわりと優しく微笑んだ。

「お噂はかねがね。初めてお目にかかります、ヒビキさま」
「え、なんでおれの名前を知って……?」
「リーフェから色々聞いておりますので」

 ね、とリーフェに視線を向ける。おれもリーフェに顔を向けて視線で「どういうこと!?」と問う。リーフェはおれから視線を逸らす。一体どんな内容をこの女性に話したんだ……?

「わたくしはシャノン。シャノン・A・クリスティと申します。以後お見知りおきを」

 そう言って手を差し出してきたので、おれはその手を取って握手をした。シャノンさん。良し、覚えた。

「ヒビキです。えっと、リーフェの恋人さん、ですか?」
「はい」

 お店の中で話すことではないような気がするけど、他にお客さんも居ないから営業妨害にはなってない、よな……? ちょっと不安そうにしているおれに気付いたのか、シャノンさんはおれから手を離すと、「少々お待ちください」と言って店の出入り口のカーテンを閉めた。

「これで他のお客さんは入ってきません。ゆっくり店内を見ていって下さいませ」

 カーテンを閉めていると休憩中みたいな感じなのかな? おれがルードに視線を向けると、ルードが小さくうなずいた。
 おれは早速刺繍糸を見に棚へ移動してみた。シャノンさんが刺繍糸の何色を探しているか聞いてくれたので、紺色と水色を探していることを伝えると一瞬ルードに視線を向けて、どこか納得したようにひとつうなずいてから目元を細めて微笑む。

「メルクーシンさまの色ですね」

 ……改めて言われるとちょっと恥ずかしい。隠すつもりもないけどさ。

「それでしたら、こちらの糸はお勧めですよ」

 そう言って棚からひょいと糸を取り出して見せてくれた。紺色と水色の刺繍糸。でも、よーく見るとキラキラと輝くものが練り込まれいるみたいですごく綺麗だ。

「これは?」
「特殊技術を使用して出来た刺繍糸です。キラキラして綺麗でしょう?」

 首を縦に動かすと、こそこそと耳打ちするように手を添えて、シャノンさんはこう言った。

「好きな人ってキラキラして見えませんか?」

 いたずらっぽく笑うシャノンさん。そして、リーフェとルードへと視線を向けてからおれに微笑みかける。……シャノンさん、ちゃんとって言うのも変だけど、リーフェのことが好きなんだなって思ってちょっと心が温かくなった。

「シャノンさんはリーフェのことがそう見えますか?」

 小声で尋ねてみると、彼女は一度目をゆっくりと瞬かせてリーフェに顔を向けてからおれに向かってうなずきこう言った。

「……内緒、ですよ?」

 口元に人差し指を立ててぱちんとウインクするシャノンさんは、とても綺麗だ。リーフェとルードはなにか会話をしているようで、こちらの様子に気付いていない。ラブラブなんだな、このふたりも……。

「リーフェと一緒にお菓子を作ったりしているんですよね。いつもおやつを頂いてます」
「あら。最近リーフェが張り切って作っていたのは、ヒビキさまのためでもあったのですね」

 楽しそうにくすくす笑うシャノンさん。こんなに綺麗な人を恋人にしたリーフェすげぇ……。いや、それを言うならあのイケメンを恋人に持つおれもすごいのでは……? 最初から好感度マックスみたいな感じだったよなぁ。俺に対して。謎だ。

「お口には合いましたか?」
「もちろんっ! すっごく美味しかったです!」

 クッキーもマドレーヌもマフィンもスコーンもカップケーキも全部美味しかった記憶しかない。って言うかおれ、リーフェに色々お菓子もらっているなって今気づいた。そのうちなにかお礼が出来たら良いな!

「それはなによりですわ。ヒビキさまたちが美味しく食べてくれるから、作り甲斐があるって言っていましたもの」

 口元に手を添えてにこやかに話すシャノンさんを見る。おれは頬を掻いて、シャノンさんがお勧めしてくれた刺繍糸を買うことを決めた。それにしても、特殊な技術ってどういうのだろう。

「……あれ、そう言えば店員はシャノンさんだけなんですか?」
「え? ええ。ここはわたくしのお店ですので」
「えっ!?」

 びっくりして声が出た。リーフェと同い年、だよな? 多分。それで自分のお店持っているってすごくないか!?

「リーフェからなにも聞いていませんか?」
「うん。リーフェから聞くのは大体惚気だし……」
「……リーフェったら。ヒビキさま、リーフェのそんな話に付き合わなくても良いんですからね?」
「え、おれ、リーフェの惚気聞くの好きですよ? シャノンさんのこと、本当に好きなんだなぁってしみじみ感じるから」

 おれが笑顔でそう言うと、シャノンさんは恥ずかしそうに頬を染めた。ああ、確かにリーフェの言う通り可愛い人だなぁと思っていたら、リーフェがおれとシャノンさんの間に割り込んできた。
 すぐ近くにはルードも来ていて、リーフェのことを見て肩をすくめている。

「今の顔、すっごく可愛かった! ねぇ、ヒビキさまとなにを話していたの?」
「な、なんでもいいでしょうッ。ヒビキさま、そちらどうしますか?」
「えっ? あ、買います!」

 そう言うとルードがおれにお金を渡してくれた。あ、そうだ。買い物するのが目的だった。すっかりシャノンさんとの会話に夢中になってしまった……!

「お買い上げありがとうございます。少々お待ちください」

 おれからお金と刺繍糸を受け取って素早く会計を済ませて、刺繍糸を可愛い紙袋に入れて「お待たせしました」と笑顔でおれに渡してくれた。
 お釣りも一緒に渡してくれたので、それをルードに渡そうとするとルードは小さく首を横に振る。どうやらこのお金はおれが持っていても良いみたい?
 一体いくらになるのかよくわからないけれど、とりあえずありがたく受け取っておこう。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

魔王に転生したら幼馴染が勇者になって僕を倒しに来ました。

なつか
BL
ある日、目を開けると魔王になっていた。 この世界の魔王は必ずいつか勇者に倒されるらしい。でも、争いごとは嫌いだし、平和に暮らしたい! そう思って魔界作りをがんばっていたのに、突然やってきた勇者にあっさりと敗北。 死ぬ直前に過去を思い出して、勇者が大好きだった幼馴染だったことに気が付いたけど、もうどうしようもない。 次、生まれ変わるとしたらもう魔王は嫌だな、と思いながら再び目を覚ますと、なぜかベッドにつながれていた――。 6話完結の短編です。前半は受けの魔王視点。後半は攻めの勇者視点。 性描写は最終話のみに入ります。 ※注意 ・攻めは過去に女性と関係を持っていますが、詳細な描写はありません。 ・多少の流血表現があるため、「残酷な描写あり」タグを保険としてつけています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!

鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。 この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。 界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。 そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。

触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?

雪 いつき
BL
 仕事帰りにマンホールに落ちた森川 碧葉(もりかわ あおば)は、気付けばヌメヌメの触手生物に宙吊りにされていた。 「ちょっとそこのお兄さん! 助けて!」  通りすがりの銀髪美青年に助けを求めたことから、回らなくてもいい運命の歯車が回り始めてしまう。  異世界からきた聖女……ではなく聖者として、神聖力を目覚めさせるためにドラゴン討伐へと向かうことに。王様は胡散臭い。討伐仲間の騎士様たちはいい奴。そして触手生物には、愛されすぎて喘がされる日々。  どうしてこんなに触手生物に愛されるのか。ピィピィ鳴いて懐く触手が、ちょっと可愛い……?  更には国家的に深刻な問題まで起こってしまって……。異世界に来たなら悠々自適に過ごしたかったのに!  異色の触手と氷の(天然)騎士様に溺愛されすぎる生活が、今、始まる――― ※昔書いていたものを加筆修正して、小説家になろうサイト様にも上げているお話です。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

処理中です...