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2章:1週間、ルードと一緒です!
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しおりを挟む早速とばかりにサディアスさんが白身魚フライをニコロに食べさせようとしているし、リーフェとシャノンさんはノリノリで食べさせ合っていた。なんだこれ。……おれがハンバーグを一口サイズに切ってルードに差し出すと、ルードは嬉しそうに食べた。
……真昼間からおれらは一体なにをしているんだろうと思いつつ、どっちも食べられて満足。それにしても、本当に美味しい。
「そう言えばニコロもテーブルマナー完璧だよね」
おれがふとニコロの食べる姿を見てそう言うと、ニコロは首を傾げた。ナイフとフォークに視線を向けて、「家令に鍛えられたから……?」と呟く。どうやらニコロもじいやさんのスパルタを受けているようだ。
「屋敷の人たちはみんな、一度はおじいさまの洗礼を受けてますよ」
「……じいやさん……」
サディアスさんがテーブルマナーを教えていたわけではないらしい。てっきりサディアスさんに貴族流儀のことを教わっていたのかと……。違うのか。
じいやさんが屋敷の人にテーブルマナーを教え込んだのかな、雇用する人たちに教養をってことなんだろう。きっと。
「リハビリの時も結構なスパルタでしたね。ま、それのおかげで歩けるようになったとは思います」
「ねえ、聞いてよヒビキさん。ルードとニコロ酷いんだよ? ニコロが歩けるようになったの、二年くらいずっとわたしに内緒にしていたんだから」
「私はニコロが仕事に慣れるまで待っていて欲しい、と言っていたはずですが」
なるほど、それで三年。……あれ、って言うことはニコロは一年のリハビリを経て歩けるようになったってことなのかな。……それだけ重傷だったってことだよな……?
ちらりとニコロを見ると、彼はパクパクと食事を進めていた。
「サディアスさんはどうしてあの日、ルードの屋敷に来たんですか?」
歩けるようになったことを知ったのはいつなんだろう。もしかしてこれもリーフェが教えていたのかな。そもそもどうしてリーフェはサディアスさんと話していたんだろう。考えれば考えるほどわけがわからなくなる人間関係……。
「式典も無事に終わって時間が出来たからね。クリスティさんから服も出来上がって連絡が来たし、丁度いいかなって」
照れたように笑うサディアスさんに対して、ニコロは嫌そうに表情を歪めていた。嫌ってはいないと思うんだけど、ニコロはサディアスさんに対してどうしてこうも嫌がるのか。
「受け取ってはもらえなかったけどね……」
切なそうに目を伏せるサディアスさん。見た目が見た目だからかなぜか儚く見える。不思議だ。リーフェが気の毒そうにサディアスさんを見ていたけど、本当に気の毒なのはニコロのほうなのでは……?
「俺が受け取るわけないでしょう……。ごちそうさまでした」
みんなが話しているのに夢中だったからか、ニコロは食べ終わってしまった。早い。ニコロが頑なにサディアスさんからの服をもらわないのはなにか理由があるのかな。
「……似合うと思うんだけどなぁ」
「……あんた、教会に行って目を見てもらえ……」
……一体どんな服を渡そうとしたんだろう。そう言えば、この世界って病院はないのかな。教会が病院と同じようなもん? そして役場もないっぽいよな。そこら辺はどうしているんだろ。
「ねえ、シャノン。一体どんな服を注文されたのよ?」
ひそひそとリーフェがシャノンさんに尋ねている。シャノンさんは、言って良いのかどうか迷いサディアスさんに視線を向けた。サディアスさんはにっこりと微笑んでいる……。
「な、内緒」
なぜそこで頬を染める……?
一体サディアスさんはどんな服をニコロに用意したんだろう。気になるには気になるけど、ニコロが不憫だから追及はしない。
とりあえず、冷める前に定食を食べ終えた。するとソニアさんが人数分のケーキを用意してくれた。
「これは?」
「試作品なのよ。良かったら感想聞かせてちょうだい? 特にニコロ!」
「はあ? なんで俺が……」
「あんたが三年も来ないからッ! 試作品がたまってるのよー!」
……ニコロに味見を頼んでいたのかなー? それはニコロにとって美味しい仕事かもしれない。
「シルヴェスター、耳元で大声出すなよ!」
「え? シルヴェスター?」
「やだ、ソニアって呼んでよね!」
「こいつの本名だ」
格好いい名前! ソニアさんの本名ってシルヴェスターって言うのか。ソニアって本当に自分で決めた名前なんだ……。そんなソニアさんとニコロの様子を、サディアスさんがにこにこと見ている……。
それを感じ取ってかニコロが身を震わせた。それを誤魔化すようにニコロがケーキを食べる。
「……店に出すレベルじゃねぇな」
「あ、やっぱり? ねえ、なにが原因だと思う?」
「まず甘くないし、スポンジはふんわりさせたいのかしっとりさせたいのか、どっちだったんだ?」
「ふんわりさせたかったのよ」
「ならメレンゲ泡立てなさすぎ。あと焼き過ぎ」
ふむふむ、とソニアさんがメモを取っていた。……ん? 文字が書けるって言うことはソニアさんも貴族?
その後もニコロのダメ出しが続いて、「見ていなさい、ニコロ。あんたの舌を唸らせてやるわ!」と意気込んで奥へ行った。
「ニコロって、昔からこんな風にアドバイスしていたの?」
「あー……、昔、ここでバイトしてた時があって、俺がデザート担当だったんです」
「え。それ初めて聞いた!」
おれも初めて聞いた。ニコロの過去で知っているのは、聖騎士団に所属していたってことと、ルードの屋敷に三年居ることくらいか?
「じゃあ、もしかしてニコロもお菓子作りが得意だったりする?」
「さぁ? どうでしょうね」
肩をすくめるニコロに、サディアスさんは頬杖をついて「ふうん」と呟いた。そして、どこか納得したようにうなずく。なにに納得したんだろう。もしかしたらサディアスさんはニコロの作ったお菓子を食べたことがあるのかも?
「それに、ただのバイトだからそんなに大したことはしてませんし」
しれっとそんなことを言っているけれど、ソニアさんのあの様子だと結構頼りにしているような気が……。いつか、ニコロの作ったお菓子を食べてみたいなぁ。甘い物好きのニコロが作るのなら、きっと甘くて美味しいんじゃないかな。
そんなことを考えながらぱくりとケーキを食べる。おれにとっては美味しいけど、ニコロにとってはまだダメってこと、だったんだよな、さっきの会話からして。
「シャノンさんはバイトってしたことある?」
「わたくしですか? バイト……、そうですね、少しだけあります」
「やっぱり裁縫関係?」
「いいえ、その時は料理教室の助手を……」
……貴族も平民も自由な国なんだな、きっと。そしてシャノンさんのお菓子が美味しい理由は料理教室の助手をしていたから?
そして、そんなシャノンさんと一緒に作っているからリーフェの作るお菓子も美味しいのか、納得。
「ごちそうさまでした」
手を合わせてそう言うと、ルードたちも食べ終わったみたいで会計をして食堂から出た。みんなこれからどうするんだろうと視線を送ると、リーフェとシャノンさんは腕を組んでなにか話していたし、ニコロとサディアスさんは……ニコロがルードの後ろに隠れようとしているのを、サディアスさんが阻止していた。
「……なんで逃げるかなぁ」
「一回自分の顔を見てください。目が怖い」
おれが感じていたのと同じものをニコロも感じていたんだろうか。……いや、もしかしたらニコロのほうが感じ取っていたのかもしれない。
「あと、団長。疲れているでしょう」
「……え?」
ニコロがサディアスに向かって強い口調で断言した。そう言えば朝方まで書類に追われていたって言っていたっけ。……でも、おれにはサディアスさん普通に見える……。
「さっさと寝て回復してください。俺が気付くって相当ですよ」
……ちらりとルードに視線を向けると、ルードは彼らのやり取りを肩をすくめて見ていた。ニコロがサディアスさんのことを帰そうとしていたのは、疲れているように見えたから、なのかな。
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