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2章:1週間、ルードと一緒です!
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しおりを挟む「それで、えっと、おれのスキルって一体どんなスキルなんですか?」
「精霊の祝福、それがあなたのスキル名です」
「精霊の祝福……?」
あれ、前にニコロが精霊に関するスキルは稀って言っていたような。あ、だから神父さまも稀なスキルって言っていたのか? でも、なんでおれがそんなスキルを持っているんだろうか。
「このスキルは、自身も含めた魔法やスキルの効果を何倍にでも出来るものです」
「自身も含めた? それって、他の人の魔法やスキルの効果も対象なんですか?」
「はい。とても珍しいスキルです」
……ってことは、ブースターみたいなもんか?
待って、おかしくない? なんでそんなスキルが迷い込んだおれにあるんだ?
ルードはその説明を受けて、「箝口令を」と神父さまに伝えた。
「それがよろしいでしょう」
「誰にも言ってはダメだよ。良いね?」
少し厳しい口調で言われておれはうなずく。……この後、図書館に向かうのだからスキルの本を読もうと決心した。
「……あの、もしもおれが治癒魔法を使えばどうなりますか?」
「奇跡を起こせると思います。精霊の祝福は、そういうスキルですから」
――奇跡。
「ただし、使うのなら慎重になさい。精霊に愛されているというのは、それだけで狙われやすい。あなたの身になにかあったら、悲しむ者もいるのでしょう?」
諭すように言われて、おれはルードを見上げた。ルードはゆっくりとうなずく。なんで精霊に愛されていたら狙われるのかがよくわからないけれど。そもそも効果を何倍にも出来るってその何倍がどれくらいかわからないし。
まさかスキルで悩むことになるとは思わなかった……。
「そのスキルをどう役立てるかはあなた次第ですけれども。どうか、正しい使い道を見つけてください」
そう言って神父さまは微笑んだ。……そっか、このスキルって悪用も出来るのか。悪用はしたくない。使うのなら、誰かを助けるために使いたい。おれが力強く首を縦に振ると、神父さまもうなずいてくれた。
「……精霊の導きがありますように」
神父さまは両手を組んで目を閉じ、祈りの言葉を呟いた。……あれ、この国って神さまじゃなくて精霊信仰?
「神ではなく?」
「精霊に愛されている方ですから」
ルードが首を傾げる。あれ、神さまもいるの?
……いや、おれが深く考えることではないか。神父さまは慈悲深い眼差しでルードを見つめた。ふむ、とルードが呟いて、それからおれの肩から腕を撫でるように下ろしていって手を繋ぐ。
「少し、教会の中を見学しても構わないか?」
「もちろんです」
神父さまはごゆっくり、と小さく手を振っておれらを見送って、おれはルードに手を引かれるままスキルを調べる部屋から出て行った。迷いなく教会を歩いていくルード。
「ルード?」
おれが声を掛けても、ルードは足を止めずに教会を歩く。たくさんある部屋のひとつに入ると「見てごらん」と壁に掛かっている絵画を指さした。
その絵を見て、あまりの綺麗さに驚いた。
大きな絵だ。緑が生い茂る森の中、色んな花が咲いている。
「ここの教会では、この絵が一番近いんだ」
「近い?」
「どうやら、隠れ家の近くのようでね。今度森の中を散歩してみようか?」
「こんなに綺麗な場所があるなら行ってみたいです!」
ルードが穏やかにそう聞いたから、おれはぱっと表情を明るくして答えた。ルードはこの絵を見せたかったのかな? そう思って彼を見上げると、優しく微笑んでいた。
「……そろそろ、図書館に向かおうか」
「そうですね、借りたい本がいっぱいあります」
「今度はゆっくり探せるだろうさ」
その部屋から出て、神父さまに挨拶をしてから教会を出た。……そんなに時間が経ってないと思ったけれど、もう夕暮れ時になっていて、時間の経過があっという間過ぎてびっくりした。
図書館まで向かい、閉館間際にぎりぎり間に合って今朝通された部屋へと向かう。
「どんな本が読みたい?」
「えーっと、スキルと精霊の本があれば……」
「ふむ、それじゃあこの辺りかな……」
おれのリクエストに、ルードは本棚から数冊スキル関連と精霊関連の本を取り出した。
「多分、ここら辺ならヒビキでも読めると思う。読めなくても、私が文字を教えるから安心して」
「はい」
それに関してはルードに任せよう。閉館ぎりぎりだから、素早くルードが本を借りて、本を紙袋に入れて図書館を後にした。どんな本かはあの隠れ家に戻ってから見せてもらおう。
「でも、読むのは明日ね」
「え?」
「本は逃げないから」
……そりゃ逃げないだろうけど。
おれが首を傾げると、ルードは綺麗に笑っていた。そして、商店街――いや、屋台? で色々買ってそれを夕飯にすることにした。お祭りでもないのにこんなに屋台が出ているってすごいよなぁ。なんて思いながら。
隠れ家に帰って、買ってきた物を食べた。どれも美味しかったけど、焼き魚が一番美味しかった。塩だけのシンプルな味付けなのに……。
本は寝室の窓際に紙袋に入ったまま置かれ、ルードが用意したお風呂に一緒に入った。久しぶりに結構歩いたからか、良い運動したなーって気分。同じところをぐるぐる回るよりは違うところを歩いているほうが楽しいような気になるのはなぜだろう。
もちろん、中庭の花を見ながら歩くのも好きなんだけど。
「明日は本を読んで――……あ、時間があれば森の中を散歩してみたいです」
「そうだね。あの絵の辺りはそう遠くないから、そこで昼食を食べるのも良いかもしれない」
「あ、それ楽しそう! ピクニックみたいで!」
わしゃわしゃルードに頭を洗ってもらいながら明日の予定を立てる。人に頭を洗ってもらうのって気持ちいいよなぁと毎回思う。ルードの洗い方がうまいんだろうけど。おれもルードの頭をしっかりと洗う。最初の頃に比べれば、そこそこうまくなっているんじゃないかな。
……それにしても、ルードやサディアスさんって髪長いよなぁ。あ、そう言えば聖騎士団の人たちも長い人が多かった。おれのように短いのってこの国では珍しいのか? ニコロは短髪だけど……。
「ヒビキ? どうしたの、考え事?」
「あっ。えーっと、髪の長さについて考えてました」
正直に思ったことを口にすると、ルードは自分の髪を摘まんで「まぁ、伸ばしたから」と口にした。
「聖騎士団の人たちって髪が長い人、結構いましたよね。なにか意味があるんですか?」
「髪に魔力が溜まるらしい。本当かどうかは知らないけれどね」
…………スキルと魔法が別物みたいだしなぁ、この世界。スキルは自分の特性、魔法は精霊さんが力を貸しているから? そうなると、アデルは魔法を使えるんだろうか。アデルのスキルが魔物使いってことは、精霊さんと相性悪いってことだよな……?
ルードの髪を洗い終わって、それぞれ躰を洗って湯船に浸かる。後ろから抱きしめるようにルードがおれの胸に手を回して、おれも甘えるようにルードの胸板に寄りかかる。
「精霊に関するスキルが珍しいんですっけ?」
「そうだな。団長のようなスキルも珍しい」
「人の考えがわかるって、相当きつそうですよねぇ……」
「あの人結構割り切っているけどね……。使える情報は使うし。ああ、ヒビキのスキルは団長には話して良いからね。話さなくてもバレるだろうし……」
心が読めるスキルだもんな。おれ、サディアスさんの前で嘘をつける自信がない。嘘をつく気もないけど……。ぼんやりとそんなことを考えていると、「そろそろ上がろうか」とルードが声を掛けた。こくりとうなずいてお風呂から上がり、生活魔法で髪と躰を乾かす。……やっぱりこの生活魔法便利。
バスローブを着て寝室まで向かい、ベッドに横になろうとするとルードがナイトテーブルから色々取り出した。……このまま寝る流れじゃなかったのか……!
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