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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
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しおりを挟むニコロがどう答えるのだろうかとちょっとドキドキしながら言葉を待った。ニコロは小さく息を吐いて、
「諸々あとで」
と、ばっさり言って終わってしまった。確かにもう結構暗くなってきちゃったし……。明日から遠征なわけで。サディアスさんは「じゃああとで」と笑顔で言って帰っていった。結局進展したのかしていないのかよくわからない話し合いになってしまった……。
「ニコロ。ちゃんと本心を返してあげなさいよ」
「…………努力はします……」
ぽん、とニコロの肩を叩いてリアはカチャカチャとお茶とお茶菓子をトレイに乗せて片付けて行った。残ったのはおれら三人。ルードがニコロにまだ部屋に居るように言って、おれもそのままソファに座ったままだ。
「明日からのことだが……」
切り替え早いな! ニコロも感情を切り替えたかのように真剣な表情になった。
「早朝に家を発つ。騎士団から行くのはわたしが率いる第一部隊とサディアスだ。ヒビキは王都を出るのは初めてだから……初めてと言って良いのだろうか」
「微妙な感じですよね。あの魔王城っぽいところどこなのかわからないので……」
「まぁ、そこら辺はフォローしますよ。メルクーシン領ってどうやって行くんです?」
「途中からワープポイントを使う予定だ。そうしないと間に合わないだろうしな」
確かに前に見せてもらった地図だとルードの故郷って結構遠いんだよね。丁度十年になるのかな、親元を離れて……。あ、でも結婚式には出席したんだっけ。いつのことか知らないけど。
一体どういう人たちなんだろう、ルードの家族……。
「明日は早いから、それぞれゆっくり休むこと」
「はーい」
「わかりました」
明日のことを確認して、それから食堂に向かう。クッキーを食べたり紅茶を飲んだりしていたからそんなにお腹は空いていない。どうしようかと悩んでいると、ルードが「軽いものにしてもらおう」とおれの頭を撫でながら言った。
その日の夕飯はパン粥にしてもらった。こういうパン粥も美味しくて好きだなぁ。玉ねぎトロトロ、一口サイズの厚切りベーコンがゴロゴロ入っていて……。少しの量にしてもらったけど、いつか鍋いっぱいのパン粥が食べたいなぁ。
夕飯を食べて、寝るまでにまだ時間があるから本を読もうと思い書庫に行きたいとルードに伝えると、彼は小さくうなずいた。
「早朝に出発だから……薄めの本なら読めるかな?」
「ああ、大丈夫だろう」
「ルードのお勧めはありますか?」
「そうだな……」
書庫に行くまでにそんな会話をしていた。書庫につくと、ルードが灯りを点けてスタスタと本棚に向かっていく。そして、薄めの本を一冊取り出しておれの名を呼んだ。
「これはどうだろうか」
「どんな本なんですか?」
「そうだな……、一言で言えば少年と少女の冒険もの、だな」
おお、冒険もの! おれがワクワクと目を輝かせると、ルードは優しく微笑んでおれに本を渡した。本を受け取っていつもの場所に座ると、ルードもなにか本を持ってきておれの隣に座った。
どうやらルードも読書するみたい。
表紙を見ると、少年と少女が手を繋いで楽しげに走っているような爽やかな表紙絵だった。
一行読み出すとぐんぐんと物語の世界に引き込まれていった。田舎に住んでいた少年が、都会から越してきた少女と出会って、その田舎に伝わる伝承を確かめに村のダンジョンに挑むって言う物語。
最終的に小さなドラゴンを見つけてそのドラゴンが村の守り神になって、少年と少女は大人になったらまた逢おうねと、少年は都会に行って終わるって言う物語だった。
ぱたんと本を閉じて目を閉じる。挿絵も多かったけれど、どれもすごくきれいな絵で瞼の裏に浮かび上がるよう。
「どうだった?」
本を読み終わったのに気付き、ルードが優しく聞いてきた。だからおれは目を開けてルードに身振り手振りで本の感想を伝えた。それをルードは柔らかい眼差しで見ていて、「楽しんでもらえたら嬉しい」とおれの頭を撫でる。
「もっと読みたいところだろうけど、明日は早いからね、もう休もう」
「はい」
本棚に本を戻して、お風呂に入ってから寝室に向かい、ベッドに横になるとそっとルードが触れるだけのキスをして、「おやすみ」と微笑む。おれも、「おやすみなさい」を言って目を閉じる。
メルクーシン領ってどんなところなんだろう……。
そっと揺さぶられて目が覚めた。どうやらルードが起こしてくれたみたい。出発の準備があるから早起きしないといけないんだった。
「おはようございます……」
「おはよう。ふふ、眠そうだね」
「ん~、眠いには眠いですけど、大丈夫です!」
が、そう言い終わった瞬間に欠伸をしてしまい説得力は皆無だな、と自分で思った。クスクスと笑うルードがおれの頬に両手を添えてムニムニとしてからちゅっと軽くキスをした。
「顔を洗っておいで。少しは眠気が覚めるだろう」
「そうします……」
ぽんとおれの肩を叩いてそう言うと、おれはのろのろとベッドから降りてクローゼットまで歩いて、服を着替えた。おれが着替えているのを見て、ルードが「あ」と思い出したかのように声を出し、それからごそごそとなにかを取り出した。
「ヒビキ、これを」
「これは?」
ふわふわもこもこのハイソックスにしか見えないけど……。
「あっちは寒いからね。コートとマフラーがあるとはいえ、足元が寒いだろうから」
ショートパンツ以外くれる気ないな、この人!
とりあえず受け取って身につけてみる。太もも近くまであるから、あったかい。しかもすっごく気持ちいいふわもこ感……! しかし、これ男が身につけていても良いものだろうか。ルードは「似合っている」って笑顔で言ってくれたけど、姿見を見るとなんとも……うん、なにも言うまい。ノーパンチュニックに慣れてしまったおれにとっては些細なことだと開き直る。
冷たい水で顔を洗うとなんだか目が覚めたような気がした。タオルで顔を拭いて、ルードの元に向かうと、彼は既に着替えていた。
「……聖騎士団の制服なんですね」
「私は呼ばれていないからね」
「……あの。ルードのご家族に会わせてもらえますか?」
おれがそう言うと、ルードは目を一瞬大きく見開いて、それから首を傾げた。
「どうして?」
「一度お会いしてみたくて」
「……あまり会わせたくはないのだが……。時間があれば、な」
「はい」
どんな人たちなんだろうって興味はあったし、家族のことを話す時は苦々しく笑っているのが気になっていた。それに、おれがルードの恋人だということを伝えるべきではあると思ったから。
別にルードとご家族が仲良くなって欲しいとは思っていない。ルードの家族はこの屋敷の人たちだと思っているしね。
「マルセルが弁当を作っているから、途中で食べよう。ヒビキは馬車に乗る? それとも私と一緒にフェンリルに乗る?」
「え、フェンリル乗せてくれますかね?」
「大丈夫だよ」
コートを取り出してふわりとおれに掛ける。マフラーはもうちょっと寒くなってからねとルードの鞄に入った。出発の準備が整ったところで、タイミングよく寝室の扉をノックする音が聞こえた。
「隊長、ヒビキさま。おはようございます。そろそろ時間ですよ」
「ああ、今行く」
ニコロの声だ。ルードはおれに手を差し出す。おれはその手を取ってルードと一緒に歩き出した。ルードが扉を開けると、お弁当を持ったニコロが居て、きっと渡されたんだろうなぁ。
「それじゃあ、行こうか」
「はい!」
「魔物あんまり出ないと良いですねー」
のんびりした口調でそういう事を言うニコロに、ルードは軽く肩をすくめた。
「そう言えば集合場所は?」
「王都の北門だから、ワープポイントから王都に向かうよ」
東西南北に門があるのかな? こうやって王都から違う場所に向かうのは初めてだからドキドキとワクワクが混ざって複雑な感じ。離れたことがないから、ちょっと不安なのかな。
ワープポイントのある部屋まで向かうと、代表としてなのかじいやさんがおれらを迎えてくれた。
「お気をつけて」
「ああ、屋敷のことを頼む」
「かしこまりました」
恭しく頭を下げるじいやさん。ルードとニコロが部屋に入ると、じいやさんがこっそりとおれに耳打ちをしてきた。
「坊ちゃんをよろしくお願いします」
「……! はい、じいやさん」
おれは真剣な表情でこくりとうなずき、それから「行ってきます」と口にする。じいやさんは「いってらっしゃいませ」とにこやかに言ってくれた。
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