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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
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しおりを挟む昨日、早めに休んだからか……朝、ルードが起きる音で目が覚めた。聖騎士団の服装に着替えているルードに「おはようございます」と声を掛けると、ルードはおれのほうを向いて笑みを浮かべて「おはよう」と挨拶を返してくれた。
「まだ眠っていて良いんだよ」
「いえ、なんだかすっきり目覚められたので起きます!」
ベッドから起き上がって服を着替えると、ルードと一緒に食堂に向かう。食堂にはリーフェとリアが居て、おれらに気付くと「おはようございます」と挨拶をして――ルードの髪が短くなっていることに気付いて、目を丸くした。
「え、え? ルード……坊ちゃん……!?」
「ど、どうしたんですか、その髪!?」
慌てたように駆け寄ってくるリーフェとリアに、ルードは「気分を変えたくて」と微笑んだ。そして、彼女たちは目が零れ落ちるんじゃないかってくらい見開いて、それからなにかを悟ったかのように笑みを浮かべる。
「幸せそうでなによりです」
にこっと微笑むリアに、ルードはうなずいた。リーフェは色々聞きたそうな顔をしていたけど、仕事が優先。ルードと一緒に朝ご飯を食べて彼を見送り、折角早く起きたのだからとおれは書庫で本を読むことにした。
すると、じいやさんとリーフェもついてきた。どうやらルードの髪のことを聞きたいらしい。おれらは書庫に向かい、じいやさんとリーフェはお茶を用意してくれた。椅子に座ってふたりに顔を向けると、リーフェはワクワクを隠していない表情を浮かべていて、じいやさんは笑顔ではいるんだけど、瞳の奥でルードを心配しているように見えた。
おれはメルクーシン領であったことを一通り説明した。リーフェが聞いたら怒りそうなことだったけど。
「なっ! あまりにも酷すぎませんか!?」
――やっぱり怒った。ルードのことを化け物だと教えていたメルクーシン家の人たちに対して、リーフェはとてもわかりやすく怒っていた。じいやさんは目元を細めてそれから深々とため息を吐いた。
「――人としての矜持まで落ちたか……」
頭が痛いのか、じいやさんは額に手を置いて俯きながらそう言った。
「申し訳ありません、少し、用事が出来ましたので失礼させていただきます」
すっと頭を下げて書庫から出て行こうとするじいやさん。しかし、すぐに足を止めて振り返り、おれに対して笑みを浮かべて、
「あなたが坊ちゃんの愛し子で、本当に良かった。坊ちゃんを、よろしくお願いいたします」
そう優しい声色でおれに伝えてから、書庫から出て行った。そして、さっきまで怒っていたリーフェは静かになった。どうしたんだろうと彼女に顔を向けると、なんとも複雑そうな表情を浮かべていた。
「えーっと……アシュリーさまもメルクーシン家になにかしたんですよね、多分」
「も?」
「……おじいさまもなにかしそうで……」
おれは首を傾げた。じいやさんがなにをするのだろうか。そもそもじいやさんってルードが小さい頃から一緒に居るんだっけ?
「……メルクーシン家、終わるかもしれませんね……」
「え?」
リーフェの言葉に驚いた。じいやさんってかなりの実力者? しかし終わるってどういう事なんだろう。混乱してきたおれに、リーフェは眉を下げて微笑み、そして説明してくれた。
「私たちの一族は、ずっとメルクーシン家に仕えてきました。しかし、十年前にルードさまが王都に越す際、おじいさまはメルクーシン家よりもルードさまを取りました。それが気に入らなかったのでしょう。当時のメルクーシン家当主が、我々を二度と雇わないと追い出したのです。ですので、我々も王都へ越しました。丁度学園にも通いたかったので私的にはラッキーでしたが」
淡々と、ところどころお茶目に話すリーフェ。リーフェが王都に来たのは……学園のためもあるのだろうけど、追い出されたからなのか。
お姉さんたちが王都に居るのも、そういう理由だったりするんだろうか……。
「とは言え、うちは男爵家なので……出来ることがあるとすれば限られているとは思うのですが……。おじいさまならなんでも出来てしまえそうで……。あの人昔からなんでも出来ましたから。超人にもほどがあります」
しみじみと呟くリーフェに、おれはじいやさんのことを思い出していた。確かにじいやさんがミスするところなんて見たことないし、むしろ色々教えてくれていたし、楽しそうに、時に厳しく……いや、マナー関連はスパルタだった……。
「じいやさんも謎と言えば謎だよね……」
「ええ、本当に。ヒビキさま、お話しして下さってありがとうございました。それでは、私は仕事に戻りますね」
「うん、お茶ありがとう」
リーフェたちにはまだ、おれがルードにプロポーズしたことを言っていない。言ったら絶対リーフェが興奮するだろうし。仕事にならなかったら申し訳ないし。
おれは椅子から立ち上がって、本棚に向かう。どんな本が良いかな。どうせならスカッとする冒険ものが読みたい。
とはいえ、あまり分厚いのはまだ読める自信がない。薄めの本を数冊集めてさっきの椅子に戻って座る。お茶を飲みながらぱらりと表紙を捲り、本の中の世界に飛び込んだ。
一冊、一冊、読み終わった本を重ねる。児童書のようなものもあって読みやすいし、今度はスキルや精霊の話が出てきたり、ランダムで取ったからかなりジャンルがバラバラだ。その中でも、精霊の話はやはり読み応えがあった。
「……守護精霊が居なくなったら、どうなるんだろう……?」
おれの呟きを拾ったかのように、七色の光が一冊の本を包み込んだ。その本をパラパラと捲ると、とあるページで光が輝いた。このページを読めってことなのだろうか。そう思って視線を落とす。
精霊との契約についてのページだった。ルードのように契約している精霊のことと、土地と契約している精霊のこと。読み込んでいくうちにおれは首を傾げることになる。
フェンリルのような上級精霊は土地と契約している。その契約をしている以上、土地を守らなければならない。人と契約しちゃダメとは書いていなかったけど、土地と契約している精霊が土地を離れて大丈夫なのか……?
「あ、もしかして……だからフェンリルとルードが一緒にいるところを見たことがなかった……?」
なるほど、と勝手に納得した。それにしても、この世界って精霊と共に生きていくスタイルなんだな。精霊さんたちいつもありがとう。心の中でそう呟くと、おれはゆっくりと息を吐いた。
「わ、綺麗……」
七色に回る精霊さんたち。まるで祝福されているようだと思って、そう言えばおれのスキルの名は『精霊の祝福』だったと思い出した。
「本を読むのはここまでにして、刺繍糸まだ残っていたし……ミサンガ作ろうかな。またルードのことをお願いしても良い?」
おれがそう尋ねると、精霊さんたちはもちろんとばかりにくるくる回っていた。
本を閉じて、全ての本を本棚に戻す。寝室に向かう前に出会ったリアにお茶の片付けを頼んだ。おれが片付けたら良いとは思うんだけど、絶対ダメですと口酸っぱく言われてしまっているので、断念。
「お部屋でなにをするのですか?」
「ミサンガ作ろうと思って。リアもどう?」
「ありがとうございます。ですが、今日は午後から休みを取っていまして……。家族で出掛ける予定なんです」
「そっか。楽しんで来てね」
「はい」
とても楽しみなのだろう、リアはにこにこと笑っていてこれからのことを考えているみたいだった。
おれは寝室に向かって部屋に入ると、クローゼットまで足を進めて刺繍糸を取り出す。早速作ろうと意気込んでソファに座った。
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