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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
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しおりを挟むこくりと喉を鳴らして飲み込み、それから目を伏せたと思ったらすぐににっこりと微笑む。フェリクス陛下が「開けても良い?」と聞いてきたので、首を縦に振った。
しゅるりとリボンを解いて、包み紙を丁寧に開けていく。そして、ミサンガを見ると目を数回瞬かせた。
「これは?」
「ミサンガと言って――」
この世界の人に説明するのにも慣れて来た。ミサンガの説明をすると、フェリクス陛下は感心したようにミサンガを見て、右手を出してユーグさんにつけてもらった。ミサンガを指でなぞり、「へぇ」と呟いた。
「面白いね。これ、ヒビキさんの魔力が込められているでしょ?」
「え、わかるんですか?」
「スキルでね。ぼくが持っているスキルのひとつ。精霊眼でわかるよ」
精霊眼? ……って、フェリクス陛下普通にスキル教えてくれたけど良いのかなぁと不安になって彼を見つめると、どんなスキルなのか説明してくれた。
精霊眼――精霊の力が入ったものを見分けることが出来るスキル、らしい。この世界の魔力は精霊のさんの力だけど、それが誰の魔力であるのを知ることは出来ない。それこそ、フェリクス陛下じゃないと無理みたい。
「すごいですね……」
「ヒビキさんのスキルに比べたらまだまだだよ!」
軽く手を振るフェリクス陛下は、マドレーヌに手を伸ばしてぱくりと食べた。そして、おれらがなにも食べたり飲んだりしていないことに気付いて「食べて食べて」と進めてくる。おれとニコロは顔を見合わせて、「それじゃあ」とお菓子やお茶に手を伸ばす。
「わ、おいしい……」
カップケーキに手を伸ばして食べてみると、想像以上に美味しかった。上に掛かっているクリームも甘さ控えめなのにミルクの味が濃い。ふわふわのスポンジとよく合っている。幸せそうに食べるニコロを見つつ、ユーグさんは食べないのだろうかと顔を上げる。
「お気に召したのなら良かったです」
柔らかく微笑みつつ、ユーグさんは「陛下、マナーが悪いですよ」とフェリクス陛下に注意していた。
「あの、ユーグさんも一緒に食べませんか?」
おれがそう誘うと、ユーグさんは緩やかに首を左右に振った。食べないらしい。するとフェリクス陛下は面白くなさそうに唇を尖らせる。
「ほんっと頭硬いよね。折角ヒビキさんが誘ってくれているのにさ」
テーブルに肘をついて頬杖をする。そしてユーグさんに視線を向けたけど、すぐにおれらへと視線を向けて、すっと姿勢を正した。そして――……。
「……今回、ヒビキさんをお招きしたのは、アデル殿下が絵画に捕らわれた時に協力して下さったお礼です。遅くなってしまいましたが……」
すっかり仕事モードの表情と言葉遣い。おれは目をぱちぱちと瞬かせて、それからはっとして慌てて首と手をぶんぶん横に振った。おれの行動にフェリクス陛下とユーグさんはどこか安堵したかのように息を吐いた。
「本当はもっと早めにお招きしたかったんですが、色々と忙しくて。さらにメルクーシン領へ遠征について行かれたと聞いて……。大変でしたね」
「え、と……まぁ、そうですね……?」
メルクーシン領に行ったことも知っているんだ。
「先日、聖騎士団長から連絡が入りまして。それを受けてこうしてお招きしたのです。お礼を兼ねて」
「サディアスさんから?」
一体どんな連絡だったんだろうか。ニコロも手を止めて話を聞いている。おれらがドキドキとフェリクス陛下が伝えるであろう話を待っていると、足音が聞こえた。誰かがこっちに向かってきている。
「……もう始まっていたのか」
独り言のように呟くルードの声に、おれは顔を向けた。ルードはおれの視線に気付くと柔らかく目元を細め、そして近付いてくる。
「申し訳ありません、遅れたようです」
「構いませんよ。急にお誘いしたのは僕ですし」
どうやらルードも誘われていたらしい。そんなこと一言も言っていなかったじゃないか! とルードをじぃっと見つめると、「今朝誘われたんだよ」と教えてくれた。今朝じゃ仕方ない。おれの隣に座ると、フェリクス陛下はおれらを見渡す。
「さて、主役も揃ったところで話を始めましょうか」
にっこりと微笑むフェリクス陛下に、おれはごくりと唾を飲んだ。
「まず、初めに。ヒビキさん、あなたには爵位が与えられます。精霊の祝福をスキルに持つあなたは、恐らく各国、各団体から欲しいと言われる人材でしょう。無論、それは我が国も同じ。あなたのスキルを悪用させないためにも、地位が必要となるのです。ご理解ください」
あ、ここで爵位の話をするのか!
……おれが自分でバラしちゃったから……と肩を落とす。爵位を貰うつもりは全然なかったんだけど……。ルードの屋敷に居れば安全だろうしって。そうはいかないみたい。
「次にニコロ。あなたにも『騎士』の称号が贈られます。これからもヒビキさんやルードを守ってください。あなたはこの国で唯一の『自由騎士』として認められました」
自由騎士ってなんだろう。後でルードに聞いてみよう。ニコロはぎょっとしたように目を瞠った。そしてなにかを言おうとして、ぐっと言葉を飲み込んだ。自由騎士ってそんなにすごいものなの?
「そしてルード。申請通り『ルード』としての名があなたの名になりました。ルード・K・メルクーシン。それがあなたの名です。……が、メルクーシン家との縁を切ったと聞きました。名字どうなさるつもりです?」
「この子の名字を貰おうかと思います」
そう言ってルードはおれの肩に手を置いた。えっ!? とおれがルードを見ると、ふっと笑う彼の表情が見えた。ルードは椅子から立ち上がり、そっとおれの前に跪く。え、なに、なにが始まるんだ!?
「ヒビキ。――私と結婚してください」
……!
まさかここでプロポーズされるとは思わなかった。ルードのプロポーズに、全員ちょっと呆気に取られていたけど、すぐに微笑ましそうな視線に変わっていった。
「……お、おれで良ければ……」
「ヒビキじゃないとダメなんだ。こんなにも――人を愛することが出来て、嬉しく思う。ヒビキが私の心を変えてくれたんだ」
じわじわとおれの涙腺が緩んでいくのがわかった。今にも泣きそうなくらい、幸せな気持ちが満ち溢れて、涙に変わって零れていく。おれの手を取って、そっとハンカチを取り出して涙を拭ってくれた。ハンカチはおれがプレゼントしたものみたいで、どこかぎこちなさを感じる刺繍を見て、これまでのことを思い出しさらに涙が溢れて来た。
「どう、しよう、とまんな……ッ」
「良いんですよ、ヒビキさん。嬉しい時でも涙は溢れ出るものですから」
大人びたフェリクス陛下の声に、ぽろぽろ流れる涙は中々止まりそうになかった。ニコロもぽんぽんと背中を優しく叩いてくれているから、涙はさらに零れてしまう。
どのくらい泣いていたか覚えていないけれど、ようやく涙が止まった頃にフェリクス陛下が言葉を続けた。
ぎゅっとルードがおれの手を握ったまま椅子に戻り、フェリクス陛下へ顔を向ける。
「僕が認めましょう。ヒビキさん、名字は?」
「ほ、ホシナです」
「ルード・K・ホシナ。うん、ルードリィフ・K・メルクーシンより短くなって良い感じじゃありませんか?」
ねぇ? と同意をユーグさんに求めた。ユーグさんはそうですね、とうなずきながら呟いた。
「では、改めてルード・k・ホシナ。あなたにも爵位が与えられます。今までずっと蹴られてきましたが、ホシナとして生きることを選択したあなたにはとても必要なものでしょう。――爵位は伯爵。これからも、聖騎士団をよろしくお願いします」
伯爵家の子息ではなく、ルード自身が伯爵になったのか。
「ちなみにヒビキさんの爵位も伯爵ですので」
「え」
てっきり男爵くらいだと思っていた……! スキルが精霊の祝福ってだけで伯爵の爵位がもらえるって……どれだけ貴重なんだおれのスキル……!
「……あの、こう言ったことを言うのはなんですが……、なんで俺に……いや、私に『自由騎士』の称号を……?」
今まで黙っていたニコロが、恐る恐るフェリクス陛下に聞いた。だから自由騎士ってなんなんだ。
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