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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
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しおりを挟む翌朝、目を覚ますとルードがまだ眠っていて驚いた。今日は休みだったんだろうか。それとも、午後から? おれが起きたからか、ルードも瞼を開けて柔らかく微笑み「おはよう、ヒビキ」とおれの頭を撫でる。
「お、おはようございます……。今日は休みですか? 仕事ですか?」
「午後から。一応見回りの強化がね……。式典が近付いて来ているから」
……あ、そっか。式典の準備に、警備の強化が入っているのか……。納得しつつもなんだか複雑な気分だ。だって式典の主役はやはりルードだろうし……。その主役が自ら見回りしているのかと思うと……。
「式典前は色々あるからね。少しでも危険な芽があるなら摘んでおかないと」
「……あまり、無理しないでくださいね?」
「ああ。ありがとう」
とりあえずベッドから降りて身支度を整え、いつものように蔦の水を取り替えて光合成できるように陽の当たる場所へ。蔦は「おはよー!」とおれとルードの頬に葉を触れさせて、おれらも「おはよう」と蔦の葉を撫でる。
「今日はどうする?」
「……どうしましょう。午後からなら午前中はのんびり出来ますよね……」
のんびりとした時間をルードと過ごすのも好きだし……。ルードは、少しだけ考えるように瞼を伏せ、それからにこりと微笑みを浮かべておれの頭を撫でた。……? どうしたんだろう?
「それなら、ちょっと私に付き合ってくれないか?」
「え? あ、はい……」
そして、朝食を食べてからルードと手を繋いで屋敷の中を歩く。どこに向かっているんだろう? と首を傾げていると、ルードが連れて来たのは地下だった。……全部見回ったわけじゃないんだけど、地下室なんてあったのか、ここ。
「あの、どこに向かって……?」
「ヒビキの部屋が出来ただろう? それなら、これも返したほうが良いと思ってな」
地下の一室で立ち止まり、鍵を開けて中へ入る。……もしかして、ここ……宝物庫? おれの予感は当たったみたいで、がちゃりと扉が開くと一気に煌びやかな世界が待っていた。
「あ……」
「これは、ヒビキが持っていたほうが良いだろう?」
「ありがとうございます、ルード……!」
すっとルードが差し出したもの。それは――おれのカバンだった。おれはそれを受け取って、ぎゅっと抱きしめる。スマホだけはクローゼットに入れていたけれど、カバンはルードに預かってもらっていたままだった。前の屋敷ではおれの部屋がなかったし、ルードとの寝室に私物を置く気にならなかった。
「……今度、ヒビキの話を聞きたい。そうだな、歌ももっと聞いてみたい。……自由に生きて良いんだ、ヒビキ。外に目を向けるのは怖いこともあるかもしれない。だが、必ず私がヒビキを守るから――ヒビキは、自分の好きなことをして欲しい。……出来れば、私の目の届く範囲で」
くしゃりとおれの頭を撫でて、ルードは優しくそう言った。おれは前のルードの言葉を思い出して、小さく笑う。だって、おれが働こうとしたらあまり良い顔しなかったじゃないか、と。
「……ルードって案外ワガママなところがありますよね」
「ヒビキ限定でね」
ちゅっ、と額にキスを落とすルードに、おれはルードを見上げて目を閉じた。ルードがおれの頬に手を添えて、軽く、触れるだけのキスをした。何度かちゅっちゅっとリップ音を響かせてながらのキス。一向に深くなる気配がない。一昨日もそうだったけど、どうしたんだろうと思わず薄く目を開けた。
――ルードと目が合った。すると、ルードは目元を細めて顔を離した。
「……見ていて楽しいですか?」
「とっても。そのカバン、ヒビキの部屋に置きに行こうか」
「……あの、なんで……その、深いキスはしないんですか……?」
「――私の理性が切れる気がする。今から仕事なのに、ヒビキの感じている顔が見たくなる。というか、多分、ヒビキの気を失わせてしまうくらい、してしまいそうだから……。式典前に無理はさせるなと、サディアスが」
式典ってまだ先だよルード!? あ、いや、えっと、なんかこれじゃおれが期待しているみたいじゃないか!? ……いや、していないと言えば嘘になるんだけど!
「自分でも一応わかってはいるんだよ、私の愛し方はヒビキの躰に負担を掛けていると……そもそも、受け入れる側はそれだけで負担だろう? ただいざ始めてしまえばヒビキが可愛くて、その顔がもっと見たくて――」
「ああああのッ、そのくらいで充分です!」
おれ相手に惚気ないでくださいルード! 聞いていて恥ずかしくなってくるから! って言うか、本当にルードっておれの感じている顔や喘ぎ声が好きなんだな……。感じている時は色々と頭の中がスパークしているから、冷静になって考えると恥ずかしさが増していく。あ、でも――。
「……ルードもちゃんと、気持ち良いのなら、おれは良いんですけど……」
快感に浸っている時以外でこういうことを伝えるのは恥ずかしさと照れが混ざってしまう。ぽつりと呟くおれの声を拾ったのか、ルードは「ふふ」と小さく笑い、
「もちろん気持ち良いよ。ヒビキの可愛いところが見られるし……」
「……ルードにはおれが可愛く見えるんですね……」
と、言ってから気付いた。今更だな――と。ルードはそれをどう受け取ったのか目を瞬かせて、それからぎゅうっとおれのことを抱きしめた。
「そうだね。私にはヒビキが可愛く見える。――でもね、ヒビキ。ヒビキは可愛いだけじゃないんだよ」
「え?」
「八年前に助けてくれた時、私にプロポーズしてくれた時……とても格好良く見えた。ヒビキの芯がぶれないからだろうか。……私とは真逆だ」
ルードは自分の芯がぶれていると思っているのかな? いやまぁ……否定は出来ないか。おれに見せる顔、他の人に見せる顔、かなり違っていたし……ルード自身がそれに気付いていた。黙ってしまったおれのことをどう思ったのか、ぽんぽんとおれの頭を撫でる。……頭を撫でるのはルードの癖なのかなと思ったけれど……ちらりとルードを見ておれは目を閉じた。
「……実はおれ、ルードのこと格好良いし可愛いなぁって思っているんです。互いに互いをそう思っているなんて――バカップルですよね!」
「……普通なのではないのか?」
「いや、かなりのバカップルだと思います。今までのことを振り返れば……。ですが、後悔なんて全然していないんですよ」
それはおれの魂が本来の『アデル』だったから……なんて考えるワケもない。だって魂が『アデル』だったとしても、おれは日本で育った保科響希だ。『アデル』の記憶なんて全然ないんだし、魂がルードを求めたとか、そんなのはないと断言できる。
「保科響希は、この世界でルードを愛せたことを誇りに思っていますから!」
日本に帰ることが出来ないのはやっぱり寂しいとは思う。これがひとりきりだったら絶対に泣き暮らしていた。――いや、ルードと一緒でも泣いたけど。もっともっと泣き暮らしていただろうと簡単に想像が出来る。
「……こういう時に、ヒビキのことを格好良く思うよ」
「そうですか?」
さっきの言葉に格好良い要素があっただろうか……? と首を傾げると、ルードが腕を緩めて代わりにおれの手を取って歩き始めた。宝物庫を出て鍵を掛け、そのままおれの部屋へと向かう。部屋につくと、ルードはおれをベッドに座らせた。
そして、こてんとおれの太ももに頭を乗せる。……甘えてる、のかな?
「……少し、こうさせて? あと、歌ってくれたら嬉しい」
「え、えーと、子守歌ですか?」
「いや……、そうだな、ヒビキが一番好きな歌が良い」
おれの一番好きな歌……。「えっと、じゃあ……」と口を開いて歌い始めた。子どもの頃から好きな歌を歌ってみる。ルードの髪を撫でながら歌う。サラサラな髪を楽しみながら、目を閉じて歌う。姉から教えてもらった歌だけど、この歌が堪らなく好きになってずっと歌い続けていた。合唱部に入ってから音をちゃんと取れるようになったとは思うけど……それでも難しい歌。でも、この歌詞にルードへの想いを乗せる。
ルードはただ黙って、聞いてくれた。最後まで歌いきると、目を開ける。ルードと視線が合った。
「……歌とは、こんなにも心を震えさせるものだったのだな……」
「……はい。だからおれは……歌が大好きです」
それから、ルードのリクエストで数曲歌を歌った。流石に混成合唱の歌は歌えないから、ひとりで歌えるものばかり。それでもルードは心地よさそうに聞いてくれた。
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