187 / 222
4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
75
しおりを挟む呆れたような、感心したようなアデルの声に、おれは首を傾げた。そして、あっと思い出した。アデルの過去。襲われたんだっけ……返り討ちにしたみたいだけど。そういう家族なら離れてもツラくないのかも……?
「本当、キミって平和ボケしてるよね……」
「そんなしみじみ言わなくても!」
「だってそう思うもの。ボクとは正反対」
……? アデルは平和ボケしていないってこと? 日本からの転生者なのに? とアデルを見ると、アデルはふわぁと眠そうに欠伸をした。おれらは眠ることにして、「おやすみ」と言って灯りを消す。
目を閉じると、すぐに眠ってしまい、気が付くと朝だった。そして、ルードがおれの部屋に居て、アデルが居ることに複雑そうな表情を浮かべていた。
「……ルード? お帰りなさい……」
「ああ、ただいま。……なぜアデルがヒビキの部屋に?」
「……なんか、昨日急に来て……泊るって……」
怒っているのだろうか、とちらりとルードを見ると、ルードは肩をすくめておれのベッドに座ると、すやすや寝ているアデルを見て――……。
「いつまで狸寝入りをしているつもりだ」
「……なんだバレてたの」
「起きてたの!?」
びっくりして大声を出してしまった。うるさそうに耳を手で塞ぐアデルに、おれは口元を押さえた。よく気付いたなぁ、寝たふりしているって。ルードすごいなぁと思っていると、アデルが起き上がってうーんと背伸びをした。おれも起き上がる。
「それで、なぜこの部屋に居る」
「この子と色々話したかったんだよ。って言うかキミ、帰って来たばかりでしょ。埃っぽい。せめて綺麗にしてから来なよ。この部屋を汚すつもり?」
「……ヒビキに変なことをするなよ」
「タイプじゃないからしないってば」
……タイプだったらするのか? と思いつつ、ルードが渋々ながらもアデルの言う通りにお風呂に向かい、おれはアデルに視線を向けた。
「なに?」
「……あのさ、思い付いたことがあるんだけど……陛下に謁見って出来る?」
「ボクと一緒にってこと?」
「むしろ、アデルと一緒じゃないと出来ないことだから、アデルにも協力を頼みたい」
そしておれは、アデルに考えを話した。アデルはちょっと呆れたように聞いていたけれど、最後まで話すと「ふむ」と呟いてぱちんとウインクをした。……なんでこの世界の人たちってこんなに綺麗にウインク出来るんだろう……。ちなみにおれはウインク上手に出来ません!
「良いよ、店の宣伝にもなりそうだし。でも、そうなると時間がちょっと足りなくない?」
「うん、だから猛特訓しないといけない。アデルは時間取れそう?」
「ボクは平気。店はあんまり忙しくないし、シリウスに頼めば聞くだろしー……って言うか元々シリウスの店だし」
肩をすくめてそういうアデルに、おれはちょっと笑ってしまった。なんだかんだ、アデルとシリウスさんはうまくいっているらしい。
「善は急げ。ボク、ちょっと陛下にアポ取って来るよ」
「え、もう?」
「時間が惜しいじゃん。それじゃあ、またね」
そう言ってアデルはおれの部屋から出て行った。すると、アデルと入れ替わるようにルードがおれの部屋に来た。……相変わらずおれと一緒に入らない時は烏の行水らしい。
「アデルは?」
「帰りました。えっと、ルード、驚かないで聞いて欲しいんですけれど――」
おれはちょっとだけ、アデルに話したことをルードに伝えた。ルードはちょっと不安そうにしていたけれど、「ヒビキが決めたことなら」と優しく微笑んでくれた。許しを得たおれはぱぁっと表情を明るくさせた。
それを見たルードがよしよしとおれの頭を撫でる。
「今日はどうしますか?」
「そうだね……、一緒に本でも読もうか。ヒビキの部屋で」
「え?」
「狭い分、ヒビキとの距離が近い気がする」
まぁ、いつもの寝室と比べたらそうだろうな……。そんなわけでおれはルードと一緒に書庫に向かい、読みたい本を自室に持って来て、ついでにリアにお茶と軽食をお願いした。自分の部屋でルードと一緒にご飯を食べるって、不思議な感じ。そして……ルードくらいの長身だと狭そうだなぁと思ってしまう。……その身長、ちょっとくれないかなぁと思いつつ、サンドウィッチを頬張る。
ちなみにアデルが使った布団は別の使用人さんが片付けてくれた。
「……ルードにとっては狭い、ですよね?」
「狭いには狭いが……この狭い空間でヒビキとふたりきりというのも悪くない。まさか先にアデルに泊まられるとは思わなかったが……」
「泊まる気だったんですか!? ベッド狭いですよ!?」
おれが思わずそう言うと、ルードはキョトンとした表情を浮かべて、それからクスクスと肩を震わせて笑った。
「一緒のベッドで寝て良いの?」
にんまりと笑うルードに問われて、おれは「あっ」と口元を押さえた。アデルは布団で寝たのに、ルードがこの部屋に泊まるとなると、一緒のベッドって……! どれだけルードと一緒に寝る時は一緒のベッドって刷り込まれているんだろう!
「……ルードの身長じゃ、ベッドからはみ出ちゃいますよ……?」
「その分ヒビキとぴったり密着出来るね」
にこにこと嬉しそうに笑うルードに、あの広いベッドでもかなり密着して寝ているような気がする……とは言えなかった。だって抱き着いて寝てるから……。
「それにしても、ヒビキは面白いことを考えたね」
「陛下が許してくれるなら、ですけどね」
おれが考えたことをやるには、陛下の許しが要る。もし陛下にダメって言われたら諦めるつもりだ。どうしてもそこじゃなきゃ出来ないってわけではないし。
アデルと一緒に謁見して、提案して……それで良いって言ってもらえるかは全然わからないしなぁ。
本を手に取って表紙を捲ろうとした瞬間、バンッと扉が開いた。
「謁見の許可取って来た! 行くよ!」
「え、今!?」
「ルードは夜勤明けでしょ? 寝てなよ。ほら、早く!」
あまりの勢いに本をルードに渡して――アデルに対して「ちょっと待って!」と声を掛けて寝室に向かい、服を着替え、それなりに身支度をしてからバタバタと駆け足で陛下の元へと向かった。
まさかこんなに早く謁見の許可がおりるとは思わなくて、驚いてしまった。
「よくこんなにすぐ、許可もらえたね?」
「キミ、ボクのこと誰だと思っているの。国賓だよ?」
「あ。……そうだった」
国賓でもこんなに簡単に謁見の許可っておりるもんなんだろうか。それとも、ここがそういう世界だから? 謎だ。……おれが考えても仕方ないことか……。
そして、おれとアデルは陛下と一緒にお茶を飲みながら、アデルに話した内容を陛下に伝えた。すると、陛下は興味深そうにおれの話を聞いてくれて、にっこりと笑って許可をもらった。
「それが中に居る人たちだけってのは、アレだから……。ちょっとこっちでも手を加えさせてもらうよ。それでも良い?」
「え? は、はい……。あの、一体どんな?」
「ふふ。多分あなたなら出来ると思うんだ」
楽しそうに口角を上げる陛下に、おれは首を傾げて、アデルは肩をすくめた。
「……それじゃあ、ちょっと話し合っておこうか。どんな風にするのかを、ね」
陛下がそう言うとアデルがおれに視線を向けた。どんな風にするのか……おれが想像していた話をすると、ふたりとも真剣に聞いてくれた。そこから、ああしたほうが良いとか、こうしたほうが良いとかどんどんと改善案が出てくる。
記憶を継承している陛下はともかく、アデルもこんなにアイディアを出してくれるとは……。
そうしているうちに、陛下の仕事が押し寄せてきたのでおれとアデルは陛下との話し合いを終えた。
「色々合わせないといけないから、練習しないとね」
「そうだね。――みんなに届くと良いな」
「人がどう思うかなんて、それぞれの感性だろうに……」
呆れたように、それでも、アデルは楽しそうに笑っていた。……笑うとかなり印象が変わるなぁ。そんなことを考えながら、おれとアデルは王城を後にした。
8
あなたにおすすめの小説
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
魔王に転生したら幼馴染が勇者になって僕を倒しに来ました。
なつか
BL
ある日、目を開けると魔王になっていた。
この世界の魔王は必ずいつか勇者に倒されるらしい。でも、争いごとは嫌いだし、平和に暮らしたい!
そう思って魔界作りをがんばっていたのに、突然やってきた勇者にあっさりと敗北。
死ぬ直前に過去を思い出して、勇者が大好きだった幼馴染だったことに気が付いたけど、もうどうしようもない。
次、生まれ変わるとしたらもう魔王は嫌だな、と思いながら再び目を覚ますと、なぜかベッドにつながれていた――。
6話完結の短編です。前半は受けの魔王視点。後半は攻めの勇者視点。
性描写は最終話のみに入ります。
※注意
・攻めは過去に女性と関係を持っていますが、詳細な描写はありません。
・多少の流血表現があるため、「残酷な描写あり」タグを保険としてつけています。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる