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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
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しおりを挟む――そして、式典は無事終わりを告げた。式典の後は帰っても良いし、なんだったら一緒にご飯を食べても良いと言われておれらはみんなで顔を見合わせて、屋敷に帰りますと揃って言った。
「ところでおれ、これからなんて名乗れば……?」
「ヒビキ・K・ホシナだね。同じ石の名前にするとは、陛下も粋なことをする」
「……ルードのKって……」
「ヒビキと同じ、カイヤナイト」
……祝福の名は石の名って決まりでもあるのかな……?
ともかく、なんかどっと疲れたからもう安心できる場所に居たい……! ちなみにアデルはおれに蔦を渡すとシリウスさんと帰っていった。シリウスさんは「いやぁ、見事だったよ!」と一言だけ感想をくれた。
サディアスさんとニコロも屋敷に戻ったみたい。結婚式の話でも進めるんだろうか。屋敷に帰って、服を着替えてホッとしたところで、寝室の扉がノックされた。うん? ルードも着替え終わっていたから、「どうぞ」と口にする。すると、屋敷の人たち――式典に来られなかった人たちも含めて――が、みんな来てくれた。
「ルードさま、ヒビキさま、おめでとうございます! そしてとても良いものを見させて頂いて、本当にありがとうございます!」
興奮したようにリーフェが言った。みんなうんうんとうなずいてくれた。中継でみていた人たちもいるみたい。
「ヒビキさまの歌を聞いていたら、私たちのところにも精霊が姿を見せてくれました」
……中継を見ていた人たちにも、精霊さんは姿を見せてくれたんだ……! おれが目を大きく見開くと、ルードがぽん、とおれの頭を撫でてくれた。ルードを見上げると、優しく微笑んでくれて……それからみんなに顔を向けた。
「式典に来ていた者、中継を見ていた者は既に知っているだろうが、私の名が改名された。ルード・K・ホシナが私の名になる。それと、ヒビキも祝福の名を授かり、ヒビキ・K・ホシナとなった。互いに爵位は伯爵。だが、皆にはこれからも今まで通り接してもらいたい」
使用人さんたちを代表してか、じいやさんが前に出てルードに跪いた。他の人たちも、跪いて……なんだか圧巻。
「心よりお慶び申し上げます。ルード坊ちゃん……いえ、この屋敷の主、ルード・K・ホシナさま。我々使用人一同、これまでに変わらない忠誠を、ルードさまとヒビキさまに捧げます」
おれも!? びっくりして目を丸くすると、ルードは淡々とみんなに対して「顔を上げよ」と口にした。
「……これらかも、よろしく頼む」
そう言うルードの表情は微笑んでいて、みんなの顔を見ると――みんな、微笑みを浮かべていた。ああ、ここの人たちは本当に……、家族、なんだなぁ。ルードの爵位が上がっても、名前が変わっても、彼らはずっと、ルードを信じてついて来てくれる。そのことが、自分のことのように嬉しい。
「そして、ヒビキさま。御年十六歳とのことで、二年ほど婚約期間がございますが、ルードさまのことをよろしくお願いいたします」
茶目っ気たっぷりでそう言われて、おれは思わず笑ってしまった。そして、みんなに対して笑顔で「こちらこそ!」と言うと、みんなにこにこと笑ってくれた。
「それでは、食事の準備を始めますね。今日はめでたい日なので、頑張って色々仕込んだんですよ!」
と、目を輝かせるマルセルさん。その言葉を聞いて、おれの腹が正直にぐぅぅ、と鳴いた。この屋敷に戻って緊張から解放され気が緩んだのかも。マルセルさんは「早急に準備します!」と張り切って寝室から出て行った。
他の人たちからも祝福の言葉を貰って、なんだか胸の辺りがぽかぽかしてきた。
「……ヒビキ、おいで」
使用人さんたちが出て行って、ぱたんと扉が閉じられるのと同時に、ルードが腕を広げておれを呼ぶ。おれは迷わずルードの胸の中に飛び込んだ。ぎゅうっと抱きしめられて、おれもルードのことを強く抱きしめた。
今日のための練習や、ルードの夜勤で中々こうして触れ合うことが出来なかった。だからなのかな……、ルードに抱きしめられるとドキドキするけど、それと同時にここがおれの居場所なんだって思う。
「ありがとう、ヒビキ」
「えっと、なにがでしょうか……」
「……すべて、かな」
抱きしめられたままルードを見上げると、ルードはそっとおれの頬に手を添えて、おれを愛しむように目元を細めた。
「私と出逢ってくれて……、支えてくれて……愛してくれて……。ヒビキが居たから、私は人を愛すること、愛されることを知った。身近な者たちの、親愛も含めて……きっとヒビキが居なければ、気付けなかった」
だから、ありがとう。
――そう言うルードに、おれはじっと彼を見つめた。彼の短い髪が揺れる。ゆっくりと顔が近付いて、もうちょっとで唇が重なるというところで、扉がノックされた。どうやら準備が終わったらしい。
おれとルードは顔を見合わせて、ふたりで笑い合った。
食堂に向かうと、みんなが出迎えてくれた。そして、改めて「おめでとうございます」と口を揃えて祝福してくれた。
ルードが、今日はみんなで食事をすることを許す、と言ってみんなでワイワイとマルセルさんの作った豪華な料理をたらふく食べた。おれの歌が聞きたいとリーフェとリアに言われて、ちょっとだけ歌ったりもして、楽しい時間を過ごす。
「本当に……本当に良かったですわ、ルードさま、ヒビキさま……」
多分、とても喜んでくれるのだろう。クレアさんが涙を流して、そっとリーフェがハンカチを渡していた。
こんな風にお祝いしてくれる人が居るって、すごく幸せなことだと思う。この人たちと一緒に生きていくんだって改めて実感した。そんな盛り上がりを見せていた宴も、終わりを迎え、さらにサディアスさんの屋敷から誰かが訪ねて来たようで、じいやさんが対応した。おれらは疲れただろうからもうお休みくださいと言われて、お風呂に入ってから寝室に向かい、今日の式典のことを話し合った。
「まさかサディアスさんとニコロのプロポーズを見るとは思いませんでした……」
「なにか企んでいるような気はしたけれど、まさかの公開プロポーズだったね。それも、貴族も平民も巻き込んでのプロポーズだ」
さすがサディアス、とクスクス笑うルードに、おれもうんうんとうなずいた。
「リハーサルにないことばかりで驚きました」
「私は事前に陛下から聞いていたけど……」
だからあんなに平然としていたのか。納得!
「それに、ヒビキの歌もとても心地の良いものだった。精霊たちがあのように姿を見せるのは、新鮮だったし……。魔物のダンスとアデルのピアノ、そのすべてが短期間で仕上げたとは思えないほどだった」
「あ、ありがとうございます……!」
寝室に蔦も戻していたから、蔦は「すごかったでしょー!」と自慢するように、そして「ほめてほめて~!」とばかりに伸びてきた。おれらが蔦を撫でると、満足したのか、それとも疲れたのか蔦はしゅるしゅると縮んでカップの中でくにゃりとリラックスするように休む。
それを見て、おれらは小さく笑みを浮かべた。すっとルードの手が頬に触れ、おれは目を閉じる。今度こそ、唇が重なった。
触れるだけの優しいキス。ちゅっ、ちゅっ、とリップ音を響かせながら。久しぶりに感じるルードの直接の体温に、躰がすぐに反応してしまう。まだ、キスしかしていないのに。ゆっくりと、ルードがおれのことを押し倒す。ギシリとベッドのスプリングが跳ねる音が聞こえた。
ルードは唇から離れて、額や頬、瞼や鼻先にもキスを落とす。
もっと触れて欲しくて、ねだるように腕をルードの首に回せば、ルードがくすりと笑う声がした。
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