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1話:すべての始まり。
「初めまして、レオン殿下」
「だぁれ?」
目線を合わせるようにしゃがみ込み、にこりと微笑む茶髪の少年。僕が首を傾げると、少年はすぐに自己紹介をしてくれた。
「フィンと申します。これから一年間、殿下の話し相手を務めます」
「おともだちっ?」
「はい、そうですね」
柔らかく微笑む茶髪の少年――フィンに、僕は新しいお友達が出来たと胸を弾ませたのを覚えている。
フィンがどうして一年間王城で僕の相手をしていたのかを知ったのは、かなり後になってからだったけど……。
「さて、レオン殿下。どんなことをして遊びましょうか?」
「えっと、えっとね」
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
男爵家の嫡男であったフィン。フィンの家はあまり裕福ではないらしく、僕の相手をすることでお金をもらっていたらしい。要するに話し相手と言う名のバイトだったのだ。フィンがどうしてそんなに僕に優しくしてくれていたのかを後から知って、ちょっとだけ寂しく思ったのも覚えている。
一年間、フィンはずっと僕と一緒に居てくれた。
この国の三男坊として生まれた僕は、ナニーメイドに育てられた。父上や母上、兄上たちにお会いすることは少なく、ただただ狭い世界の中で育った。
そのことについて不憫に思ったのか何なのか、父上がフィンを雇ってくれたのだ。
だからこそ、一年間でフィンが居なくなってしまうことを知った時、初めて大泣きをした。フィンはずっとぼくといるの! なんてことも口走ったことも……。
「すみません、ずっとは無理かと……」
「やだぁああ!」
我ながら子どもだったな、とあの時のことを思い返して赤面してしまう。お別れの日が近付いて来ていると言うのに、僕が駄々を捏ねたから周りの人たちが困惑していた。そんな時に、何とか宥めようと思ったのかナニーメイドがこっそりと教えてくれたんだ。
「好きな人と、ずっと一緒にいられるおまじないを教えましょう」
「おまじない……?」
ぐすぐすと泣きながら問う僕に、ナニーメイドは魔法の言葉を教えてくれた。
僕はそれを聞いて、早速バラの花束を用意してお別れの前にフィンにこう言った。
「フィン! ぼくとけっこんしてください!」
百八本の真っ赤なバラを用意して、フィンに魔法の言葉を言った。フィンは驚愕の表情を浮かべていたけれど、すぐに困ったように眉を下げて、
「えーっと、男同士では結婚出来ないんですよ、レオン殿下」
と言った。
その時の僕の衝撃! 結婚すればずっと一緒に居られると思っていたのに、まさか性別を理由に断られるとは思わなかった……。僕は混乱して、花束をフィンに押し付けると真っ先に父上の元に向かった。
「どうせいこんをみとめてください!」
「ええっ、レオンちゃぁぁぁあんんん!? いきなりパパのとこに来て何言ってるの!?」
「どう! せい! こん! を! みとめて! ください!」
僕が必死にお願いしているからか、それとも呆気に取られたからか、父上は目を白黒とさせていた。ちなみに大臣たちもいたから、何か話し合っていたのかもしれない。
「む、息子からの最初のお願いが……同性婚を認めて欲しいって……こんなの言われたパパってオレ以外いないんじゃないか!?」
ちょっと嬉しそうにそう言う父上が、大臣たちに引かれていた。何言ってんだこいつって目つきだった。そして、それは僕にも向けられた。大臣は僕と視線を合わせて、どうしてそんなことを口にしたのかを聞き出し、僕は素直に「フィンがすきだからけっこんしたい。けっこんすればずっといっしょにいられるんでしょ?」とと大臣に答えた。
その場にいた、父上以外の臣下が一斉に頭を抱えていた。僕の言葉が色々ショックだったらしい。
「うーん、今すぐには難しいなぁ。……ところで、結婚がどういうものなのかわかってる?」
「すきなひとといっしょにいられる!」
「うんうん、そうだねー。恋愛は大事だねー。でもねー、王族の結婚は……」
「パパはぼくがすきなひととむすばれてほしくないの……?」
しくしくと悲し泣きするように両手で顔を覆って、すっごく悲しそうにそう言うと、父上は「うっ」と言葉を詰まらせて、それから優しくぽんぽんと頭を撫でて、
「よーし、パパがんばっちゃうよー!」
と、その場にいた臣下たちを固まらせる言葉を口にした。僕は満面の笑みを浮かべて、「ありがとう! パパだいすき!」と父上に抱き着いた。
一番下と言うこともあり……と言うか、当時の僕は少女のような見た目だったからだろう。両親も兄上たちも、たまにしか会わない僕に対してデレデレだった。
だからこそ、僕はこの見た目を利用して父上たちを味方につけることにした。
貴族では多い金色の髪。紫色の目は珍しいかもしれないが、この国の王族は大体その紫色の目だ。
それから、同性婚を認めさせる法律を作るのに五年も掛かってしまった……。フィンはもう十五歳になり、十五歳の誕生日に僕は再びフィンにプロポーズをした。魔法の言葉がプロポーズだと気付いたのは、同性婚の法律を作っている途中だ。
百八本のバラの花束を再び用意して、フィンの誕生日に彼の家に向かった。
男爵家は本当にお金がないようで、見るからにボロボロの住まいにフィンたち家族は住んでいた……。
「同性婚が認められました! 僕と結婚してください!」
「お互い未成年でしょう? 未成年は結婚出来ませんよ」
第二のショックが僕を襲った。
この国の成人は二十歳……。フィンはあと五年、僕はあと十年……。
「いつなら結婚出来ますか……?」
とりあえずバラの花束をフィンに押し付けて、僕は弱々しく尋ねた。フィンはやっぱり困ったように眉を下げながらも、僕に視線を合わせてちょっと屈んだ。
「そうですねぇ……。殿下が成人して、その気持ちに変わりがなければ考えますね」
僕はぱっと顔を上げてフィンを見る。あと十年、フィンを想い続けていれば結婚出来る……! そう思って僕はうなずいた。フィンを絶対に僕のお嫁さんにしようと思ったんだ。
フィンの誕生日をお祝いして、ほくほくとした気持ちで王城に戻った僕に届いた報せを聞いて、僕は一週間くらい寝込んだ。
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