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11話:さて、綺麗にしますか。
「……さて、ノーマが天に向かったところで、ギルベルト、ちょっと僕とお話ししようか」
「……はい、レオン殿下」
「でも、その前にこの部屋浄化するから、水をたくさん用意してくれる?」
「かしこまりました」
「――あと、屋敷の使用人……フィン、ディルク、クラウス以外、全員この部屋に集めて」
「御心のままに」
一応クラウスにこっちに来るなって伝えておこう。魔力を使って小鳥を作る。この魔法でクラウスに伝えるのだ。……それにしても、イアン、か。……やっぱりこの領地、色々警戒が必要だな。
三十分もしないうちに、大量の水と使用人全員がこの部屋に集まった。僕は水の量を確認してうなずく。部屋の真ん中に全員を集めて、大量の水に僕の力をわける。この力が目覚めたのは、一週間寝込んだ後。――『聖なる力』なんて、僕に宿るとは思わなかったよね。
僕の魔術で水を出しても良いんだけど、なぜか魔術で出した水には『聖なる力』は宿らないんだよね……。聖水作るのって結構面倒だけど……。フィンが安全に暮らすためだ。全然苦じゃない。……教会で山のように作らされた時より、全然マシ!
「動かないでねー」
念のためそう言って、僕は作り上げた聖水で魔法陣を描く。浄化の魔法陣だ。人数が多いとこの方が楽だし。……恐らく、ここの使用人たちは自分たちの気付かないうちに黒い靄にとり憑かれている。僕の目に薄っすら見えるくらいだし、今のうちに不安要素は除いておかないと。
「それじゃ、今からちょっと――刺激が強いかもしれないけど、我慢してね」
この力に目覚めてから、たまに教会に連行……いや、手伝いに行った時に浄化のやり方も教わったけど……。その浄化された人たちの苦しみようったら。阿鼻叫喚とはこのことか、と思うくらいだから……。まぁ、多分重症な人たちだったんだろう。……そうであったと願いたい。
目を閉じて、使用人たちの黒い靄を取り出すイメージを膨らませていく。――大分集まったかな。この黒い靄は人の悪意の化身……らしい。教会の人たちの説明では。とはいえ、人なんて欲望の塊なんだから、黒い靄はあっという間に人の中に入り込むんだけど。
それに、欲望も悪いばかりじゃないしね。
黒い靄を包み込むようなイメージで聖水の中へ閉じ込める。そして一気に捨てる!
「ひっ」
「ぐっ」
……それなりの刺激があったようだ。何名か耐えらずに声が出たようだが、とりあえず浄化完了。使用人たちの顔を見てみると、それぞれスッキリとした表情を浮かべていた。おまけに前もって持って来ていた聖水を空間魔法から取り出して使用人たちに渡していく。
「これを飲んだら、今日は休んでいいよ。ギルベルトだけ残ってね」
使用人たちは互いに顔を見合わせて、戸惑ったように視線を巡らせてから、部屋から出て行った。
「――うん、きっちりと浄化出来ているね。ここに来てから浄化は初めてだから、ちょっと緊張したなぁ」
部屋がびしょ濡れになってしまったのは……まぁ、仕方のないこととして。この程度なら魔法で何とかなるし。と言うわけで、魔法を使って乾かした。
「……レオン殿下は魔力も高いのですね」
「普通だよ」
使いすぎれば倒れるし。それは『聖なる力』もそうだから……。乾いた椅子に座って、ギルベルトと向かい合う。
「――この屋敷で何があったのか、思い出せる範囲で良いから話してくれない?」
ギルベルトは小さくうなずき、口を開いた。
彼はずっとこの屋敷で働いていたみたいだから、知っていることをすべて話してくれた。代々アルムシェの領主は、呪われるということだ。
だからこそ、アルムシェの領主はコロコロと変わる。それでも不思議なことに、アルムシェの領主になれるのは名誉なことと伝えられていることだ。
まぁ、まともな精神の人ほどこの場所は精神が病みやすいのかもしれない。
「この地は多くの血が流れました。この地を手に入れるために数多くの戦が起こり、そのたびに領主への恨みが重なっていった……のかもしれませんが、初代から五代目に掛けては平和だったと聞いています」
「六代目からずるずると……?」
「いえ、調べてみたのですが、この地が最も血に染まったのは四代目の時のようです。ですが、四代目は最期までこの地を守り抜いたと伝えられています」
じゃあ五代目からかな、狂い始めたのは。……呪い、ねぇ……。
数回神官が浄化したって聞いたことはあるけれど、それすら跳ね返すほどの力があると言うことなのだろうか……。
「長く働いている人ほど影響を受けている、と言うわけではないようだね?」
「そうですね……。むしろ、新しく来ている方々のほうが影響を受けやすいのかもしれません……」
耐性が出来ている……?
しかし……呪いねぇ。呪いってなんだかなぁ。先代領主はこの地を離れてから大分精神が回復していると聞いたけど……。
「……フィンに影響がないようにしなきゃ……。街の地図をもらえる?」
「用意いたします」
ぺこりと頭を下げてギルベルドが出て行った。
そのすぐ後に扉がノックされた。僕が「入れ」と答えると、ディルクとフィンが入って来た。
「大体回ってきましたー」
「……あれ、何かここ……空気が軽くなりました?」
「……フィン、部屋の前で何か感じていたの?」
「あ、いえ……。何となく、なんですけど……。重いなぁって」
……フィンはそう言うのを感じやすいタイプなのかもしれないな。とはいえ、ノーマが殺されたのはこの部屋じゃないから、そんなに重くなることはないと思ったけど……。それはただ単に、僕がそう言うのに慣れているから、かもしれない。
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