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season1
33話:箒の完成
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樹脂を魔法陣に追加して、アレクの描いた図を元に部品の形をイメージして呪文を唱え、部品を成形していきます。
「あ。ハンドル失敗した……」
シティサイクルのように軽いカーブのハンドルにするつもりが大きく曲がりすぎてしまいました。
「もしかしてこれは……ヤンキーがよく乗ってるカマキリハンドル……!」
――うん。時間もありませんし、とりあえずこれでもいいですよね。次いきましょう。
この後もワタクシは何度か失敗しながら4時間半かけて部品を作りました。
「なんとか出来ました……さぁ、アレクを呼んでこないと……」
ワタクシは急いで工具箱片手にリビングへ、アレクを呼びに行きました。
アレクはソファに寝転がって漫画を真剣な顔で読んでいます。テーブルの上には大量の漫画の続きが山積みになっていました。
「さ、アレク。あなたの出番ですよ」
「――なんだよ。お兄ちゃん今から孔明を3回目のお迎えに行くとこだから、後にしろよ」
「何言ってんですか、こっちはアレクを迎えにきたんですよ。部品ができたから組み立て手伝ってください!」
「えー、なんだよ、まだ三国志読み終わってねぇんだよ。劉備どうなるのかすげぇ気になるんだけど……」
「劉備も曹操も孫堅も皆死んで、まったく違う人の国ができて終わりですから早く行きましょう!」
「えぇぇぇぇなんだよその終わり方⁉ 納得いかねぇ‼」
「納得いこうがいくまいがそれが歴史ですから」
「オマエなぁ……」
さらに文句を言おうとするアレクに工具セットを渡して、ワタクシ達は店の外のスペースへ戻りました。
「――よし、組み立てするかぁ」
「アレク、頼みましたよ! ワタクシはどうにもこういうのは不得意ですから……」
「おう、お兄ちゃんに任せろ!」
アレクは工作系が得意で棚や柵を作ったり、屋根の補修や、水周りの修理もできたりと何かと器用なのです。
彼は工具箱から次々と工具を取り出し、設計図もろくに見ずに組み立てていきます。
「設計図、見なくて大丈夫ですか?」
「ん? 大丈夫だぞ。だってこの設計図は俺が描いたんだから俺の頭の中と同じだろう」
「それはそうですが……」
「それよりもさぁ、このハンドルすげぇ曲がってるけど、気のせいか?」
「気のせいです、絶対気のせいです」
「俺の記憶だとこんなに曲がってないぞ⁉」
「アレクの記憶違いですよ」
「そうか……?」
アレクは少しの間、眉をきゅっと下げ視線を宙に彷徨わせ考え込んでいましたが、まぁいいかとつぶやいて大きく曲がったハンドル取り付けました。
彼の手際は実に素晴らしく、一人でどんどん箒にパーツを取り付けていきます。
「――よし、できたぞ!」
1時間もしないうちにワタクシの目の前にはハンドルと座席と足を置く場所の付いた2組の箒がありました。
「すごいですね! これならきっとお婆ちゃん達でも乗れますよ!」
「……そうだなぁ」
うれしそうなワタクシに対し、アレクはまだ納得がいかないと言いたげな表情をしています。
「もう少ししたら夕方だし暗くなるだろ。お婆ちゃんたちは夜空を飛ぶってジンちゃんが言ってたし、このままだと危ないな」
そういえばそうでした。あと1時間もすれば日が沈み始めるでしょう。
「じゃあ、暗くても見えるようにライトでも追加しますかねぇ……?」
「確か倉庫にちょうど良いのがあったぞ。ちょっと待ってろ」
アレクは倉庫からクリスマスのイルミネーションに使ったLEDライトを持ってきて座席からハンドルまであちこちに付け始めました。
「電飾かなり多くないですか⁉ デコトラじゃないんですから……」
「この方がカッコいいと思うぞ?」
ちょうど辺りが暗くなってきた頃には、まるで歓楽街の看板のように電飾が光る魔法の箒が出来上がりました。
ただでさえヤンキーっぽいハンドルなのに、こんな悪趣味なアレンジにしてしまって魔女のお婆さん達に怒られないといいんですが。
「あ。ハンドル失敗した……」
シティサイクルのように軽いカーブのハンドルにするつもりが大きく曲がりすぎてしまいました。
「もしかしてこれは……ヤンキーがよく乗ってるカマキリハンドル……!」
――うん。時間もありませんし、とりあえずこれでもいいですよね。次いきましょう。
この後もワタクシは何度か失敗しながら4時間半かけて部品を作りました。
「なんとか出来ました……さぁ、アレクを呼んでこないと……」
ワタクシは急いで工具箱片手にリビングへ、アレクを呼びに行きました。
アレクはソファに寝転がって漫画を真剣な顔で読んでいます。テーブルの上には大量の漫画の続きが山積みになっていました。
「さ、アレク。あなたの出番ですよ」
「――なんだよ。お兄ちゃん今から孔明を3回目のお迎えに行くとこだから、後にしろよ」
「何言ってんですか、こっちはアレクを迎えにきたんですよ。部品ができたから組み立て手伝ってください!」
「えー、なんだよ、まだ三国志読み終わってねぇんだよ。劉備どうなるのかすげぇ気になるんだけど……」
「劉備も曹操も孫堅も皆死んで、まったく違う人の国ができて終わりですから早く行きましょう!」
「えぇぇぇぇなんだよその終わり方⁉ 納得いかねぇ‼」
「納得いこうがいくまいがそれが歴史ですから」
「オマエなぁ……」
さらに文句を言おうとするアレクに工具セットを渡して、ワタクシ達は店の外のスペースへ戻りました。
「――よし、組み立てするかぁ」
「アレク、頼みましたよ! ワタクシはどうにもこういうのは不得意ですから……」
「おう、お兄ちゃんに任せろ!」
アレクは工作系が得意で棚や柵を作ったり、屋根の補修や、水周りの修理もできたりと何かと器用なのです。
彼は工具箱から次々と工具を取り出し、設計図もろくに見ずに組み立てていきます。
「設計図、見なくて大丈夫ですか?」
「ん? 大丈夫だぞ。だってこの設計図は俺が描いたんだから俺の頭の中と同じだろう」
「それはそうですが……」
「それよりもさぁ、このハンドルすげぇ曲がってるけど、気のせいか?」
「気のせいです、絶対気のせいです」
「俺の記憶だとこんなに曲がってないぞ⁉」
「アレクの記憶違いですよ」
「そうか……?」
アレクは少しの間、眉をきゅっと下げ視線を宙に彷徨わせ考え込んでいましたが、まぁいいかとつぶやいて大きく曲がったハンドル取り付けました。
彼の手際は実に素晴らしく、一人でどんどん箒にパーツを取り付けていきます。
「――よし、できたぞ!」
1時間もしないうちにワタクシの目の前にはハンドルと座席と足を置く場所の付いた2組の箒がありました。
「すごいですね! これならきっとお婆ちゃん達でも乗れますよ!」
「……そうだなぁ」
うれしそうなワタクシに対し、アレクはまだ納得がいかないと言いたげな表情をしています。
「もう少ししたら夕方だし暗くなるだろ。お婆ちゃんたちは夜空を飛ぶってジンちゃんが言ってたし、このままだと危ないな」
そういえばそうでした。あと1時間もすれば日が沈み始めるでしょう。
「じゃあ、暗くても見えるようにライトでも追加しますかねぇ……?」
「確か倉庫にちょうど良いのがあったぞ。ちょっと待ってろ」
アレクは倉庫からクリスマスのイルミネーションに使ったLEDライトを持ってきて座席からハンドルまであちこちに付け始めました。
「電飾かなり多くないですか⁉ デコトラじゃないんですから……」
「この方がカッコいいと思うぞ?」
ちょうど辺りが暗くなってきた頃には、まるで歓楽街の看板のように電飾が光る魔法の箒が出来上がりました。
ただでさえヤンキーっぽいハンドルなのに、こんな悪趣味なアレンジにしてしまって魔女のお婆さん達に怒られないといいんですが。
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