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season1
36話:アレクの暴走
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「やべぇなぁ……ジェル、見ろよ。このスワンちゃんの愛らしい瞳。最高の芸術だよな……!」
目の前の価値観が狂ってしまった兄は、ただの粗大ゴミに陶酔し延々と褒め称え続けています。
「あぁ……くちばしの艶やかなフォルムから漂う気品……この純白は清き心の証なのか……神が与えし造形の美……!」
アレクは涙ぐみながらおまるに頬ずりしています。――あなた、ついこないだまでそこに尻を乗せてたんですけどねぇ。
「……アレク、今のあなたは呪いにかかってるんです。だから粗大ゴミのおまるが宝物に見えているだけなんですよ」
「なんだと⁉ スワンちゃんが粗大ゴミなわけねぇだろ‼ オマエの目は節穴か⁉」
「いや、だからアレクの目がどうかしちゃってるんですってば……」
「うあぁぁぁぁぁ‼ なんでスワンちゃんの素晴らしさを理解してくれないんだ‼」
傍から見たら気がふれたとしか思えない姿があまりにも不憫だったので声をかけたのですが、それは逆効果だったようで兄はどんどん思いつめ、おまるに感情移入していきます。
「もういい、俺はスワンちゃん布教の旅に出る! ――さぁスワンちゃん! 俺と大空へ飛び立とう‼」
そう言い残して、とうとうアレクはおまるを抱えたまま涙目で店の外へ飛び出して行ってしまいました。
「やれやれ……まぁ呪いの効力が切れたら戻ってくるでしょうし……おなかがすいたら帰ってきますかねぇ」
ワタクシはとりあえず紅茶を入れなおして、店のカウンターへ腰掛けました。
アレクから連絡が入るかもしれないとスマホを手にとってみますと、ネットニュースの防犯情報に新着の表示が点滅しているのが目に入りました。
なんとなく気になってタップして見てみると……
『不審者情報。20代くらいの黒髪の男性に「この素晴らしいスワンちゃんを見てくれ」等と声をかけられる事案が発生しました。不審者を見かけたらすぐに110番通報をお願いします』
「うあぁぁぁぁぁぁ‼ いつの間にかアレクが事案にぃぃぃぃぃ‼」
ワタクシはアレクを野放しにしたことを心底後悔しながら、身内から犯罪者が出る前に急いで連れ戻すことにしたのでした。
幸いアレクはすぐ見つかり連れ戻せたのですが。
そして1ヵ月後。
「ねぇ、ジェル。おまるマンって知ってる?」
「どうしたんですか、シロ」
「最近流行ってる都市伝説でさ。おまるを持った男が『スワンちゃんを見ろ』って追いかけてくるんだってさ」
「へぇ……怖いですねぇ」
――都市伝説ってそうやって生まれるんだな、とワタクシは相槌をうちながら苦笑したのでした。
目の前の価値観が狂ってしまった兄は、ただの粗大ゴミに陶酔し延々と褒め称え続けています。
「あぁ……くちばしの艶やかなフォルムから漂う気品……この純白は清き心の証なのか……神が与えし造形の美……!」
アレクは涙ぐみながらおまるに頬ずりしています。――あなた、ついこないだまでそこに尻を乗せてたんですけどねぇ。
「……アレク、今のあなたは呪いにかかってるんです。だから粗大ゴミのおまるが宝物に見えているだけなんですよ」
「なんだと⁉ スワンちゃんが粗大ゴミなわけねぇだろ‼ オマエの目は節穴か⁉」
「いや、だからアレクの目がどうかしちゃってるんですってば……」
「うあぁぁぁぁぁ‼ なんでスワンちゃんの素晴らしさを理解してくれないんだ‼」
傍から見たら気がふれたとしか思えない姿があまりにも不憫だったので声をかけたのですが、それは逆効果だったようで兄はどんどん思いつめ、おまるに感情移入していきます。
「もういい、俺はスワンちゃん布教の旅に出る! ――さぁスワンちゃん! 俺と大空へ飛び立とう‼」
そう言い残して、とうとうアレクはおまるを抱えたまま涙目で店の外へ飛び出して行ってしまいました。
「やれやれ……まぁ呪いの効力が切れたら戻ってくるでしょうし……おなかがすいたら帰ってきますかねぇ」
ワタクシはとりあえず紅茶を入れなおして、店のカウンターへ腰掛けました。
アレクから連絡が入るかもしれないとスマホを手にとってみますと、ネットニュースの防犯情報に新着の表示が点滅しているのが目に入りました。
なんとなく気になってタップして見てみると……
『不審者情報。20代くらいの黒髪の男性に「この素晴らしいスワンちゃんを見てくれ」等と声をかけられる事案が発生しました。不審者を見かけたらすぐに110番通報をお願いします』
「うあぁぁぁぁぁぁ‼ いつの間にかアレクが事案にぃぃぃぃぃ‼」
ワタクシはアレクを野放しにしたことを心底後悔しながら、身内から犯罪者が出る前に急いで連れ戻すことにしたのでした。
幸いアレクはすぐ見つかり連れ戻せたのですが。
そして1ヵ月後。
「ねぇ、ジェル。おまるマンって知ってる?」
「どうしたんですか、シロ」
「最近流行ってる都市伝説でさ。おまるを持った男が『スワンちゃんを見ろ』って追いかけてくるんだってさ」
「へぇ……怖いですねぇ」
――都市伝説ってそうやって生まれるんだな、とワタクシは相槌をうちながら苦笑したのでした。
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