アビゲイル・サーガ ~侍女から始まる英雄譚~

瑪瑙 鼎

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15:聖女来訪

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 その日、私はお仕着せのワンピースに身を包んだまま、頑丈な石垣に取り囲まれた広い修練場に佇み、準備を整えていた。左手を顔の前に上げて口を寄せると、手首に巻き付いている革帯を歯で噛んで引っ張り、籠手ガントレットを固定させる。反対側には坊ちゃんが佇み、両手を組み合わせてしきりに手首を回していた。石垣の上に開いた小窓の中から数人の騎士達が顔を覗かせ、私達二人を見下ろしている。

「…お待たせしました」
「よし…行くか…」

 私は左手首を振って籠手の感触を確かめると、右足を引き右腕を庇いながら、左腕を前方へと掲げる。私の左掌の向こう側に見える坊ちゃんは、首を左右に振って鳴らすと、私へと目を向けた。

「≪氷河グレイシア≫」

 坊ちゃんが両手を軽く前に突き出し、掌を下に向けて払う前に、私は右へと走り出した。坊ちゃんの足元から二筋の光が伸び、斜めに広がるが、私はすでに二筋の光の狭間から脱している。光を追うように地面から乱立する氷槍を無視し、私は地面を蹴って方向転換すると、坊ちゃんの許へと飛び込んで行く。

「≪三槍トリプル・ランス二連・トゥワイス≫」

 坊ちゃんが両手を水平に払うと白い靄が横に広がり、収斂して6本の氷槍が横並びで現れた。6本の氷槍が一斉に私へと襲い掛かるが、私は走りながら体を捻り、左腕を体の前に立てて横に払い、真ん中の2本のうち左側の氷槍へと叩きつける。氷槍の射線がずれ、開いた隙間に体を滑り込ませると、私の主張の激しい胸の前を右側の氷槍が通り過ぎる。坊ちゃんの左手が横に広がるのを見た私はすかさず右足で地面を蹴り、左斜め前へと飛び込んだ。

「≪氷河グレイシア≫」

 私のすぐ後ろを、右から左へ斜めに氷槍が次々と乱立する。直後に右へと方向転換し、坊ちゃんの懐へと飛び込むと腰を低く構え、左腕を引き絞る。だが坊ちゃんの右掌が光り輝くのを認めた私は左手の力を抜き、勢いよく頭を下げた。

 おっと、新作だ。

 途端、私の頭の上を氷の剣が横切った。左掌も輝き出したのを認めた私は地面を蹴り、坊ちゃんの右脇へと体を滑り込ませる。坊ちゃんが両手に氷の剣を掴んだまま大きく横に跳んで私の攻撃を躱そうとするが、右腕が使えない私は坊ちゃんの脇を素通りするだけだ。

 坊ちゃんもマメだなぁ。あんな魔法付与装身具アーティファクトを作っていたなんて。

 よく見ると、坊ちゃんの両手首に見慣れないブレスレットが煌めいている。魔法石が小さいから、10分も持たないな。緊急避難用か。そう冷静に判断した私は左足で地面を蹴って跳躍し、距離を取ろうとする坊ちゃんを追って宙を舞う。右足を振り上げて、剣を横なぎに払おうとする坊ちゃんの左手首を蹴り返すと、所在なく空中に掲げられた坊ちゃんの右手首を左手で掴み、思いっ切り右に引っ張った。

「せいっ!」
「おわぁっ!?」

 坊ちゃんと私の体が、空中でもつれる。坊ちゃんの体はつんのめるように前のめりになり、私は坊ちゃんの右手首を掴んだまま左手を捻り、坊ちゃんの右肩を左の脇の下に抱き込んだ。坊ちゃんは右腕を私に取られ、私の体を右肩に乗せたまま、前のめりで倒れる。私は左足を前に踏み出して仁王立ちで着地すると、左手一本で坊ちゃんの右腕を天空に向けて捻り上げ、右肩を極めたまま背中越しに振り返った。

「坊ちゃん、降参しますか?」
「…参った」

 私の左脇の下で坊ちゃんが私に背中を向け、地面に向かって宣言する。私が手を離すと、坊ちゃんは体を起こして左手を右肩に添え、右腕を上下に動かしながら、悔しそうに呟いた。

「クソぉ…かすりもしねぇ…」
「アイディアは良いんですけどね、坊ちゃんの腕では無理ですよ」
「容赦ねぇな、お前…」

 恨めし気な目を向ける坊ちゃんに対し、私は左手首を振って雑作もなく答える。

 旦那様よりマリアンヌ様の血をより濃く受け継いだ坊ちゃんは、帝国でも有数の魔術師へと成長しつつあるが、その反面、剣技や体術はほとんど才能がない。坊ちゃんの魔法は豊富な魔力に任せ物量で押し切るタイプなので、懐まで飛び込める者はそうそう居ないが、詰め寄られると侍女の私にさえ手も足も出ない。坊ちゃんにそう指摘したら、眉間に皴を寄せて怒られた。

「何処の世界に、あの弾幕を掻い潜り、大の男を左手一本で締め上げる侍女が居るんだよ?ウチの騎士だって、すでに半数以上ノシてるだろうが」
「私の寿命なんて蜻蛉カゲロウより短いですからね?5分も戦ったら、自滅します」

 右腕さえ動かさなければそれなりに戦えるが、大きく体を動かせば、どうしても右肩が動いてしまう。騎士相手の模擬戦も一日に一戦、5分が限度だ。坊ちゃんもそれをわきまえているので、再戦しろとは言って来ない。不完全燃焼で不貞腐れる坊ちゃんを宥めるように、私は笑顔を浮かべた。

「…でも坊ちゃん、あんな魔法付与装身具アーティファクトまで作るだなんて、あの時私が言った事をちゃんと守ってくれているんですね?どんなに無様でも構いませんから、坊ちゃんは必ず生き延びて下さい」
「…フン」

 私の賞賛に、坊ちゃんは一瞬目を瞬かせた後、眉間に皴を寄せてそっぽを向く。その頬が薄っすらと赤くなるのを見て、私は笑いを堪えながら坊ちゃんと共に修練場を後にした。



 修練場を出て館に戻って来ると、マリアンヌ様が顔を出した。マリアンヌ様は私達を認めると足早に近づき、私の目を見て微笑んだ。

「リュシー、朗報よ!聖女様がようやくサン=スクレーヌにお見えになられるわ!」
「え…?」
「本当か、お袋!?」
「言い方!」

 思わず目を瞬かせる私の隣で、坊ちゃんが目を見開いて大声を上げる。マリアンヌ様は坊ちゃんを窘めると、両手で私の左手を取って上下に勢いよく振りながら、満面の笑みを浮かべた。

「リュシー、もう少しの辛抱よ!あなたの右肩、必ず治してあげるからね!」



 ***

 翌週、私達は館の入口の前に立ち、聖女様の到着を待っていた。旦那様とマリアンヌ様、坊ちゃんの三人は玄関に通ずる石段の下で横一列に並び、馬車の到着を待つ。表門から玄関へと至る広い敷地内の沿道にも、大勢の騎士達が等間隔で並んでいる。私は他の執事や侍女と共に玄関脇に整列し、旦那様のすらりとした背中に見入っていた。

 やがて表門が開き、20騎程の騎馬に守られた2頭立ての馬車が姿を現わした。馬車は敷地内を走る沿道を通り、石段の前で停車する。馬車を護衛していた騎士達が次々に馬から降りてその場で直立する中、一人の騎士が馬車へと駆け寄り、馬車の扉を開ける。旦那様が前に進み出て、馬車の扉に向かって手を差し伸べた。

「フランシーヌ様、御手をどうぞ」
「オーギュスト様、ありがとうございます」

 旦那様の手を取って馬車から姿を現わしたのは、金色の髪を湛えた、20代半ばの美しい女性だった。女性は襟元と袖に幾何学模様があしらわれた白を基調としたローブに身を包み、左手を胸元に添え、短い錫杖を大事そうに抱えている。その姿態が描く曲線は柔らかく慈しみに溢れており、聖女というより「聖母」と表現したくなるような母性が感じられた。フランシーヌ様は旦那様の手を借りて馬車を降りながら、柔らかな眼差しを旦那様へと向け、微笑んだ。

「オーギュスト様、ご無沙汰しておりました。5年ぶりでございますか。長い間ご挨拶にもお伺いせず、申し訳ございません」
「いえ、フランシーヌ様、お気になさらず。フランシーヌ様とカサンドラ様のお役目を考えれば、このような辺境にそうそう足を運べないのは当然の事。せめて今宵は当家でゆっくりとおくつろぎいただき、日々の疲れを癒して下さい」

 両脇に並ぶ騎士や家人達が一礼する中、旦那様とフランシーヌ様は歓談を交えながら館へと向かい、その後ろをマリアンヌ様と坊ちゃんが追う。途中、私の前を通り過ぎようとしたところで、坊ちゃんが私に目配せをした。

「…」

 私は黙って頭を下げ、坊ちゃん達を見送る。坊ちゃん達が館の中に消えた後も私達は暫くの間その場に佇み、やがて家令の指示に従って解散し、各自の持ち場へと戻って行った。



 私は他の侍女と別れ、坊ちゃんの執務室に一人で戻ると、部屋の中で呼び出しが来るのを待つ。暫くすると扉がノックされ、執事が顔を出した。

「リュシー、旦那様がお呼びだ。来てくれ」
「はい」

 私は執事に従い、貴賓室へと向かう。執事と共に貴賓室の扉の前で佇んでいると、中から旦那様の声が聞こえて来た。

「…フランシーヌ様、お疲れのところ申し訳ありませんが、実は家人に一人、ワイトに噛まれた者が居りまして。恐れ入りますが、浄化をお願いできますでしょうか」
「ワイトですか?…ええ、構いません。お呼び下さい」
「ありがとうございます」

 旦那様の言葉を聞き、執事が扉をノックする。中から応えがあり、私は執事が開けた扉を抜け、一人で貴賓室へと足を踏み入れた。

 貴賓室には、長いテーブルが奥に向かって伸びるように据え置かれ、対面にフランシーヌ様がお座りになり、扉の前に立つ私を見つめていた。私から見てフランシーヌ様の左側の席に旦那様が腰を下ろし、右側の奥にマリアンヌ様、手前に坊ちゃんが座っている。私はフランシーヌ様に向かって深々と頭を下げた。

「フランシーヌ様、この度はお目もじいただき、誠にありがとうございます。リュシー・オランドと申します。私などのために貴重なお時間をいただき、感謝の言葉もございません」
「初めまして、フランシーヌ・メルセンヌです。僭越ながら、教会より聖女の名を拝しております。リュシーさん、早速浄化を行いましょう。こちらにお越し下さい」
「はい」

 フランシーヌ様の言葉に私はもう一度頭を下げ、坊ちゃん達の後ろを回ってフランシーヌ様の脇に立つ。

「まずは傷を見せていただけますか?…と…」

 フランシーヌ様は柔らかく微笑みながら私に手を差し伸べようとするが、その手が途中で止まり、彼女は旦那様へと目を向ける。私は、旦那様へと顔を向けたままのフランシーヌ様の後頭部に向かって語り掛けた。

「大丈夫です、フランシーヌ様。この傷は過去に何度も見られていますから」
「そ、そうなの?あなたがそう言うのならば、構わないけれど…」

 フランシーヌ様の気遣いに感謝しながら、私は首元に左手を掛け、片手で一つ一つボタンを外していく。胸元までボタンを外したところで右襟に親指を引っ掛けて押し出し、右肩を曝け出した。

「…ひっ!?」

 途端、フランシーヌ様が目を見開き、手で口を押さえて悲鳴を押し殺した。フランシーヌ様の顔は蒼白になり、彼女は手で口を押さえ顔を強張らせながら、私の右肩に着いた歯形を目で追っていく。

「…な、何なのよ、これぇ…」
「どうなされたのですか、フランシーヌ様?」

 やがて、私の肩の傷口に釘付けとなったままフランシーヌ様が漏らした言葉に、旦那様が顔を曇らせ、前のめりになって問い質す。旦那様の質問に、フランシーヌ様はなおも私の傷に目を奪われたまま、半ば呆然と答えた。

「…これ、ワイトなんかじゃないわよ…」
「え?」
「と、とにかく、浄化してみるわね。…女神よ、七徳をもって彼の者を蝕む邪を追い祓い給え。≪聖浄プリフィケーション≫」

 フランシーヌ様は慌ただしく居住まいを正すと、右手に持った錫杖を私の右肩に添え、左手をご自身の顔の前に掲げて瞑想する。フランシーヌ様の詠唱と共に錫杖が光を放ち、私の右肩を包み込む。私の目の前でフランシーヌ様は錫杖を片手に5分10分と瞑想を続け、彼女の額に玉のような汗が幾つも浮かんでくる。

「っはぁ!はぁ、はぁ、はぁ…」

 やがてフランシーヌ様が大きく息を吐き出し、肘掛けに肘をついて肩で息を繰り返した。そして、やっとの事で呼吸を整えると顔を上げ、私の肩を見て愕然とした。

「…びくともしてない…」



「…フランシーヌ様?」

 フランシーヌ様の言葉にマリアンヌ様が顔色を変え、恐る恐る尋ねる。マリアンヌ様の問いにフランシーヌ様は振り返り、戦慄くように答えた。

「…申し訳ありません。私の手にも負えません。これを浄化できるのは、北部戦線に居るカサンドラ姉様、ただ一人です」
「そんなっ…!」

 マリアンヌ様が両手で口元を押さえるのを横目に、フランシーヌ様が再び私へと振り返った。顔を強張らせ、私に尋ねる。

「ねぇ、リュシーさん。あなたを襲ったのは、本当にワイトだったの…?」
「え?…ええ、アンドレ隊長がそう仰っていましたから」

 ラシュレー家の領土である帝国西部突出部は三方を強国に囲まれており、対峙する相手は同じ人間や魔物となる。一方、大陸の北端に開いた「孔」は隣国の向こう側にあるため、アンデッドがラシュレー領に侵入する事はほとんどなく、そのため当時新米騎士だった私はアンデッドに明るくなかった。私が当時の事を思い出して答えると、フランシーヌ様が質問を重ねる。

「どんな姿だったか、教えてくれる?」
「えぇと…ボロボロのマントを頭から被った上半身だけの骸骨で、マントから何から全て真っ黒でしたね…」



「――― っ!?待って!」



 私が左手指を顎に当て、上を向いて記憶を掘り返していると、部屋の中に甲高い声が鳴り響いた。目線を戻すと、旦那様とフランシーヌ様の二人が椅子から立ち上がり、愕然としている。

「…リュシー、君からその報告は、聞いてないぞ…」
「…あなた、今、何色って言ったの?」
「え?えっと…真っ黒…」



「――― 黒衣の未亡人ブラック・ウィドウ…」



「…え?」
「リュシーさん!」

 私が二人の突然の変貌に目を瞬かせていると、フランシーヌ様が躍りかかってきた。彼女は私の左肩を掴み、激しく揺さぶりながら、真っ青な顔で恐れおののくように尋ねた。



「ね、ねぇ、リュシーさん、教えて?…あなた、――― ?」
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