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第4章 北伐
69:西誅
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「西誅だと!?教会は、一体何を考えている!」
西誅発令の報を聞いたジェロームは、眉を逆立て、思わず呻き声を上げてしまう。「六柱」の当主達も同じ思いだった。「六柱」は、完全に自分の策に足を取られた。「六柱」は、教会がここまで積極的な行動を取るとは考えていなかった。
セント=ヌーヴェルを罠に嵌め、散々陥れた「六柱」だったが、彼らはセント=ヌーヴェルを滅亡させるつもりは全くなかった。カラディナは中原三国の中央に位置しており、エーデルシュタイン、セント=ヌーヴェル両国との流通で潤っている。カラディナは、大事な顧客であるセント=ヌーヴェルを失うつもりは、毛頭なかった。
「六柱」にとって南西部の金鉱山は喉から手が出るほどの魅力ある資源であり、北伐という絶好の機会を得て、セント=ヌーヴェルから奪い取るための策を講じた。そして、同時期に発生した北伐軍によるカラディナ北部侵入についても、相手の失点に乗じて上納金をせしめるために動いた。
「六柱」は、この二つの不祥事を餌に、セント=ヌーヴェルから搾り取れるだけ搾り取る事が目的であったが、同時にそこが落としどころだと考えていた。ギリギリ金で解決できるところを要求して、相手に譲歩させる。その上で、今後も心理的に有利な立場を維持して、セント=ヌーヴェルとの経済交流を継続していく。カラディナが、エーデルシュタイン及び教会にセント=ヌーヴェルの悪行を伝えたのは、両者の支持を取り付けてセント=ヌーヴェルへの圧力を高め、より一層の譲歩を強いるためであった。
それなのに、教会はカラディナへの支持では収まらず、直接介入してきたのだ。それも「西誅」、西への軍事行動という、最も直接的な手段を用いたのである。「六柱」にとって、これは望ましくない事態だった。セント=ヌーヴェルは、たかり、せしめる相手であり、滅ぼす相手ではない。国王のパトリシオ3世は、若輩で経験が浅く、しかも羽振りが良い。「六柱」にとっては御しやすい相手であり、しばらくこの国王から貰えるものを貰うつもりだった。
それが「西誅」によって、全て破綻してしまう。軍事行動によりセント=ヌーヴェルとの落としどころがなくなり、後には激烈な戦いと怨恨だけが残される。せしめるべき賠償金は、軍事費とその後の破壊活動によって目減りする。国土が荒廃して生産能力が低下し、治安も悪化する事で、その後の経済活動も停滞する。パトリシオ3世の退位まで繋がれば、鴨ネギまでいなくなってしまうのだ。
「六柱」は、最悪の事態を回避すべく、対応策を検討する。
「今回、我が国は甚大な損害を被り、セント=ヌーヴェルの横暴には赦し難いものがある。しかし、何と言っても彼らは同じ人族の国であり、ガリエルとの戦いに不可欠な、頼りになる隣人である。北部の侵略行為はルイス・サムエル・デ・メンドーサの独走であり、ヲーは幸いにして未然に防ぐ事ができた。セント=ヌーヴェルには、それなりの落とし前をつけてもらうが、その後は再び隣人として誠意ある関係を維持できる国であると、我が国は信じている。そのセント=ヌーヴェルに対して西誅の軍を興すのは、余計な人族の血を流し、ガリエルを利するのみであり、いくら我が国が一方的な被害者であったとしても、そこは看過する事ができない。教会及びエーデルシュタインの義憤には、我が国も感謝の念に堪えないが、ここは人族のために我が国の顔を立てて、鉾を収めていただきたい」
そういう論理で、「六柱」は教会及びエーデルシュタインを引き下がらせようとするが、事態はすでに「六柱」の手を離れていた。
「エーデルシュタインの『西誅軍』はすでに編成を終了し、我が国へと向かっております。半月後には我が国の国境に到着する予定です。エーデルシュタインからは、我が国に対し『西誅軍』に対する輜重面での協力を求めております」
「我が国に点在する教会からも、『西誅』が発布されました。北部、中部の住民に『西誅』に対する賛同者が続出しており、セント=ヌーヴェルとの国境沿いに駐留するダニエル・ラチエール殿の討伐軍に、連日合流しております」
「南部においても住民の参戦の意思が多く、ヲーに人々が集結しております。おそらくは、アスコーに駐留する南方軍に合流するものと見られます」
数々の報を聞いた「六柱」は天を仰ぎ、事態の収拾を諦める。「六柱」は、国民の愚かさを良く理解していた。「西誅」によって噴き上がった国民の復仇の念を消す事はできない。消そうとした時は、それは「六柱」への不信へと繋がり、「六柱」の支配体制に罅を入れる事になるからだ。教会と国民の気の済むまで、付き合うしかない。
こうして、セント=ヌーヴェルの失火に「六柱」が油を注いだ結果、火は「六柱」の制御を超えて中原全体へと広がり、教会という眠れる獅子の尻尾に飛び火して、数百年ぶりの大乱へと発展していった。
***
「セント=ヌーヴェルめ!エルフどもめ!栄えある『北伐』が、この様な裏切り者どもの手によって失敗に終わるとは!」
セント=ヌーヴェル・エルフ連合軍がカラディナへ侵攻したとの報を受けた教皇フランチェスコ・ランベルクは、怒りを抑える事ができず、玉座のひじ掛けを叩きつけ喚き散らす。使者が齎す不快な報告が続いている。
「セント=ヌーヴェル・エルフ連合軍は、脆弱なカラディナ軍を壊乱させると、ギヴンに侵攻。略奪を行った後、周辺地域で略奪行為を続けながら、カラディナを横断する様に西へ進軍しました」
「エルフどもは分派行動を取り、騎行にて周辺を襲撃しつつ先行、後詰でセント=ヌーヴェル軍が進軍しているとの情報も来ております」
「…よくわかった。ご苦労、下がれ」
不快な報告を齎した使者を、フランチェスコは目で射殺す様に睨みつけ、退室を促す。使者が去った後、フランチェスコは近侍に対し指示する。
「セント=ヌーヴェルどもの裏切りによって、此度の北伐の失敗が確定した。ロザリアの御使い殿を奉じる事ができ、史上最も期待できる北伐がこの様な裏切りで幕を閉じるとは、腸が煮えくり返る思いだ。おそらく、北伐の地で独り残されたエーデルシュタイン軍も、三国合流ができず、帰途の途上であろう。エーデルシュタイン王家と連絡を取れ。此度の背信行為、到底赦す事ができぬ」
10日後、ロザリアの第6月1日。ヴェルツブルグへと帰着した王太子リヒャルトは、セント=ヌーヴェル・エルフ連合軍のカラディナ侵攻の報を耳にし、一瞬にして頭が沸騰する。まさか魔物ではなく、味方であるはずの人族が元凶であるとは想像もしなかった。
国王ヘンリック2世より侵攻の報と教会の動向を耳にしたリヒャルトは、その帰りの足で教会へと赴き、教皇フランチェスコへの拝謁を求める。リヒャルトの来訪を耳にしたフランチェスコは、その後の予定を変更し、リヒャルトを迎え入れた。
「リヒャルト殿、まずは此度の北伐からの無事の帰還、お慶び申し上げます」
「ありがとうございます、猊下。これもひとえにロザリア様のご加護の賜物でございます」
簡単な挨拶を交わした二人は、早速本題へと入る。
「猊下、此度のセント=ヌーヴェル及びエルフの裏切り行為、教会としては如何いたす所存でございましょうか?」
「うむ。此度の彼の者達の所業は、北伐を失敗に導いただけでなく、人族の結束を踏みにじりロザリア様のご威光に泥を塗る、唾棄すべき背信行為だ。謝罪や賠償等で済む問題ではない。ガリエルへの鞍替えとも言える愚かな決断をしたセント=ヌーヴェルを、ロザリア様を奉ずる教会としては、赦すわけにはいかぬ。セント=ヌーヴェル王家の破門、及び彼の国とエルフへの誅伐を発布する」
教皇フランチェスコは、怒りに任せて「西誅」を決断する。それに対し、フランチェスコと同じ失意と怒りに満たされていたリヒャルトは、即座に応じた。
「猊下のご判断、誠にごもっともでございます。此度の北伐において総指揮を執った私といたしましても、セント=ヌーヴェルの悪行は、到底赦せるものではございませぬ。此度の北伐は残念ながら失敗となりましたが、御使い様の尽力により損害を最小限に抑える事ができ、未だ精強な北伐軍が健在であります。この軍を中核として誅伐の軍を編成すれば、日数も最小限に抑えられますでしょう。彼らもセント=ヌーヴェルの悪行に怒り心頭でありましょうし、士気の面でも有利に働きます」
「リヒャルト殿の言や良し。教皇として、あなたに『西誅』の御旗をお預けします。ガリエルの手先となった、セント=ヌーヴェル及びエルフに対し、正義の鉄槌を下しなさい」
「畏まりました。ロザリア様のご威光をセント=ヌーヴェル及びエルフに知らしめ、彼らを再び正しい世界へと導いて参ります」
フランチェスコとリヒャルトは、セント=ヌーヴェル及びエルフの行為を赦されざる悪行と断じ、弁解の余地のないものとして断罪した。二人は、セント=ヌーヴェル北伐軍とエルフが北伐の地で被った災難を知らない。また、ギヴンに到着した時の彼らの深刻な食糧問題と、略奪に至るまでの経緯を知らなかった。後者はカラディナが意図的に情報を隠してエーデルシュタイン及び教会へ伝えず、また前者はカラディナ側も知らなかった。二人は不足する情報の中で、セント=ヌーヴェルとエルフが意図的にカラディナへと侵攻したと判断し、最も重い罰を加えようとしていた。
こうして、エーデルシュタイン北伐軍を中核とし、王太子リヒャルトが率いる西誅軍が編成され、セント=ヌーヴェル王家の破門と、教会主導によるセント=ヌーヴェル及び大草原への侵攻が決定されたのであった。
西誅発令の報を聞いたジェロームは、眉を逆立て、思わず呻き声を上げてしまう。「六柱」の当主達も同じ思いだった。「六柱」は、完全に自分の策に足を取られた。「六柱」は、教会がここまで積極的な行動を取るとは考えていなかった。
セント=ヌーヴェルを罠に嵌め、散々陥れた「六柱」だったが、彼らはセント=ヌーヴェルを滅亡させるつもりは全くなかった。カラディナは中原三国の中央に位置しており、エーデルシュタイン、セント=ヌーヴェル両国との流通で潤っている。カラディナは、大事な顧客であるセント=ヌーヴェルを失うつもりは、毛頭なかった。
「六柱」にとって南西部の金鉱山は喉から手が出るほどの魅力ある資源であり、北伐という絶好の機会を得て、セント=ヌーヴェルから奪い取るための策を講じた。そして、同時期に発生した北伐軍によるカラディナ北部侵入についても、相手の失点に乗じて上納金をせしめるために動いた。
「六柱」は、この二つの不祥事を餌に、セント=ヌーヴェルから搾り取れるだけ搾り取る事が目的であったが、同時にそこが落としどころだと考えていた。ギリギリ金で解決できるところを要求して、相手に譲歩させる。その上で、今後も心理的に有利な立場を維持して、セント=ヌーヴェルとの経済交流を継続していく。カラディナが、エーデルシュタイン及び教会にセント=ヌーヴェルの悪行を伝えたのは、両者の支持を取り付けてセント=ヌーヴェルへの圧力を高め、より一層の譲歩を強いるためであった。
それなのに、教会はカラディナへの支持では収まらず、直接介入してきたのだ。それも「西誅」、西への軍事行動という、最も直接的な手段を用いたのである。「六柱」にとって、これは望ましくない事態だった。セント=ヌーヴェルは、たかり、せしめる相手であり、滅ぼす相手ではない。国王のパトリシオ3世は、若輩で経験が浅く、しかも羽振りが良い。「六柱」にとっては御しやすい相手であり、しばらくこの国王から貰えるものを貰うつもりだった。
それが「西誅」によって、全て破綻してしまう。軍事行動によりセント=ヌーヴェルとの落としどころがなくなり、後には激烈な戦いと怨恨だけが残される。せしめるべき賠償金は、軍事費とその後の破壊活動によって目減りする。国土が荒廃して生産能力が低下し、治安も悪化する事で、その後の経済活動も停滞する。パトリシオ3世の退位まで繋がれば、鴨ネギまでいなくなってしまうのだ。
「六柱」は、最悪の事態を回避すべく、対応策を検討する。
「今回、我が国は甚大な損害を被り、セント=ヌーヴェルの横暴には赦し難いものがある。しかし、何と言っても彼らは同じ人族の国であり、ガリエルとの戦いに不可欠な、頼りになる隣人である。北部の侵略行為はルイス・サムエル・デ・メンドーサの独走であり、ヲーは幸いにして未然に防ぐ事ができた。セント=ヌーヴェルには、それなりの落とし前をつけてもらうが、その後は再び隣人として誠意ある関係を維持できる国であると、我が国は信じている。そのセント=ヌーヴェルに対して西誅の軍を興すのは、余計な人族の血を流し、ガリエルを利するのみであり、いくら我が国が一方的な被害者であったとしても、そこは看過する事ができない。教会及びエーデルシュタインの義憤には、我が国も感謝の念に堪えないが、ここは人族のために我が国の顔を立てて、鉾を収めていただきたい」
そういう論理で、「六柱」は教会及びエーデルシュタインを引き下がらせようとするが、事態はすでに「六柱」の手を離れていた。
「エーデルシュタインの『西誅軍』はすでに編成を終了し、我が国へと向かっております。半月後には我が国の国境に到着する予定です。エーデルシュタインからは、我が国に対し『西誅軍』に対する輜重面での協力を求めております」
「我が国に点在する教会からも、『西誅』が発布されました。北部、中部の住民に『西誅』に対する賛同者が続出しており、セント=ヌーヴェルとの国境沿いに駐留するダニエル・ラチエール殿の討伐軍に、連日合流しております」
「南部においても住民の参戦の意思が多く、ヲーに人々が集結しております。おそらくは、アスコーに駐留する南方軍に合流するものと見られます」
数々の報を聞いた「六柱」は天を仰ぎ、事態の収拾を諦める。「六柱」は、国民の愚かさを良く理解していた。「西誅」によって噴き上がった国民の復仇の念を消す事はできない。消そうとした時は、それは「六柱」への不信へと繋がり、「六柱」の支配体制に罅を入れる事になるからだ。教会と国民の気の済むまで、付き合うしかない。
こうして、セント=ヌーヴェルの失火に「六柱」が油を注いだ結果、火は「六柱」の制御を超えて中原全体へと広がり、教会という眠れる獅子の尻尾に飛び火して、数百年ぶりの大乱へと発展していった。
***
「セント=ヌーヴェルめ!エルフどもめ!栄えある『北伐』が、この様な裏切り者どもの手によって失敗に終わるとは!」
セント=ヌーヴェル・エルフ連合軍がカラディナへ侵攻したとの報を受けた教皇フランチェスコ・ランベルクは、怒りを抑える事ができず、玉座のひじ掛けを叩きつけ喚き散らす。使者が齎す不快な報告が続いている。
「セント=ヌーヴェル・エルフ連合軍は、脆弱なカラディナ軍を壊乱させると、ギヴンに侵攻。略奪を行った後、周辺地域で略奪行為を続けながら、カラディナを横断する様に西へ進軍しました」
「エルフどもは分派行動を取り、騎行にて周辺を襲撃しつつ先行、後詰でセント=ヌーヴェル軍が進軍しているとの情報も来ております」
「…よくわかった。ご苦労、下がれ」
不快な報告を齎した使者を、フランチェスコは目で射殺す様に睨みつけ、退室を促す。使者が去った後、フランチェスコは近侍に対し指示する。
「セント=ヌーヴェルどもの裏切りによって、此度の北伐の失敗が確定した。ロザリアの御使い殿を奉じる事ができ、史上最も期待できる北伐がこの様な裏切りで幕を閉じるとは、腸が煮えくり返る思いだ。おそらく、北伐の地で独り残されたエーデルシュタイン軍も、三国合流ができず、帰途の途上であろう。エーデルシュタイン王家と連絡を取れ。此度の背信行為、到底赦す事ができぬ」
10日後、ロザリアの第6月1日。ヴェルツブルグへと帰着した王太子リヒャルトは、セント=ヌーヴェル・エルフ連合軍のカラディナ侵攻の報を耳にし、一瞬にして頭が沸騰する。まさか魔物ではなく、味方であるはずの人族が元凶であるとは想像もしなかった。
国王ヘンリック2世より侵攻の報と教会の動向を耳にしたリヒャルトは、その帰りの足で教会へと赴き、教皇フランチェスコへの拝謁を求める。リヒャルトの来訪を耳にしたフランチェスコは、その後の予定を変更し、リヒャルトを迎え入れた。
「リヒャルト殿、まずは此度の北伐からの無事の帰還、お慶び申し上げます」
「ありがとうございます、猊下。これもひとえにロザリア様のご加護の賜物でございます」
簡単な挨拶を交わした二人は、早速本題へと入る。
「猊下、此度のセント=ヌーヴェル及びエルフの裏切り行為、教会としては如何いたす所存でございましょうか?」
「うむ。此度の彼の者達の所業は、北伐を失敗に導いただけでなく、人族の結束を踏みにじりロザリア様のご威光に泥を塗る、唾棄すべき背信行為だ。謝罪や賠償等で済む問題ではない。ガリエルへの鞍替えとも言える愚かな決断をしたセント=ヌーヴェルを、ロザリア様を奉ずる教会としては、赦すわけにはいかぬ。セント=ヌーヴェル王家の破門、及び彼の国とエルフへの誅伐を発布する」
教皇フランチェスコは、怒りに任せて「西誅」を決断する。それに対し、フランチェスコと同じ失意と怒りに満たされていたリヒャルトは、即座に応じた。
「猊下のご判断、誠にごもっともでございます。此度の北伐において総指揮を執った私といたしましても、セント=ヌーヴェルの悪行は、到底赦せるものではございませぬ。此度の北伐は残念ながら失敗となりましたが、御使い様の尽力により損害を最小限に抑える事ができ、未だ精強な北伐軍が健在であります。この軍を中核として誅伐の軍を編成すれば、日数も最小限に抑えられますでしょう。彼らもセント=ヌーヴェルの悪行に怒り心頭でありましょうし、士気の面でも有利に働きます」
「リヒャルト殿の言や良し。教皇として、あなたに『西誅』の御旗をお預けします。ガリエルの手先となった、セント=ヌーヴェル及びエルフに対し、正義の鉄槌を下しなさい」
「畏まりました。ロザリア様のご威光をセント=ヌーヴェル及びエルフに知らしめ、彼らを再び正しい世界へと導いて参ります」
フランチェスコとリヒャルトは、セント=ヌーヴェル及びエルフの行為を赦されざる悪行と断じ、弁解の余地のないものとして断罪した。二人は、セント=ヌーヴェル北伐軍とエルフが北伐の地で被った災難を知らない。また、ギヴンに到着した時の彼らの深刻な食糧問題と、略奪に至るまでの経緯を知らなかった。後者はカラディナが意図的に情報を隠してエーデルシュタイン及び教会へ伝えず、また前者はカラディナ側も知らなかった。二人は不足する情報の中で、セント=ヌーヴェルとエルフが意図的にカラディナへと侵攻したと判断し、最も重い罰を加えようとしていた。
こうして、エーデルシュタイン北伐軍を中核とし、王太子リヒャルトが率いる西誅軍が編成され、セント=ヌーヴェル王家の破門と、教会主導によるセント=ヌーヴェル及び大草原への侵攻が決定されたのであった。
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