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しおりを挟む学校が始まっても、登校は禁止されてしまった。
学校からは特別措置とかで登校しなくてもテストで合格すれば卒業できるとお手紙が来た。
つまり、勉強はしないといけない。
「くっ……お友達と食堂でランチができないのにテストはあるなんてっ」
「ユナさんとマチルダさんがたまにお茶に来てくれますし。本当はよくないですが、私もランチはご一緒しますから」
シファヌ先輩が髪を整えながらいう。
メイドのお仕事の代わりに、ヴァーナードの奥さんのお仕事がある。
結局婚約破棄はしなかったから、これまでのメイドのお給料が支払われた。よくわからないが、しっかりした明細を渡された。ちゃんと一年働いても、それまでヴァーナードが援助してくれたお金には全然足らないことくらいはわかる。
「えっと、ヴァーナードは、今日も忙しいですか?」
綺麗に髪を整えてもらって、お洋服もメイド服じゃない。動きやすいけど、高そうなお洋服を着る。
ヴァーナードは気を使ってくれているけど、忙しいらしいから会ってない。
ヴァーナードのベッドで勝手に寝ているから、家に帰ってきてるのはわかっているけど、最近はお話もできていない。
「奥様が寂しがっているので、お時間を作ってくれるかと」
「そっか……」
お仕事が大変なのは仕方ない。
アリフォード兄も家の仕事で大変だった。我が儘を言うつもりはない。
「えっと、街に行きたいけど、ヴァーナードに伝えてくれますか?」
「お伝えしておきます。どちらか行きたい場所が?」
「えっと……内緒です」
そんなお願いをしたら、翌朝にはヴァーナードは仕事に行かずに起きるのを待ってくれていた。
「アリア」
ベッドの中で、ヴァーナードが名前を呼ぶ。
「なぁに?」
ベッドの中でそのまま抱き着く。ヴァーナードは髪を撫でて、額の近くで囁いた。
「また、私を置いてどこかへ行くつもりか」
なんのことだろうと考えて、街に出かけたいと伝えてもらっていたのを思い出す。
「……えっと、街に行きたいの。でも、えっと、今回は、一人で行っちゃダメ?」
「どうして」
「えっと……内緒」
ぎゅっと抱き寄せられて、少し苦しい。
「駄目だ」
「? なんで」
見上げると、赤い目が見降ろしてくる。
「私が一緒ならばいい……それ以外の外出はダメだ」
声は怒っているのに、近くで見る目は悲しそうだった。
「………だめ?」
「駄目だ」
しょんぼりだ。
「今日は一緒に朝食を取ろう」
「へへ。うん」
久しぶりにヴァーナードとおしゃべりができる。
「あ、その前に、ちゅうしていい?」
許可の代わりにキスしてくれた。前みたいにもっとぎゅっとして欲しいけど、いつも隣で眠るだけだ。それも好きだけど、前のも好きだった。
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