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しおりを挟む夕食の後でヴァーナードが倒れた状況を説明した。
「は? 死にかけた?」
ヴァーナードが理解できない顔をしている。
「医師の見立てだと魔力枯渇だろうって話だ。まだ魔法の使い方に慣れていないのに、最大出力を試そうなんて言い出して申し訳ないことをした」
「いや……力量を過信していた自分にも問題はある。魔力供給は……アリアがしてくれていたのか?」
「倒れてすぐに魔力を提供してくれていたから、今問題がない。普通は血の繋がりのあるものが行うか、専門的な医師がするんだけどね。アリア殿とヴァーナードは魔力的にかなり相性が良かったみたいだ」
魔力は平民でも僅かに持っている。魔法が使えるほどとなると平民でも魔法を使えるように教育がされる。
魔力暴走で自他ともに被害が出る危険を避けるためと、魔力が枯渇して死ぬことがないようにするためだ。
魔力枯渇に関してまだ解明しきれていなことも多い。今回のことに関しては純粋に使いすぎたことによるもののようだ。作り出した光の玉に魔力を注いだとき、過度に魔力を使い、停止できない状態に陥ったと考えられる。魔力枯渇は意図的に全て使うことで生じることもあるが、魔力暴走の一種として、使用を止められなくて起こることの方が多い。
大抵は意識を失う。そして呼吸と心臓も停止する。出血多量のような状態と表現されることもあり、輸血するように魔力を与えて対処する。
ここで魔力の相性が悪いものがすると、拒絶が起き、さらに与える魔力量が多くても少なくても死亡する。つまりヴァーナードは死亡率の高い状況だった。
素人であるアリア殿が、本能的にそれをできたことにも驚いたが、丸二日、眠ることもなく続けていた。
本来であれば専門の人間に変わるべきだったのだが、アリア殿に威嚇されてできなかった。
「本当に、アリア殿は規格外だね」
「ああ」
流石に疲れているのか、小さく頷くとアリア殿が寝ている寝室に目を向けている。
「体調が不安なら今からでも医師に診てもらえるけど? 魔力枯渇は、後遺症が残ることもあるから」
「いや……今日はいい。明日に診察を頼みたい。私とアリアを。それで問題なければ研究はやめて新婚旅行に戻る」
「まあ、研究所にいる方が無理をしそうだからね。明日は念の為療養して、明後日の朝から飛行船を飛ばせるようにするよ」
「ああ、手間をかけさせるな」
「研究材料にしたのはこっちだからね。また解析結果が出たら知らせるよ」
そんな話をして退席しようとしていると、寝室のドアが壊れそうな勢いで開いた。
寝巻き姿のアリア殿がすごい勢いでやってくるとヴァーナードに抱きつく。座っていたはずのヴァーナードは、行動を見越していたように立って待っていた。
「どうした」
問いかけに答えずに、アリア殿はしがみつくように抱きついている。
寝巻きなので体のラインが見えてしまっている。ヴァーナードがそっとアリア殿を隠すように体の向きを変えた。
「今日はお暇するよ」
「ああ、世話になった」
結婚したての夫が死にかけたのだから心配するなという方が難しいだろう。
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