結局の所、同じこと

りすい

文字の大きさ
9 / 10

9.

しおりを挟む
カイルの言葉に怒ったんじゃないの?それでも私を潰そうとするのかとか一生懸命に思考をそらそうとして、体の震えに気づいた。
人から向けられた殺気に呼吸が浅くなる。
嫌味を言う人は沢山いたが、可愛いものだった。
彼は今、私を殺そうとしている。
血走った目が怖いのに反らすことも出来ない。

急に視界からガーランドが消えた。

いつの間にかカイルが私を守るように前に移動していたらしい。

真っ赤な目が怖かったのに目の前の背中に、小さな背中が重なって見えた瞬間、身体から力が抜けた。

昔から変わらない、私を守る背中。

体が弱くて、気も小さくて、人に脅えていて、幼い頃の私はいつも周りの子供達にいじめられていた。
たまたまその現場に居合わせたカイルは私にお前は下僕だと宣言をしたかと思えば、振り返って虐めていた子達を返り討ちにしていった。
いじめっ子たちは不服だったのだろう。なんでお前がそいつを庇うんだと聞かれた彼は、なんの躊躇いもなくこう切り返したのだ。

「俺の下僕なんだから俺のものだ。俺のものを俺が守って何が悪い!」

私から見えるのは彼の背中だけ。
私を嘲笑っていた彼らの視線はひとつも見えない。
ほっとして小さな背中に抱きついて泣いた。

そこからその彼の背中に守られていたのは3年ほど。
急に現れなくなった彼に捨てられたと思った私は再発したいじめに一人で立ち向かった。
強くならねばと震える足で踏ん張った。
彼を頼りすぎたから嫌われたと思ったのだ。

彼が現れなくなった理由を知ったのはそこから5年。13歳になった年だった。
幼馴染の彼の家は没落してしまったから会えなくなったが、どうやら冒険者として活躍しているらしいと教わった。
3つ年上の彼はその時点で16歳。
あんなに助けて貰ったのに、私は何一つ返すこともなく何も知らずに呑気に過ごしていた事が悔しくて仕方がなかった。

そこから4年後、彼はSランクの冒険者として頑張っていると噂が届いた。

負けられないと思った。
今は一人でちゃんと立っているよと伝えたかった。
他の女性たちの前で胸を張って、しっかりした背中を見せているよと。
先陣を切って皆の希望に成ろうとしてるんだよって。
私がいるから大丈夫って誰かに思って貰えるように、自分の力でなんとかするんだって。
きっと彼はどんな状況でも真っ直ぐ前を見て立っているんだろうなって、勝手に想像して勝手に見習っていた。

ここまで、頑張って来たのに。
それなりに胸を張れるようになったとおもったのに。

なのに、今私は結局元の弱虫だ。
守られて、縮こまって、情けない。
一人で立てる、頑張っている虐められない私なんてものはただのメッキだ。
簡単に剥がれてしまった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

瀬月 ゆな
恋愛
ロゼリエッタは三歳年上の婚約者クロードに恋をしている。 だけど、その恋は決して叶わないものだと知っていた。 異性に対する愛情じゃないのだとしても、妹のような存在に対する感情なのだとしても、いつかは結婚して幸せな家庭を築ける。それだけを心の支えにしていたある日、クロードから一方的に婚約の解消を告げられてしまう。 失意に沈むロゼリエッタに、クロードが隣国で行方知れずになったと兄が告げる。 けれど賓客として訪れた隣国の王太子に付き従う仮面の騎士は過去も姿形も捨てて、別人として振る舞うクロードだった。 愛していると言えなかった騎士と、愛してくれているのか聞けなかった令嬢の、すれ違う初恋の物語。 他サイト様でも公開しております。 イラスト  灰梅 由雪(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)様

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

Short stories

美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……? 切なくて、泣ける短編です。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

どうしようもない幼馴染が可愛いお話

下菊みこと
恋愛
可愛いけどどうしようもない幼馴染に嫉妬され、誤解を解いたと思ったらなんだかんだでそのまま捕まるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...