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恋の焼け痕②
幻聴
しおりを挟む信じられないくらい、私は絶望した。
そう、これって絶望だ。
それが何を意味するのか?
千鶴が私に取って希望だったというの?
だからこんなに、最低な気分なの?
その考えにまで至った時にはもう、指先が痺れていた。
もうすぐ春なのに、この部屋は嘘みたいに寒い。
暖房でも点けようかと重い腰を上げれば、視界が暗いことに気付く。いつの間にかもう夜を迎えていて、南窓が紺色に染まっている。
その深い紺色が視界を埋める。
胸が軋んだ。
――カサ
足下から紙の擦り切れる音がした。コンビニのレジ袋だった。
すっかり握力を失くした手で、中身を取り出す。
アイツに渡し損ねたチョコレートだ。
紺色の箱に入った、甘い香り。
――ゴポッ
胃の辺りからそんな音が聞こえる。消化不良だ。
時計の針の行進が、無機質なリビングを占領する。
総大くんはいつの間にか消えていて、凪もまだ帰宅していないのか未だ不在である。
だけどこんなのいつものことだ。
だけど独りは久しぶりだ。
だけど、そんな時はすぐに……。
――ゴポッ
消化液の波打つ音がさざ波を思わせる。
その時私は再び考えた。
『千鶴なんて、いなかった』
なんて自然なことだろう。
そう思うと合点がいくのだ。
最後の1ピースをはめ込んだパズルのように、それはピッタリとはまった。
これでいいんだ。
これが自然で、これが事実だ。
幻聴のように頭の中で鳴り響くチャイム。
それは次第に低く重く音程を変えて、愛しい響きに変わっていった。
私の名前を呼び続ける千鶴の声が、誰もいないはずの部屋から聞こえてくる。幻聴だ。
頭がおかしくなったに違いない。
今度は匂いまで感じた。
それに加えて抱き締められた時の腕の感触や、その体温までが鮮明に再現される。
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