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恋の焼け痕②
いなかった、なんて嘘
しおりを挟むこの部屋には私だけだというのに、なんということだ。
よく事故で腕を失くした人が腕の感覚を感じることがあると耳にするが、その現象が起こっているのだろうか。
千鶴の声や匂いや感触が、すぐ傍に感じられる。
その時、封を切ったように突然熱い液体が逆流してきた。
私は噴火した。
「……う、っ……ぅわああぁっ!!」
こんな風に声を上げながら泣いたのは、きっと小学生の時以来だ。
品の欠片も無く、ただただ咽び上げ、天井に向かって叫んだ。
涙の出し方を忘れたのかと思ったけど、ただ我慢してただけだったのだ。
夜は更けていく。
私の泣き声と共に、空は紺色から常闇に色を変える。
体内の水分が干乾びるまで、疲れ果てて倒れるまで泣いたら、きっと安らかに眠れるだろう。
だから今は、涙を大量に流し続ける術しか見付からない。
そんなことしか思い付かない私は、まだまだ誰かの支えが必要だというのに。
その肝心な誰かさえも、今は傍にいない。
声が枯れ、瞼が腫れるまで泣いた私は、そのまま床に倒れ込んだ。
頭の芯がぼうっとした。
ひんやりと凍っていくのが分かった。
そして徐々に襲ってくる睡魔に屈服する前に、こんなことを思った。
まだ、チョコを渡していない。
もう1度会って渡したい。
私を拒んでもいい。
チョコを受け取ったらそれで用済みでもいい。
ただそれだけでいい。
千鶴に会いたい。
会いたい……。
『澪、お帰りなさい』
ほら、今もすぐ傍で聞こえる……。
だから、
『千鶴なんて、いなかった』
それは嘘だ。
千鶴は確かにいた。
確かに私の前に現れた。
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