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恋の焼け跡④
藤堂家の別邸
しおりを挟む「あ、千鶴お兄様は……その……本邸に住んでいますの!」
今の間は何だろう?
しかしその疑問は一瞬にして消えた。
きっとお金持ちは家をたくさん所有しているから、色々と事情があるのだろう。
単純にもそんな考えにまとまった。
「さ、到着致しました」
貝森さんのしわがれ声と共に、私達は車から降りた。
藤堂の別邸とやらは、随分と施設から近いなあと思った。
本邸も……千鶴が住む場所も、ここから近いのだろうか。
それなら私の家ともさほど距離は無い。
いつもそこから飛んで現れるのだと思うと、胸がくすぐったくなったり痛んだりして、せわしなくその辺をウロウロと往復している気分だった。
そんな心中で見上げた景色は、皮肉にも更に美しく見えた。
気が付けば長いレンガ塀の向こう側を、私は目を見開き眺めていた。
ひとつの公園ほどもある広い庭の先に、考えもしなかったほど大きな屋敷がある。
「澪お姉様、着いて来て下さい!」
お転婆にはしゃぐ弥生ちゃんに腕を引っ張られ、レンガ塀をくぐり抜けた。
後ろから貝森さんの弥生ちゃんをたしなめる声が聞こえたが、それは彼の穏やかな笑い声と共に段々と消えていった。
私の手を繋いで離さない弥生ちゃんは、器用にもくるくる回りながら走り続ける。
それに引っ張られながら辺りを見回すと、思わず小さな子供に戻った気持ちになり、胸が高鳴ってしまった。
左手には噴水が見えたし、その隣には色とりどりの花で飾られた白いブランコがあった。
きっと弥生ちゃんが普段ここで遊んでいるのかなと想像すると、何だかとても微笑ましかった。
そうして口許を緩めていると、通りの右手に視線が奪われた。
教会のような建物が目に入る。
視線はその八角形の尖塔に注がれたが、すぐに違和感を感じた。
十字架が逆さに見える。
気のせいかと思い、弥生ちゃんと走りその場を過ぎ去った。
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