囚人鎮魂歌

風龍

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裏切り

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あの時のことが今でも鮮明に脳裏に蘇る
最初は命の奪い合いをしていた奴らが
いつしか仲間とゆう存在になり、
そして仲間の為に散っていった

(待ってろよ  俺が必ず仇はとってやるから)

赤木 心はそう心に誓い
静けさを漂わす街並みへと消えていった




2017年、某刑務所に無期懲役の罪で服役した
関東最大とゆわれた暴力団
道元会直系 火神組 若頭補佐
赤木 心

24歳ながら頭の回転とキレの良さで
みるみる頭角を現し、たった3年足らずで
その地位までのぼりつめた男である

まさしく道元会の頭脳と言わんばかりの
男だった




しかし、今回のこの服役となった原因でもある
関西最大の暴力団 京成会との大抗争で
赤木は頭である火神をかばい、この刑務所へと
服役したのだった

しかし、刑務所に来て約半年が経った今
赤木はすでに外のおかしな異変に気付いていた






面倒見がよかった頭の火神から
なんの手紙もなく、組からの近況報告すら
一度もないのだ

まさか自分が捕まった後に
頭までもが捕まったのではないかとも
考えたが、それはまるで0に等しい推測に終わった





刑務所にいても
道元会の直系から直参
言ってみれば枝の枝までのつながりがある以上

赤木の耳にはそんなビッグな情報など
すぐに入ってくるにちがいない

なのにそんな様子も半年が経つ今も
一度もない

赤木はなんの状況もわからずまま
刑務所でひたすら時間が過ぎるのは
待っていた





    運動時間

赤木は他の受刑者が雑談や野球をしている中、
隅のベンチに一人腰かけていた

「おい. . .お前、赤木やな?」

鋭い目つきをして話かけてきた男に
赤木は見覚えがあった

「澤村...なんでお前がこんなとこにいんだよ」

赤木の道元会と対立し、そして大抗争につながった
京成会の若頭  澤村 竜吾

赤木とは真逆のタイプ
完全なる武闘派の澤村は京成会の狂犬と異名が
つくほどの実力者だった

「まぁそんな怖い顔すんなや お前にええ話や」

澤村は怪しげな笑みを浮かべながらそう言った
きっとこの男はこんな顔をして何人も
人を殺したのだろうと赤木は思った




澤村はゆっくりと赤木のとなりに腰をかけた

「道元会と京成会が合併するっちゅう話や」

「はぁ?意味がわかんねーよ」

「そりゃそうやわな お前は破門されてもうたからな」

赤木の表情が一気に曇った
自分が破門になる理由が全く見つからなかった





「てめぇふざけた事いってんじゃねーぞ」

赤木は澤村を睨みつけながら言った

「ふざけてそんなこと言うわけあらへんやろ」

「そもそもまず、てめぇがここにいる事もそうだけ
   どよ 対立してる奴の言ってることなんか信用でき
   できねーんだよ」

「せやったら信用せんでもええわ まぁ俺も破門され
   たんやけどな ほなおつかれさん」 

赤木がそう言ったと同時に運動時間終了の合図が
鳴り響いた





部屋に帰った赤木はさっきの澤村との
やりとりを思い出していた

澤村が破門?
考えれば考えるほど迷宮に陥りそうだった

一体何がどうなってる

対立はしていたが澤村はあの京成会の若頭
その中でもトップクラスの武闘派なため
筋は通っている男に違いない

そう考えると澤村の言ったことは
少なからず信憑性が生まれてくる





考えていると部屋の固い鉄の扉が
ガチャリと開いた

「赤木、ちょっと出てこい 所長がお呼びだ」

言われるがままに赤木は看守に従い、部屋を出て行く

何が所長だ この半年の間、赤木は一度も所長の顔、声すら見たことも聞いたこともなかったのだ
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