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第四章
59:たかが他人ときたか。そういう相手に僕は
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「翠雨さん。神様設定の人なんだから、空気読んでよ。俺、時雨さんとは会いづらいんだって」
「時雨はそうでもないと思う。お前のこと心配だ、心配だって銭湯で鬱陶しいぐらいだった。氷雨と合流しなきゃ、拉致って家に連れ帰ってただろうな。はは。ウケる。なあ、花火やりたくね?」
翠雨は勝手に喋り続ける。
話題も飛びまくり。
時雨もこんな話し方をたまにする。
弟みたいなもんと言っていたが、なるほど、こういう部分はそっくりだ。
「境内広いしさ。派手な音がするロケット花火だって大丈夫だ。時雨に買ってこいって言おうっと」
翠雨が携帯をいじり始める。
嫌だ、今は絶対に時雨には会いたくない。
携帯に集中している翠雨の側から逃げようと思ったら、がっちりと肩を抱かれてしまった。
「協力しないと呪う。それに、お前だって、このまま時雨と疎遠になるの嫌だなあって思ってんだろ?」
「……少しは」
「なら、いいじゃねえか。オレに感謝しろ、な?」
翠雨は氷雨がいる台所に向かって叫ぶ。
「氷雨!悪尚が、どぉーーーうしても今晩、花火やりたいって。いいだろ」
「言ってません、そんなこと」
と尚も叫ぶ。
すると、翠雨が携帯を確認しはじめた。
「お、時雨からさっそく返信。ノリノリだ。デカいビニールに入っている花火セットでいいかっだって。いいぞ。一万円ぐらいのを買ってこい、送信っと」
すっかり日が暮れたころ、時雨は大きなビニール袋を持って氷雨の神社にやってきた。
「ごめん。遅くなった」
という顔は、出来の悪い笑顔を貼り付けたみたいで元気がない。
翠雨が花火の入ったビニール袋に飛びつき、早速でかい筒を取り出す。火の着いていない状態で空のバケツを持った氷雨に向けて威嚇し始める。
尚はそのバケツに無言で手を差し出し受け取ると、社務所の影にある立水栓の水道まで足早に歩いた。
時雨の姿を見ると、心臓の鼓動が早くなって苦しいのだ。
「なーお。手伝おうか?」
立水栓の蛇口を捻ってバケツに水を入れていると、急に時雨が現れた。
何と言っていいのか解らず黙っていると、
「翠雨に誘われたから来ちゃったけど、遠慮したほうがよかったね」
と時雨がすまなそうな顔をした。
「何で、時雨さんがそんな顔するんだよ。俺がここからいなくなるよ」
言葉を振り絞るようにして伝え、バケツをそのままにそこから去ろうとすると、
「待って」
時雨が肩を掴んで放さない。
バケツに水が溜まり、溢れ始めた。
ドボドボと音が当たりに響く。
もう早速花火を始めたのか、翠雨の奇声とパーン、パンという花火の乾いた破裂音が聞こえてきた。
そして、ここにまで硝煙の臭いも漂い始める。
「尚が帰ったら、即解散になっちゃう。自動的に翠雨が大暴れ。それは面倒」
「それは、手にとるように想像がつくけど」
「でしょう」
尚が話し始めたので時雨はほっとしたようだ。
「目は平気?」
「そういう心配は要らないけど」
「じゃあ、お腹は?夕飯ごちそうになったんでしょ?氷雨の家だからって無理押して食べていない?」
「平気だから。たかが他人にそこまで気を使わないでくれ」
「たかが他人ときたか。そういう相手に僕は」
「時雨はそうでもないと思う。お前のこと心配だ、心配だって銭湯で鬱陶しいぐらいだった。氷雨と合流しなきゃ、拉致って家に連れ帰ってただろうな。はは。ウケる。なあ、花火やりたくね?」
翠雨は勝手に喋り続ける。
話題も飛びまくり。
時雨もこんな話し方をたまにする。
弟みたいなもんと言っていたが、なるほど、こういう部分はそっくりだ。
「境内広いしさ。派手な音がするロケット花火だって大丈夫だ。時雨に買ってこいって言おうっと」
翠雨が携帯をいじり始める。
嫌だ、今は絶対に時雨には会いたくない。
携帯に集中している翠雨の側から逃げようと思ったら、がっちりと肩を抱かれてしまった。
「協力しないと呪う。それに、お前だって、このまま時雨と疎遠になるの嫌だなあって思ってんだろ?」
「……少しは」
「なら、いいじゃねえか。オレに感謝しろ、な?」
翠雨は氷雨がいる台所に向かって叫ぶ。
「氷雨!悪尚が、どぉーーーうしても今晩、花火やりたいって。いいだろ」
「言ってません、そんなこと」
と尚も叫ぶ。
すると、翠雨が携帯を確認しはじめた。
「お、時雨からさっそく返信。ノリノリだ。デカいビニールに入っている花火セットでいいかっだって。いいぞ。一万円ぐらいのを買ってこい、送信っと」
すっかり日が暮れたころ、時雨は大きなビニール袋を持って氷雨の神社にやってきた。
「ごめん。遅くなった」
という顔は、出来の悪い笑顔を貼り付けたみたいで元気がない。
翠雨が花火の入ったビニール袋に飛びつき、早速でかい筒を取り出す。火の着いていない状態で空のバケツを持った氷雨に向けて威嚇し始める。
尚はそのバケツに無言で手を差し出し受け取ると、社務所の影にある立水栓の水道まで足早に歩いた。
時雨の姿を見ると、心臓の鼓動が早くなって苦しいのだ。
「なーお。手伝おうか?」
立水栓の蛇口を捻ってバケツに水を入れていると、急に時雨が現れた。
何と言っていいのか解らず黙っていると、
「翠雨に誘われたから来ちゃったけど、遠慮したほうがよかったね」
と時雨がすまなそうな顔をした。
「何で、時雨さんがそんな顔するんだよ。俺がここからいなくなるよ」
言葉を振り絞るようにして伝え、バケツをそのままにそこから去ろうとすると、
「待って」
時雨が肩を掴んで放さない。
バケツに水が溜まり、溢れ始めた。
ドボドボと音が当たりに響く。
もう早速花火を始めたのか、翠雨の奇声とパーン、パンという花火の乾いた破裂音が聞こえてきた。
そして、ここにまで硝煙の臭いも漂い始める。
「尚が帰ったら、即解散になっちゃう。自動的に翠雨が大暴れ。それは面倒」
「それは、手にとるように想像がつくけど」
「でしょう」
尚が話し始めたので時雨はほっとしたようだ。
「目は平気?」
「そういう心配は要らないけど」
「じゃあ、お腹は?夕飯ごちそうになったんでしょ?氷雨の家だからって無理押して食べていない?」
「平気だから。たかが他人にそこまで気を使わないでくれ」
「たかが他人ときたか。そういう相手に僕は」
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