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第二章
33.メインディッシュみたいに後の方に出てくるだろ?馬鹿みたいな評価額の絵は
しおりを挟む当然、連れのサライにも視線が注がれる。
「空港ではキャップを被せたくせにさ。ここではいいのかよ?テレビ局だってやってくるんだろ?」
「撮影は背後からされる。振り向かなければいい」
席に案内されると、パドル(競売札)が置いてあった。
「十三番か。ラッキーナンバーだね」
とロレンツォ。
申込順なのか、リチャード・クリスティン側の差金なのか解らないが、ビッグディールでこの番号を与えられて、ポジティブに考えれるのはこの男ぐらいだきっと。
「さあ、間もなく始まるぞ」
ロレンツォが席に深く座りながら、息を吐き出す。
ホラ吹き王のくせに、いっぱしに緊張しているらしい。
「メインディッシュみたいに後の方に出てくるだろ?馬鹿みたいな評価額の絵は」
「通常は五十から六十の品をオークションで捌いていくが、今夜は一枚の絵だけだ。他の物品があると、それ目的の客も入り込んできてごちゃつく。最初から一枚の絵だけ目的なら、トラブルを起こされてもわかりやすいからね」
君は振り向くなよ、と言ってロレンツォが辺りを見回す。
「めかしこんで席に座っていたら笑ってやろうと思ったが、いないみたいだ。残念」
脅迫、放火予告、劇薬送り付けの犯人に目星がついているのだろうかと、思いながらサライはオークションが始まるのを待った。
いきなり環境が変わりすぎて、失踪したロレンツォの息子のことなどどうでもよくなってしまっていた。
一段高くなった舞台には競売台が置かれてある。サライから見て右横には巨大なモニター。
「普通は、ポーターと呼ばれるジュニアスタッフたちが品物を舞台に持ってきて見せるのだが、今回は別室にある絵をモニターで映し出す」
「強盗対策?」
「まあ。そうだ」
更に視線を右横へ。
「あちらはボックス席だ。会場に足を運べない参加者に変わって代理人が競売に参加する。まあ、企業ばかりで個人はほとんどいないけどね」
「あんた、勝てるの?」
ロレンツォが軽く鼻を鳴らす。
「私を誰だと思っているのだね?」
やがてモニターがつき、ガラスケースに入った青い衣の男を映し出した。
そして、舞台袖から白手袋をした男が出てきた。
周りからは自然と拍手が湧き上がる。
画面で見たオークショナーマフィアだ。今日も髪を撫でつけ眼光が鋭い。
競売台に向かって立つと、置かれてあった小槌を手にとってコツコツと叩く。
ざわついていたホールが一瞬で静かになる。
男が口を開く。
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