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第四章
78.絵から人が出てくるとか、絵の人物になるとか僕からしたら、未だに信じられねえんだけど
しおりを挟むやけを起こすのは損だ。
でも、ここにいたくない。
分かっているのに、サライは感情を抑えきれない。
「もう一度聞く。ロレンツォと組んでいる理由はなんだ?」
怒りとともに大きく息を吐き出す。
「誰かの代理でロレンツォ公は未成年収容所に僕を迎えにやって来て、息子失踪の理由を知りたいから、フィレンツェの館で現場検証をしろって。その後、僕をロンドンのリチャード・クリスティンのオフォスに。コスプレさせられた僕はホールに連れていかれ、そこに青いドレスの女が乱入してきた。青いドレスの女は、以前、ロレンツォ公の息子も襲ったことがあるらしい」
「馬鹿息子の失踪を解決できたら、ピエトロの犯人探しに協力してやってもいいとでも言われたってことか」
「じいちゃんを殺した犯人を探し出して敵を打ちたいと思って何が悪いっ!?」
喉から出てきたのは、悲鳴みたいな大声で。
「情けないよ。犯人を見つけるどころか、殺人犯に仕立て上げられそうになって。未だに何もできていない」
「質の悪い情報提供者に簡単に騙されやがって。お前までユディトに襲われもっと、窮地に陥っているじゃねえか」
「でもっ」
こりゃ、どっちも引かずに堂々巡りになるなと覚悟していると、
「サライ。こっちこっち」
ヨハネが助け舟。扉から手だけ出して、手招きしてくる。
「ヨハネ様の城に招待してやる」
レオから一刻も早く離れたくて、サライはレオに「うるせえんだよ」と凄んで、ヨハネの部屋に向かう。
入るとヨハネがレオに聞こえるように大きな音で扉を閉めた。
部屋はベットが二つ。そのどちらもヨハネの私物らしきもので占拠されていた。
サライは片方にダイブした。
「ああああ~~~。腹立つ、何なんだ、あのおっさん!!」
「いつもああだぞ。不遜な感じ」
「現実とは思えないことばかりで、頭ん中がぐるぐるする」
「だろうな」
死神に姿を変える腹黒い大人。
どこからともなく手下を出した優美なオークション会社の社員たち。
バスケットに山盛りの男の頭部を詰め込んで、現れた青いドレスの女。
いずれも説明が付かないが、絵から人物が出てくるのが一番あり得ない。
「絵から人が出てくるとか、絵の人物になるとか僕からしたら、未だに信じられねえんだけど。だって、普通ありえねえだろ」
「え?ボクだってそのありえないの一人なんだけど」
サライはヨハネの手元を見た。ポータブルゲーム機だ。日本製のヤツ。
「それ、最新のFPSだろ?絵から出てきた奴が、オンラインで銃のゲームをプレーするかよ?」
「頭、硬てえなあ。サライは。絵の登場人物がこの世に出てきて、ゲームを楽しんで何が悪い?どうせ、ボクら使い捨ての駒だし、楽しんだもん勝ちだ」
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