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第五章
105.終わったわけか、メディチ家の受難は
しおりを挟む『洗脳?!』
アンジェロと声がかぶる。
「ドメニコ会には、サヴォナローラっていう怪僧がいたんだ」
『誰?』
さらにまた。
こうも続くと、ちょっと恥ずかしい。
「お前らって相当馬鹿?サヴォナローラを知らないのか?歴史をそこそこ賑わせた人物だぞ」
「だから、知らないって」
とサライは答え、アンジェロも首を横に振る。
ヨハネが、天を仰いだ。
「サヴォナローラは十五世紀末に神政政治を行ったドメニコ会修道士だ。フィレンツェにある修道院を本拠地にしていた。ちなみにロレンツォ公の館のすぐ側だぜ。その当時、フィレンツェは華美と贅沢にまみれていた。そのせいで、一般以下の民衆は貧しい生活を強いられてきた。サヴォナローラは格差に目を付け民衆を煽った。まあ、清貧生活ブームってのを作ったわけだ。フィレンツェの連中は、貴族ですらその流行りに飛びつき、サヴォナローラを熱狂的に指示。絵描きのボッティチェリもサヴォナローラの教えに傾倒し、贅沢批判を始めた。当然、やり玉にメディチ家が上がってくる。時代はちょうど豪華王ロレンツォがぎりぎり存命している頃だ」
「ふうん」
「へえ」
「反応薄っ!これだけ説明してやってるのに、お前ら全然、ピンと来てないのか?メディチ家は、その後、フィレンツェから追放されるんだよ。まあ、一時的なものだったけれども。その後もしばらく清貧ブームは続くが、ドメニコ会はちょっとばかしやりすぎた。贅沢する親を子供に密告させたり、権力を持ったドメニコ会修道士が街で好き放題したりして、花の都フィレンツェを殺伐した状態にしてしまった。そして、清貧ブームが去る。熱が冷めたフィレンツェの民衆はあっという間に掌返し。オラが街をこんなにしたのは誰だと、サヴォナローラを捕まえて火刑に処しましたとさ」
「終わったわけか、メディチ家の受難は」
「豪華王ロレンツォは清貧ブームの最中に死に、無能なピエロに代替わりしたのを受難としないならばな。まあ、何はともあれメディチ家の連中はフィレンツェに戻ってきた。だが、ボッティチェリには二度と絵の制作依頼をすることはなかった」
「刃向かったんだから当然の報いじゃねえか?」
「それもあるかもしれないが、一番の理由はボッティチェリの作風がガラッと変わってしまったからだ」
「そうか。それがそれがさっきの絵」
とアンジェロが納得。
ヨハネが、絵描きの絵を画像のみで表示させる。
「ボッティチェリはそれまでは肌を弾くような潤いがカンバスから溢れ出ていたのに、サヴォナローラの教えに傾倒してからは、無味乾燥な絵柄に変わってしまった。そして、それは終生続いた。当然、他からも絵の依頼は無くなり、赤貧にあえいで死んでいった」
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