14 / 53
初夜 ※
しおりを挟むキリトは危機に直面していた。
実に二十日ぶりの風呂に入らせて貰って、スッキリとして広い脱衣所から出てきたキリトを、メイド長と二人のメイドが待ち構えて居たのだった。
「キリト様のお美しい肌によく映えますわ。」
メイド達に寄ってたかって着せられたのは、とんでもない服だった。
ヒラヒラと薄い生地が申し訳程度に肌を隠し、あちらこちらに真珠と思われる飾りが幾つも付いている。肩から腕を通って腰にかけては細い銀色の鎖が幾筋も垂れて、そこから細かな細工の飾りが下がって蝋燭の光を弾いている。下衣には大胆な切れ目が入り、スラリとした白い足が覗いていた。
「な、な…」
「レイル様の婚約者ですもの。これくらいしませんと。」
メイドの一人が頬を赤らめて言う。
「あら、これでも控えめな物を選んで参りましたのよ。」
とメイド長が言う。
「こ、婚約者…」
キリトは衝撃の言葉を耳にして呆然と呟いた。確か求婚してきたレイルに「お付き合いからなら」と返答したはずである。
衝撃から立ち直れないまま立ち尽くしていると、メイド達がしずしずと退出するのと入れ替わりにレイルが部屋に入ってきた。
着飾ったキリトに目を止めると、緑の目を細めて
「綺麗だ。」
と言った。
「こ、婚約者ってどういうこと?」
詰め寄るキリトにレイルは、
「俺と”お付き合い”するというのは、そういうことさ。」
と笑ってとぼけてみせた。普段は整って冷たい感じすらする精悍な顔立ちが、笑うと途端に柔らかな印象に変わる。
レイルは揺れるキリトの服の飾りに誘われるように腕を伸ばすと、細い腰を抱き寄せた。
「僕が言ったのは”清い”お付き合いだよ!」
とキリトは声を荒げたがレイルは取り合わず、
「俺がどれだけ我慢したと思っている。」
と言ってキリトの艶やかな黒髪を手に取ると口付けた。
旅の途中の天幕の中で襲わなかっただけでも褒めて欲しかった。
余裕ぶったところで体は正直だ。手が自分の意思を離れて勝手にキリトの腰を更に強く抱き寄せ、もう一方の手は頬に触れる。潤んだ黒い目に不安げに見上げられると、大事にしたいのに暴走してしまいそうだった。
頬から白い下顎に手を滑らせると身を屈め、赤く色づく唇に口付けを落とした。角度を変えて何度も口付ける。
「ふ、は、ぁ」
キリトは息を上手く継げないのか苦しげに声を漏らした。
首から下に目をやると、薄く透けた服の生地を通しても分かる白い肌に、ほのかに色付いた控えめな胸の飾りが彩りを添えている。何かが焼き切れそうだった。
ちら、と寝台に目をやるレイルに、意図を悟ったのかキリトが弾んだ息の下から頬を僅かに染めてしどろもどろと言った。
「あ、あの、僕こういう事、初めてで…」
レイルはグッと息を飲むと、猛然とキリトの体を寝台に押し倒した。
キリルは目を閉じてびくりと肩をすくめたが、思ったような衝撃は来なかった。シャラ、と服の飾りが音を立てる。柔らかな寝台に体が沈んだ。
レイルの手が顔のすぐ脇に置かれている。見上げると、レイルは眉間に皺を寄せて苦しげな表情をしていた。
「どうしたら良い、焼き切れそうだ。」
何が、とキリトが問う前に口付けが降ってきた。熱い舌が差し込まれて歯列を割って口内を思う様掻き回す。息苦しさにレイルの胸を力の入らない手でトントンと叩くと、名残惜しげに唇が離れていく。唾液の糸が引くのが目の端に見える。恥ずかしさに頬に血が上っていくのが分かった。
「キリト、綺麗だ。」
レイルはそういうと、キリトの首に顔を埋めた。線の細い首筋に沿って舌を這わせる。
「あ、あっ」
思わず声が出た。下衣の大胆に開いた切れ目から覗くキリトの足を、レイルの剣だこのある手のひらが撫でた。
「あ、待って…」
レイルは構わず太ももを撫で上げると、服の切れ目からキリトの下着の紐を引いて取り去った。キリトの上気した肌と潤んだ目に容易く煽られて、レイルはキリトの中心を掴んだ。緩く扱くとすぐに反応が返ってくる。
「あああっ」
キリトの嬌声に益々煽られる。レイルは自分の下衣を寛げると張り詰めたものを取り出した。レイルの腰を抱き寄せ、二人の中心を一緒に握ると性急に擦り上げた。
「あ、待って、待って、おかしくなっちゃう」
キリトがレイルの手を掴んで動きを止めようとする。だが、涙の滲んだ目で言われても聞けるはずもなく、手を止めずに追い上げた。
「ひ、や、あ、あああああっ」
「く、う」
二人は同時に精を放った。
「こんな、こんなの、ひどい…」
と言うとキリトは気を失った。
スウスウと寝息を立てるキリトの頬に口付けて、レイルは独りごちた。
「メイド長は服の趣味が良い。」
37
あなたにおすすめの小説
青い薔薇と金色の牡丹【BL】
水月 花音
BL
ある日、異世界で目覚めた主人公。
通じる言葉、使える魔法…
なぜ自分はここに来たのか。訳がわからないまま、時間は過ぎていく。
最後に待ち受ける結末とは…
王子様系攻め×綺麗系受け
王家の影ですので
渡辺 佐倉
BL
王家の影として動く伯爵令息であるカイルは淡々と役目をこなす。
王太子のルイスは妃探しをしているが難癖をつけて上手くいっていない。
その難癖を探すのが最近のカイルの仕事になってしまっている。
カイルが影であることは王家の一部のものしか知らない。
知っていたとしても影の薄いカイルを探すことはできない筈だ。
その筈だったのだけれど――
白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
発情期アルファ王子にクッキーをどうぞ
小池 月
BL
リーベント国第五王子ロイは庶民出身の第二公妾の母を持つ貧乏王子。リーベント国は農業が盛んで豊かな国。平和だが貴族や王族の権力争いが絶え間ない。ロイと母は、貴族出身の正妃と第一公妾、その王子王女たちに蔑まれて過ごしていた。ロイの唯一の支えは、いつか国を脱出し母と小さな洋菓子店を開き暮らすこと。ある日、ロイが隣国アドレアに友好のため人質となることが決定される。国王の決定には逆らえず母をリーベントに残しロイは出国する。
一方アドレア国では、第一王子ディモンがロイを自分のオメガだと認識したためにロイをアドレアに呼んでいた。現在強国のアドレアは、百年前は貧困の国だった。当時の国王が神に救いを求め、卓越した能力を持つアルファを神から授かることで急激な発展を実現した国。神の力を持つアルファには獣の発情期と呼ばれる一定の期間がある。その間は、自分の番のオメガと過ごすことで癒される。アルファやオメガの存在は国外には出せない秘密事項。ロイに全てを打ち明けられないまま、ディモン(ディー)とロイは運命に惹かれるように恋仲になっていく。
ロイがアドレアに来て二年が過ぎた。ロイは得意の洋菓子でお金稼ぎをしながら、ディーに守られ幸せに過ごしていた。そんな中、リーベントからロイの母危篤の知らせが入る。ロイは急いで帰国するが、すでに母は毒殺されていた。自身も命を狙われアドレアに逃避しようとするが、弓矢で射られ殺されかける。生死をさ迷い記憶喪失になるロイ。アドレア国辺境地集落に拾われ、シロと呼ばれ何とか生きて行く。
ディーの必死の捜索により辺境地でロイが見つかる。生きていたことを喜び、アドレア主城でのロイとの生活を再開するディー。徐々に記憶を取り戻すロイだが、殺されかけた記憶が戻りパニックになる。ディーは慈しむような愛でロイを包み込み、ロイを癒す。
ロイが落ち着いた頃、リーベント国への友好訪問をする二人。ディーとリーベント国王は、王室腐敗を明るみにして大掛かりな粛清をする。これでロイと幸せになれる道が開けたと安堵する中、信頼していた親代わりの執事にロイが刺される。実はロイの母を殺害したのもこの執事だった。裏切りに心を閉ざすロイ。この状態ではアルファの発情期に耐えられないと思い、発情期を一人で過ごす決意をするディー。アルファの発情期にオメガが居なければアルファは狂う。ディーは死を覚悟するが、運命を共にしようと言うロイの言葉を受け入れ、獣の発情期を共にする。狂ったような性交のなかにロイの愛を感じ癒されるディー。これからの人生をロイと過ごせる幸福を噛みしめ、ロイを守るために尽くすことを心に誓う。
【完結】生まれ変わってもΩの俺は二度目の人生でキセキを起こす!
天白
BL
【あらすじ】バース性診断にてΩと判明した青年・田井中圭介は将来を悲観し、生きる意味を見出せずにいた。そんな圭介を憐れに思った曾祖父の陸郎が彼と家族を引き離すように命じ、圭介は父から紹介されたαの男・里中宗佑の下へ預けられることになる。
顔も見知らぬ男の下へ行くことをしぶしぶ承諾した圭介だったが、陸郎の危篤に何かが目覚めてしまったのか、前世の記憶が甦った。
「田井中圭介。十八歳。Ω。それから現当主である田井中陸郎の母であり、今日まで田井中家で語り継がれてきただろう、不幸で不憫でかわいそ~なΩこと田井中恵の生まれ変わりだ。改めてよろしくな!」
これは肝っ玉母ちゃん(♂)だった前世の記憶を持ちつつも獣人が苦手なΩの青年と、紳士で一途なスパダリ獣人αが小さなキセキを起こすまでのお話。
※オメガバースもの。拙作「生まれ変わりΩはキセキを起こす」のリメイク作品です。登場人物の設定、文体、内容等が大きく変わっております。アルファポリス版としてお楽しみください。
追放系治癒術師は今日も無能
リラックス@ピロー
BL
「エディ、お前もうパーティ抜けろ」ある夜、幼馴染でパーティを組むイーノックは唐突にそう言った。剣術に優れているわけでも、秀でた魔術が使える訳でもない。治癒術師を名乗っているが、それも実力が伴わない半人前。完全にパーティのお荷物。そんな俺では共に旅が出来るわけも無く。
追放されたその日から、俺の生活は一変した。しかし一人街に降りた先で出会ったのは、かつて俺とイーノックがパーティを組むきっかけとなった冒険者、グレアムだった。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる