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第十四話 バルハルトにも感情ってあるんだね
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思わず彼の名前を呼び振り返る。
「声が大きい」
「すみません……」
彼にやや迷惑そうな顔をされ、クルトはしょんぼりする。
こつりこつり、と軍靴の音を響かせながらバルハルトがクルトの横に立つ。
彼は数多くの高価な品物を見ても表情一つ変えない。
(さすがお金持ちは違うな……)
思わず感嘆の眼差しで彼を見ていると、目があった。
「まだ何も決めていないです」
「そうか」
クルトの答えに少し思案するような素振りを見せ、
視線を品物の上に彷徨わせた。
彼のがっしりとした指がそっと壊れものに触れるように、一つのブローチをつまむ。
「これなんかはどうだ?」
それは鳩がクローバーを咥えている、金のブローチだった。
鳩の瞳とクローバーの部分にはエメラルドが嵌め込まれており、光にかざせばきらきらと輝く。
「さすがバルハルト様、お目が高いですね。それに使用されているエメラルドは、国産の非常に貴重なものです!おまけにそちらのお客様は髪色が麦色なので、金色がお似合いでしょう」
上機嫌に揉み手をしながら、ブルーノが説明する。
バルハルトはちらりとクルトに視線を遣ると、何故かしげしげと眺めてきた。
「…………?」
きょとんとした顔で彼を見つめ返すと、彼はつぶやいた。
「確かに金色はお前に似合うだろう。それにこの鳩の瞳の色もお前と同じエメラルド色だから、ちょうどいいな」
そう言うとバルハルトはクルトの胸元にブローチを当ててみた。
「お前はこれをどう思う?」
彼にそう訊かれ、クルトは素直な感想を口にした。
「見たことがないほど綺麗ですね」
クルトは儀式の時以外は装飾品をつけたことがないため、思わずじっと魅入ってしまった。
見れば見るほど美しく、そしてシンプルなデザインながらも丁寧に作られていることが分かる。
(こんなものがこの世に存在するんだ)
バルハルトからブローチを受け取り、手のひらでそっと包む。
微かにひんやりとしていて、それでいてそれなりに重さを感じる。
「これを買うか?」
「はい、お願いします」
こうしてあっという間にそのブローチはクルトの物になった。
ブルーノが帰っていった後、少ししてから服飾商もやってきた。
バルハルトに好きな色やらデザインを訊かれ、それを元に職人が服を作るらしかった。
流行りのものも、自分の好きなものもよく知らない状態のクルトだったが、自分の要望をもとにして服ができるというのは、とても嬉しかった。
「数日すれば服が届けられる。それまでは我慢しておけ」
「さすがに待ってられますよ!子どもじゃないんですから!!」
クルトが少し頬を膨らますと、バルハルトの口元に一瞬だけ笑みのようなものが浮かんだ。
(えっ?!今笑った?)
驚いて彼の顔を見つめれば、それはすぐに消えてしまったが、クルトは内心にんまりした。
(なんだちゃんと笑えるんじゃん。表情筋が死んでいるのかと思ったよ)
心の中でそうツッコミながら、クルトは良いものを見たとほくほくしていた。
「声が大きい」
「すみません……」
彼にやや迷惑そうな顔をされ、クルトはしょんぼりする。
こつりこつり、と軍靴の音を響かせながらバルハルトがクルトの横に立つ。
彼は数多くの高価な品物を見ても表情一つ変えない。
(さすがお金持ちは違うな……)
思わず感嘆の眼差しで彼を見ていると、目があった。
「まだ何も決めていないです」
「そうか」
クルトの答えに少し思案するような素振りを見せ、
視線を品物の上に彷徨わせた。
彼のがっしりとした指がそっと壊れものに触れるように、一つのブローチをつまむ。
「これなんかはどうだ?」
それは鳩がクローバーを咥えている、金のブローチだった。
鳩の瞳とクローバーの部分にはエメラルドが嵌め込まれており、光にかざせばきらきらと輝く。
「さすがバルハルト様、お目が高いですね。それに使用されているエメラルドは、国産の非常に貴重なものです!おまけにそちらのお客様は髪色が麦色なので、金色がお似合いでしょう」
上機嫌に揉み手をしながら、ブルーノが説明する。
バルハルトはちらりとクルトに視線を遣ると、何故かしげしげと眺めてきた。
「…………?」
きょとんとした顔で彼を見つめ返すと、彼はつぶやいた。
「確かに金色はお前に似合うだろう。それにこの鳩の瞳の色もお前と同じエメラルド色だから、ちょうどいいな」
そう言うとバルハルトはクルトの胸元にブローチを当ててみた。
「お前はこれをどう思う?」
彼にそう訊かれ、クルトは素直な感想を口にした。
「見たことがないほど綺麗ですね」
クルトは儀式の時以外は装飾品をつけたことがないため、思わずじっと魅入ってしまった。
見れば見るほど美しく、そしてシンプルなデザインながらも丁寧に作られていることが分かる。
(こんなものがこの世に存在するんだ)
バルハルトからブローチを受け取り、手のひらでそっと包む。
微かにひんやりとしていて、それでいてそれなりに重さを感じる。
「これを買うか?」
「はい、お願いします」
こうしてあっという間にそのブローチはクルトの物になった。
ブルーノが帰っていった後、少ししてから服飾商もやってきた。
バルハルトに好きな色やらデザインを訊かれ、それを元に職人が服を作るらしかった。
流行りのものも、自分の好きなものもよく知らない状態のクルトだったが、自分の要望をもとにして服ができるというのは、とても嬉しかった。
「数日すれば服が届けられる。それまでは我慢しておけ」
「さすがに待ってられますよ!子どもじゃないんですから!!」
クルトが少し頬を膨らますと、バルハルトの口元に一瞬だけ笑みのようなものが浮かんだ。
(えっ?!今笑った?)
驚いて彼の顔を見つめれば、それはすぐに消えてしまったが、クルトは内心にんまりした。
(なんだちゃんと笑えるんじゃん。表情筋が死んでいるのかと思ったよ)
心の中でそうツッコミながら、クルトは良いものを見たとほくほくしていた。
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