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第四十話 まさかの……
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「それではクルトを夕方に神殿から追い出したのは、私に彼を拾わせるためだったのでしょうか?」
「そうです」
あっさりと答えているが、ますます謎は深まるばかりだ。そもそも何故神官長はバルハルトがクルトを拾うだろう、と思ったのか。
「儀式の時にずっとクルトのことを目で追いかけていたでしょう」
バルハルトの考えを読み取ったかのように、神官長はにやにやしながら答える。確かに以前儀式があった時にクルトのことを見てはいたが。
「そんなに彼のことを見てましたか?」
いまいち自覚のないバルハルトは顔を赤ながら、もごもごと尋ねる。その途端神官長は噴き出し、バルハルトの肩を叩いた。
「まさか自覚してなかったのですか?!瞬きする時間すら惜しいというような様子で、彼を眺めていたのに」
あれは建国記念日を祝う儀式の時のクルトが、あまりにも可愛いすぎたからだ。あんなにも明るく笑う人をバルハルトはこれまで見たことなかった為、目が釘付けになった。
「それにしてもよく私を選びましたね。良くない噂しかなかったのではありませんか?」
「それは大した問題ではありません。あなたが誰かに暴力を振るったり、罵倒しているのを実際に見た人は、私が調べた中では一人もいなかった。だからどうせ噂が独り歩きしているだけだろう、と判断しました」
へぇ、と相槌を打つことしかできない。一歩間違えばクルトがより悲惨な目に遭っていたかもしれないが、神官長からしたら藁にもすがるような思いだったのだろう。
「……クルトのことをお願いします。あの子は勉強も頑張って、番に選ばれてからは愛されようと、たくさん努力していました。それでもあのような仕打ちを受けて……。だからあの子には幸せに暮らしていて欲しいんです。この神殿ではマクシミリアンの力があまりにも強すぎて、神官長である私ですら彼に抗議することはほぼできません。なのでクルトを守るのには、まずこの神殿の外に出すことが必要だったのです」
「……分かりました。クルトのことは任せてください。絶対に彼を傷つけるような真似はいたしません」
バルハルトの言葉に神官長は安心したように微笑んだ。
バルハルトは元々本人が望むのなら一生クルトの面倒を見るつもりでいたのだ。今回の件で、クルトも神殿との繋がりがすっぱり切れ、こちらで気兼ねなく暮らしていくことができる。
「………あとクルトにはもし子どもに会いたかった場合、好きに来ていい、とお伝えください。クルトとあの子はほとんど会えなかったから。亡くなってしまってはいても、彼にとって可愛い我が子でしょう」
神官長はやや言いにくそうにそう伝えてきた。今クルトと暮らしていて、尚且つ彼に好意を寄せている自分にそれは伝えてにくいことだろう。
「彼に伝えておきます」
バルハルトが頷きながら言うと、神官長は申し訳なさそうな顔をした。
「今回神殿内での問題にあなたを巻き込んでしまい、本当に申し訳ない。何か困ったことがあった時、ぜひ頼ってください。必ずこの恩はお返しします」
神官長と話した後、バルハルトは愛馬に跨ってすぐさま館へと戻った。館に到着すると大急ぎでクルトの部屋に向かう。
「あれ?」
しかし彼の部屋に姿は見えず、とりあえず自分の部屋に行ってみると、ベッドの上で毛布に包まっていた。
「…….おかえりなさい」
「ただいま」
バルハルトはクルトに駆け寄り、抱きしめた。
「今日はたくさん迷惑かけちゃった……、本当にごめんなさい」
ぎゅっと抱きついてきながらそう言うクルトに、バルハルトは激しく首を振った。
「迷惑ではない。本当に…….」
今日クルトが攫われたという話を職場で知らされた時、頭が真っ白になって一瞬何も考えられなかった。
彼にもし万が一のことがあって、二度と会えなくなってしまったらどう生きていけばいいのか、と真剣に考えるほどだった。
「……..バルハルト殿はどうやって私を見つけたのですか?」
「マクシミリアンを殴った」
「マクシミリアン様を殴った……」
彼の性格上少し殴られただけでは話さないだろう。クルトはちらりとバルハルトを見た。涼しい顔をしているが、一体どれくらいマクシミリアンをボコボコにしたのだろう。
「もう今日は遅い。ゆっくりおやすみ」
いつもなら抱きしめるだけで済むのに、今日はなぜか額にキスをしてきた。驚いてバルハルトの方をみると、彼はそっぽを向いて部屋から出て行こうとする。
「待って!」
慌てて彼の袖を引っ張って彼を引き寄せる。
「………もし嫌じゃなかったら、唇にして欲しい」
自分でも何をいっているのか、と思いつつ彼の方をじっと見つめると、バルハルトは顔を真っ赤にしていた。
「じゃあ……」
バルハルトの顔が近づいてきて、お互いの唇が触れ合う。
彼の唇の温かさと柔らかさに驚いてるうちに、唇が離れていく。
「バルハルト殿の唇って柔らかいんだね……」
思わず呟くと、バルハルトはじりじりと後ろへ退がっていって、そのまま部屋から飛び出していった。彼は首まで真っ赤にしていた。
「どこいくの?!」
「シャワー浴びてくる!」
「そうです」
あっさりと答えているが、ますます謎は深まるばかりだ。そもそも何故神官長はバルハルトがクルトを拾うだろう、と思ったのか。
「儀式の時にずっとクルトのことを目で追いかけていたでしょう」
バルハルトの考えを読み取ったかのように、神官長はにやにやしながら答える。確かに以前儀式があった時にクルトのことを見てはいたが。
「そんなに彼のことを見てましたか?」
いまいち自覚のないバルハルトは顔を赤ながら、もごもごと尋ねる。その途端神官長は噴き出し、バルハルトの肩を叩いた。
「まさか自覚してなかったのですか?!瞬きする時間すら惜しいというような様子で、彼を眺めていたのに」
あれは建国記念日を祝う儀式の時のクルトが、あまりにも可愛いすぎたからだ。あんなにも明るく笑う人をバルハルトはこれまで見たことなかった為、目が釘付けになった。
「それにしてもよく私を選びましたね。良くない噂しかなかったのではありませんか?」
「それは大した問題ではありません。あなたが誰かに暴力を振るったり、罵倒しているのを実際に見た人は、私が調べた中では一人もいなかった。だからどうせ噂が独り歩きしているだけだろう、と判断しました」
へぇ、と相槌を打つことしかできない。一歩間違えばクルトがより悲惨な目に遭っていたかもしれないが、神官長からしたら藁にもすがるような思いだったのだろう。
「……クルトのことをお願いします。あの子は勉強も頑張って、番に選ばれてからは愛されようと、たくさん努力していました。それでもあのような仕打ちを受けて……。だからあの子には幸せに暮らしていて欲しいんです。この神殿ではマクシミリアンの力があまりにも強すぎて、神官長である私ですら彼に抗議することはほぼできません。なのでクルトを守るのには、まずこの神殿の外に出すことが必要だったのです」
「……分かりました。クルトのことは任せてください。絶対に彼を傷つけるような真似はいたしません」
バルハルトの言葉に神官長は安心したように微笑んだ。
バルハルトは元々本人が望むのなら一生クルトの面倒を見るつもりでいたのだ。今回の件で、クルトも神殿との繋がりがすっぱり切れ、こちらで気兼ねなく暮らしていくことができる。
「………あとクルトにはもし子どもに会いたかった場合、好きに来ていい、とお伝えください。クルトとあの子はほとんど会えなかったから。亡くなってしまってはいても、彼にとって可愛い我が子でしょう」
神官長はやや言いにくそうにそう伝えてきた。今クルトと暮らしていて、尚且つ彼に好意を寄せている自分にそれは伝えてにくいことだろう。
「彼に伝えておきます」
バルハルトが頷きながら言うと、神官長は申し訳なさそうな顔をした。
「今回神殿内での問題にあなたを巻き込んでしまい、本当に申し訳ない。何か困ったことがあった時、ぜひ頼ってください。必ずこの恩はお返しします」
神官長と話した後、バルハルトは愛馬に跨ってすぐさま館へと戻った。館に到着すると大急ぎでクルトの部屋に向かう。
「あれ?」
しかし彼の部屋に姿は見えず、とりあえず自分の部屋に行ってみると、ベッドの上で毛布に包まっていた。
「…….おかえりなさい」
「ただいま」
バルハルトはクルトに駆け寄り、抱きしめた。
「今日はたくさん迷惑かけちゃった……、本当にごめんなさい」
ぎゅっと抱きついてきながらそう言うクルトに、バルハルトは激しく首を振った。
「迷惑ではない。本当に…….」
今日クルトが攫われたという話を職場で知らされた時、頭が真っ白になって一瞬何も考えられなかった。
彼にもし万が一のことがあって、二度と会えなくなってしまったらどう生きていけばいいのか、と真剣に考えるほどだった。
「……..バルハルト殿はどうやって私を見つけたのですか?」
「マクシミリアンを殴った」
「マクシミリアン様を殴った……」
彼の性格上少し殴られただけでは話さないだろう。クルトはちらりとバルハルトを見た。涼しい顔をしているが、一体どれくらいマクシミリアンをボコボコにしたのだろう。
「もう今日は遅い。ゆっくりおやすみ」
いつもなら抱きしめるだけで済むのに、今日はなぜか額にキスをしてきた。驚いてバルハルトの方をみると、彼はそっぽを向いて部屋から出て行こうとする。
「待って!」
慌てて彼の袖を引っ張って彼を引き寄せる。
「………もし嫌じゃなかったら、唇にして欲しい」
自分でも何をいっているのか、と思いつつ彼の方をじっと見つめると、バルハルトは顔を真っ赤にしていた。
「じゃあ……」
バルハルトの顔が近づいてきて、お互いの唇が触れ合う。
彼の唇の温かさと柔らかさに驚いてるうちに、唇が離れていく。
「バルハルト殿の唇って柔らかいんだね……」
思わず呟くと、バルハルトはじりじりと後ろへ退がっていって、そのまま部屋から飛び出していった。彼は首まで真っ赤にしていた。
「どこいくの?!」
「シャワー浴びてくる!」
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