ドラゴン使いと元神官の奇妙な暮らし〜傷モノ神官はコワモテ軍人に溺愛される〜

江島梓

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第四十三話 それもう少し早く教えてほしかったよ

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「.......え?」

驚いたクルトが慌てて手を引っ込めると、それはドラゴンの全身に広がっていった。そのドラゴンはクルトが見慣れた人へと変わっていく。


「バルハルト!!」

「.......クルト」

バルハルトは力なくつぶやくようにして、クルトの名前を呼んだ。全身血まみれで正直助かるかどうか怪しいほどだった。

「バルハルト、しっかりして!ドラゴンの姿と人間の姿、どっちの方が体が楽?」

とにかく治療の方針を立てるため、バルハルトの体力が少しでも持ちそうな方を選ばせる。


「.......ドラゴン」

「分かった。ハンス、まず消毒するよ!」


「分かった!!」


二人は阿吽の呼吸でドラゴンの姿に戻ったバルハルトを治療していく。脇腹の傷に薬を一時間ごとに塗り、乾燥しないように気を付け、薬を放置している間に他の傷口を縫っていく。

(.......状態が悪すぎる)

ウジ虫が湧いている傷口すらあった。一体どういう状況で応急手当をしたのか、と思うようなものだ。

「絶対助けるから!」

クルトは本当は泣きたい気持ちだった。でも泣いてしまえば正常な判断ができなくなる、と思い必死に耐えていた。








「もう後は本人がどこまで頑張れるか、だね」


一通り治療したクルトはハンスにそう言った。バルハルトは庭で丸まって微かに寝息を立てている。

「ハンス、もう帰っても大丈夫だよ。とりあえず今日はゆっくり休んで疲れをとってね」

「本当に大丈夫か?なんかあれば連絡を」


「うん」

ハンスが帰った後、クルトはバルハルトに寄り添うようにして、ちょっとした変化も見逃さまい、と彼の様子を観察していた。


(.......何が不敗だ、何が勝利だ)


こんなにも傷ついていることを町の人は知らずに、先ほどから浮かれ騒いでいる。バルハルトをそっと撫でクルトは呟いた。


「お願い、私を置いて行かないで」







バルハルトの傍を離れようとしないクルトを使用人たちは心配し、簡単に食べられるサンドイッチを用意してくれたり、毛布を持ってきてくれたりした。

そうして数日過ごし、ようやくバルハルトの状態は良くなっていた。まだ自由には動けないが、それでも以前より意識ははっきりとしていて、クルトの話していることにも反応を示してくれた。


さらに数日経つと人間の姿に戻れるほどまで回復していた。一時は本当にだめだと思っていたクルトはほっとし、思わず泣いてしまった。

「心配かけたな」


庭から自室のベッドに移動したバルハルトはそういいながら、泣くクルトの手を握った。


「………それにしてもなんでドラゴンであることを教えてくれなかったの?」


「正確に言うと、私はドラゴンではないんだ。ただドラゴンの血を引いているだけらしい。あと教えなかったのは、お前が怖がって離れていってしまうかと思ったからだ」


それくらいのことでは離れないのに、とクルトは笑った。どんな彼だって大好きだ。

「でもドラゴンの時は瞳が金色だったよね?普段は赤みがかっているけど」


クルトが不思議そうにバルバルトの瞳を覗き込むと、彼は一瞬目を閉じ、再び目を開けた時には彼の瞳は金色に変わっていた。


「うおおっ!すごい、変えられるんだ」


かっこいいっと目を輝かせるクルトに、バルハルトは少し得意げな顔をした。


そこまで話していて、クルトはふとあることに気がついた。


「この館に初めてきた時にさ、ドラゴンを治療したじゃん?あれもしかしてバルハルトの親戚だったりする?」


「弟だ」


「……………」


バルハルトに対する文句を散々ぶつくさ呟いていたから、流石に申し訳なく気まずい。

無言になったクルトに対して、バルハルトはにやにや笑っていた。


「なんだ、私の悪口でも吹き込んでいたのか?」


「……もし会うことがあったらどんな顔すればいいんだろう」


「だからあいつにクルトには優しく接しろ、とやたら言われたのか」


納得したように頷いている彼に、ミクマリは顔を赤くし揶揄わないでくれと小突いた。
バルハルトは大笑いをし、クルトを抱きしめた。

「つくづく愛おしいな、クルトは」

彼の言葉にクルトはますます赤くなり、じたばたした。


「もう寝ます!」

「今日は一緒に寝ないのか?」

項垂れる大型犬のような表情でこちらを見るが、クルトは頑なに首を縦に振らなかった。

「そんな大怪我している人とは一緒に眠ることなんてできません!」

しょんぼりするバルハルトに心が揺れそうになるが、なんとか耐え、自室に戻り数日間は一人で眠った。
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