君は笑ういつか見たバラのように

白宮博英(カフェイン過剰摂取)

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二話 変わり始める日常

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次の日、起きたのは午前5時12分。寮の前を掃除することにした。外に出ると西上がいた。ほうきを片手にゴミを集めている。ゴミの量からすると10分くらい前から始めたというところだろうか
「おお、おはよう白神。」
「うん、おはよう委員長。」
 あいさつを交わしていると隣の寮、紅玉から人が出てきた。一人は清掃部、残りの3人は陸上部だ。
「おはようございます。」
 西上が話しかける。
「あら、おはよう。いい天気ね、暑くないの?」
 陸上部の1人、確か二年生の平泉といった人だろう。あいさつを返してくれた。
「そりゃ暑いですよ。朝とは言え27℃ですよ?汗かいちゃいますよ。」
「確かにそうね。水分は補給しておきなさいよ?」
 フフフと笑う。優しい性格なのだろう。
 ……それに対して…
「あんたらの所の陸上部はどうしたの?朝練してないわけ?」
 一年A組の来美雪野だ。勝ち気で高圧的な性格をしている。ちなみに…。
「そりゃ三階で朝練してるだろうよ。お前みたいに何も目標なく走るんじゃなくて。」
「それなんの意味があるわけ?言ってみなさいよ。」
「悪いね専門外なもんで。」
「じゃあ言わないでくれる?鬱陶しいのよ。」
「その鬱陶しいのに話しかけたのは誰だっけ?」
 …始まった。西上と来美雪野はめちゃくちゃ仲が悪いのだ。基本的には来美が突っかかり、西上が返り討ちにしている。
 今日も西上がキレイに論破している。今や群一の娯楽の1つと言える。
「はぁもういいわ。ちょっと!!アンタ見てないでなんか言ったらどうなの!?男でしょ!!」 
 僕に標的が移ったようだ。それにしても最後のはむかついた。望み通り言ってやろう。頭に浮かんだ言葉を吐く。
「今の社会で男女差別的な発言をする植えに人を下に見ないと自身を持つことができない陸上部の恥。」
 言ってやった。
「な……な……!!」
 言葉になっていない。いいきみだ。西上と二年生の平泉さんは納得し、もう一人の陸上部の竹内と清掃部の矢旗さんは声を殺して笑っている。
 流石にここまですれば彼女も突っかかって来ないだろう
 まったく…清掃部部長で雪野の兄である勝矢さんはあんなにいい人なのになぜ妹のこいつはこんなにも性格が悪いのだろうか。
 次の瞬間。僕は彼女がこれ以上突っかかって来ないだろうと思ったことを後悔した。
「うっさいわね!!何!?何なの!?何も知らないくせに!!」
 彼女が怒鳴り声をあげる。そんなに元気なら走りに行けばいいのに。
「近所迷惑たぞどアホ。この前もそれで指導くらっただろ。」
 西上が注意する。ナイスだ西上。悪いのは勝手に突っかかり、勝手に標的を変え、その標的から発せられた言葉にキレた雪野なのだ。そうだ。僕らは悪くない。
 そう言ってやろうと思い、口を開く。そのときだった。
 紅玉から倉里が出てきた。


 うるさい。朝から何をやってるんだろう?チンピラの喧嘩だろうか。それとも酔っぱらいの喧嘩?
 どちらにしても安眠を妨害した罪は重い。
 同室の輪島さんも起きてしまった。まだ一日だがいい人だというのは伝わった。だから余計に許せない。
 一応ジャージに着替えて外に出る。ナメられないためだ。
 ドアを開ける。
 ……一瞬わけがわからなくなった。
 昨日寮の説明を丁寧にしてくれた平泉先輩。昨日あったばかりの白神君。クラスや学校のことを紙にわかりやすく書いて渡してくれた西上君。この三人が何故かいたのだ。
「何やってるの?」
 シンプルにそう思った。
「いや、ちょっと言い争いをね。」
 そんなのは見ればわかる。が、なんとなく喧嘩をしたような雰囲気だ。
「白神くん。」
「ん?どうしたの?」
「何があったのか説明してくれない?」
 彼が説明を始める。
「そこにいる、ほら丸眼鏡でポニーテールの。来美が西上に突っかかってそれを西上が返り討ちにしたんだよ。」
「お前がわざと挑発に乗って、核心ついたのも追加で。」
 西上くんも答えた。
 つまり来美という人がこの二人に喧嘩を売り、返り討ちにされ逆にギレをした。こういうことだろうか。普通にくだらない。来美という人が一番くだらない。
 前世は感情のままに生きる猿だったのかな?
 くだらないと思っても言うべきことは言っておきたい。来美さんに向かい合う。
 「えーと。まぁ来美?さん。朝から騒ぐのはやめてくれない?ここの近くには寮の他に民家もあるし。あと今自午前五時三十分くらいだから、そこら辺考えてほしいのよね。」
 意図的に「午前」を強調して伝えた。しかし、彼女の目にはまだ敵意が残っている。なんで~?
「は?何?そもそもあんた誰なの!?首突っ込んでんじゃないわよ!!」
 おそらくここにいる全員が思っているだろう。「こいつはプライド馬鹿」と。素直に認めて黙ればいいのに。変なプライドが邪魔をしているようだ。
 もうこうなったら容赦はしない。
「部外者じゃなくて被害者ね。そもそもあなたの声がうるさくて言ったのになんで素直に認められないわけ?悪いのはあなたでしょ?」
 彼女が言葉に詰まる。流石に言い負かしたはずだ。
「もういいわ…。」
 彼女が走る。ランニングでもするのだろうか。どちらにせよ私には関係ない。
 その後は平泉先輩から謝罪の言葉を貰い、その後平泉先輩も走っていった。
 白神くんとも少し話し、私は部屋へ戻った。もう一度寝ようとも思ったが今から寝たら七時半とかに起きそうだ。仕方がないので輪島さんと本を読みながら雑談をする。
 輪島さんは二か月ぶりに発売されたシリーズものの最新刊を読んでいる。八巻だ。長く続いているらしい。
「好きなの?」
 質問をする。
「ふぇ…?あ、あぁ。この『影都市崩壊』シリーズ?」
「そうそう」
「…うん。大好きなんだ。」
「いいなぁ私も読んでみようかな。図書館にあるの?」
「え?いやや、貸すよ。全巻持ってるし。はい。」
「ありがとう。」
 裏面を見る。流石ハードカバーの小説だけあって高い。税込みで二二〇〇円もする。
 その後はずっと小説の話で盛り上がっていた。
 七時くらいまで話をしながら小説を読んでいたため、八割程読むことができた。そろそろ食堂に向かう時間だ。初めてここで食事をする。昨日は一旦家に帰り、荷物をまとめるついでに夕食を取ったため食堂では食べていない。
 朝ご飯は白ごはん、わかめの味噌汁、カメノテの刺身、わかめとイカの酢の物だ。
 とても美味しい料理だ。ここの寮生はこんなに美味しいものを食べていたのか。
 そういえば輪島さんに白神君の話を振った時に彼女が見せた曇りの表情は何だったんだろう?


 また、わかめが入っている。今ではもう慣れたが初期は一揆を起こそうかと本気で思っていた。
 僕は毎朝基本的に一人で食事をとる。決して勘違いしてほしくないことだが、友達がいないわけではない。同じクラスにも十二人程の友だちがいる。紫村や西上、それから昨日一緒にゲームをした内の三人も同じクラスで友達だ。
 なんてことを考えながら味噌汁を口に流し込んでいると紫村がいつの間にか横に座っていた。
 ―シャワー浴びるんじゃなかったっけ?
 一瞬そう思ったが紫村が普段からよく使っている青リンゴの香りがするシャンプーの匂いがした。ちなみに彼はこれをあと七本買っている。
「紫村じゃんどうしたの?」
「おう、白神。いやはや、委員長からお前とあの転校生が知り合いだって聞いてな。真偽を確かめに来たわけだ。何しろ相手はあの倉里だからな。」
「あの?」
「え?あぁ!!いやなんでもない。で?どうなんだ?レツスピのマシンの秘密を教えてやるからそっちも教えてくれよ。」
「魅力的だね、それは。わかった!!話すよ。」
 僕、白神天の中で倉里=レツスピのマシンという式ができた。
「おっ!!流石は話せばわかる男!!」
「まずね僕と彼女が出会ったのは彼女が転校してくる日の朝。だいたい午前四時半くらいかな。」
「あー。清掃部か。そういう出会いもあるのね。」
 彼は何やら勘違いしている気がする…。が、スルーすることにした。
「そうそう。それで群一に転校するかどうかとかのどうでもいい話をしていたんだよ。……って、なんだよ…?」
 紫村が何やらじっと見てくる。
 何かを疑ってる目だ。
「何だい?その目は…」
「本当かぁ?」
「え……?」
「本当にそれだけか?」
「そうだけど。」
 疑いの目を緩めない。何か納得できないことでもあるのだろうか。
「あいつはそんな少し話したくらいで打ちとけるような奴じゃない。」
「え?」
 さっきもだが『あいつ』という言葉に違和感を覚えた。
「言ってなかったが、俺とあの転校生、倉里由奈は中学時代、クラスは違うが同じ学校だったんだ。まぁあいつが転校してきたんだけどな。」
 衝撃の事実が明らかになった。
「それじゃあ中学時代の倉里を知ってるわけ?」
「そんなに多くのことを知ってるわけじゃないけどな。」
 間をおいて話し始める。
「一言で言えばあいつは嫌われ者だった。友好的ではなかったしいつも座って本や参考書をなんかを読んでいたんだ。」
 一呼吸の隙間を挟み、当時を思い出すようにこめかみを叩いてからまた話す。
「そのくせ頭はいいし運動もそこそこできた。学年末テストだったかな今まで一位だったやつを抜いたこともあって更に嫌われた。」
 紫村によると二位の人と四〇点もの差をつけたらしい。
 転校してきた生徒が友好的ではないのに加え勉強でも学年トップに立った。嫌われたというより嫉妬に近いかもしれない。人の感情というのは恐ろしいものだ。極端に言えば感情だけで人は死ぬ。
 紫村は続ける。
「ある日、一人の女子生徒が突っかかって行ったんだ。『何なのあんた』ってな。倉里はそいつをチラッと見ただけであとは無視した。後日、俺が登校したら何やら大騒ぎになっていた。倉里がその生徒を殴り倒していたんだ。」
 サラッととんでもない事を聞いた気がする。たしかに今朝のやりとりを見るに彼女は強気な性格であることに変わりはないだろう。でも、まさかそこまでとは思わなかった。
 そこからは僕の想像通りだ。倉里は周囲から危険人物認定され、一匹狼になった。
 まさに女帝だな。と僕は思った。
「まぁ昔話はこれくらいにして…」
 紫村はすぅと息を吸う嵐の前の静けさという奴だろうか
「まぁ何が言いたいかと言うとなあいつはそんな簡単に他人と打ち解けるやつじゃないってことだ。」
「え?」
「あいつが他人と仲良くなるなんてありえない。」
 感情を押し殺したような声で言う。倉里に何か個人的な恨みがあるかのような声だ。でもそれは違うことだと僕にはわかった。
 彼は簡単に言えば信じているのだ。
 3歳児が戦隊ヒーローは絶対に負けないと思ってるように、紫村も倉里は周囲と仲良くしないと思ってるようだ。
「でも僕と仲良くしてるけど…」
「ありえないな。何かに利用しようとでも思っているのか自分の印象を上げようとしてるのかもな。」
 お前も気をつけろと言い、別の話題に移る。
 でも僕はそれを覚えていなかった。


「白神くん」
 その日の昼休み、僕は紫村と一緒に昼食をとっていると倉里が話しかけてきたのは。
 噂をすればなんとやらだ、噂をしたのは今朝だけど。
「どうしたの?」
 やや緊張した声で返す。警戒心を悟られないよう気を付けたつもりだが少し裏返った。朝にあんな話を聞いたんだ、どうしても警戒してしまう。
 それにしても未だに信じがたい話だ。確かに孤高という言葉がジャストフィットするかもしれないが暴力を振るうタイプには見えない。
「別に?用はないわよ美味しそうな物食べてるなって」
「それをいうためにここに来たの?」
「そうだよ?匂いを辿ってきたの」
「警察犬かよ。このキメラが」
「は?」
「さーせん」
 軽口を言い合う僕らを紫村がじっと見ている。
 それを気にせずに彼女は続ける。
「本題なんだけどさ」
「用はないんじゃなかったの?」
「今思い出したの悪い?」
「悪くはないけどさ」
「ならいいじゃない。私の要件をありがたく聞きなさい」
 彼女は自分の胸らへんに手を置く。
 倉里はニヤケが止まらないといった顔を見せて要件とやらを言い始める。
「私さ、テニス部にいるじゃない?それでレギュラー獲得しそうだから白神君に私のマネージャーになってもらおうと思って」
 彼女が言った用件は想像を遥かに超えるものだった。
 実のことを言うと最近倉里の噂を委員長からよく聞いていた。しかしその時は「倉里とか言う新人が校内10位になるかも知れない」という憶測だった。
 群一では部活にランキングというものが存在する。
 自分は運動部ではないのでわからないが紫村から聞いた事がある。確か500点満点だったはずだ。
 点数が高い人からレギュラーになるとても簡単なシステムだ。部員は多いためレギュラーを取るのは非常に難しい。経験豊富な三年生が一年生にレギュラーの枠を取られるなんてザラだ。
 そんなレギュラー様から直々にマネージャーになってほしいと言われたのだ当然僕の回答はすぐに決まった。
「え?嫌だ」
 ノーだ。
「ええ!?なんでよ!!」
 倉里が漫画みたいなリアクションをしてポカンとした表情を見せる。そしてギャーギャー喚く。
 隣で珍獣のごとく喚く倉里をよそに紫村とLINEでやり取りする。すぐ隣に本人がいるのにLINEで会話をするというのはなんともシュールだが今は珍獣がいるので仕方ない。
「なんで断ったんだ?」
「僕は面倒事に巻き込まれたくないだけだよ」
「倉里が大会でベスト8でも取ったら内申点上がるんじゃないか?」
「それなら紫村のとこのマネージャーになるさ」
「へっよく言うぜ、勧誘断ったくせに」
 紫村が所属するサッカー部は全国で見ても屈指の強豪校だ。直近の大会では優勝していて地方大会の進出が決まっている。もちろん彼も活躍していた。
 実際マネージャーとして所属しているチームが良い成績を残せばマネージャー本人の内申点も上がる。
 ここに僕がマネージャーとして活動しない理由の9割が詰まっている。要するにめんどくさいんだ。
「ねぇ!!ねぇ!!なんで嫌なの!?マネージャーになってほしいのお・ね・が・い!!ねー!!」
 今だに隣で騒ぎまくる珍獣をよそにそんな事を考え、弁当に入っているトンカツを頬張った。
 うん、やはり弁当に揚げ物は間違いだったかも知れない。
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