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August
55
しおりを挟む「おう、広瀬。」
俺が片手をあげて答えると、広瀬もさっと改札を通って駆け寄ってきた。
広瀬と俺は同じくらいの身長で、俺の方が少しでかいくらい。もともとひょろっとしてるのもあって、広瀬はすごく小さく見える。走るときにちょこちょこ、みたいな効果音が聞こえてくるし。
いつも先生を見慣れているせいで、自分より小さい人と並ぶのはちょっと違和感。
「こんな早いところで合流できるなんて思ってなかったわ。」
「広瀬もここが最寄り駅?」
「うん。」
「まじか!」
平然と言うけど、こんなところに住んでるのは基本的に金持ち。
「ここまで一緒なんだったらこれから一緒に大学行けるんじゃね?ここで待ち合わせして。」
「たしかに!」
これで家とか先生と一緒に住んでることとかバレたら全然笑えないけど、駅で待ち合せなら大丈夫か。
談笑しながら電車に乗り込む。
ゾンビみたいな顔で乗り込んではびこるサラリーマンたちはこの時間になると少なくて、ほとんどが学生とか、遊びに行く家族とかだ。
都会の電車だからがらがらってわけにはいかないけど、いつもの満員電車に比べたら七割くらいの人出。
「この時間の電車、空いてるよな。」
「あそっか、広瀬はこの時間の電車乗ったりするのか。」
「うん。あ、永瀬は電車乗らないんだっけ?」
「うん。いつも車で行ってるから、電車の感じよくわかってなかった。」
「そかそか。三限から始まるときとかはこの時間の電車乗れるから、だいぶ楽。」
「へぇ。じゃあ一限からあるときとかはあの混雑の中で乗っていくの?」
「もち。押しつぶされるからまじでしんどい。」
「うわぁ…。大変だな。」
「この次の駅が宮田の最寄りで、そのタイミングでいつも合流して二人で行ってる。一人で満員電車はまじで耐えられん。」
宮田も同じグループ。確か一番最初に「一緒に遊び行かない?」って誘ってくれたやつ。
「おう。」
「おっ、え、今日は永瀬もいんじゃん。」
電車が一時停止すると、すぐに宮田が乗り込んできた。
いつもこの号車で待ち合わせしてるらしい。
「おう、おはよ。」
「おはよ。え、どっから一緒?」
「永瀬と改札のとこでばったり会って、それからずっと一緒に来た。」
俺が答えるより前に、広瀬が答える。
「仲良すぎだろ。」
「仲良すぎるんよ。」
「自慢すんなよ。」
二人の会話のペースがはやすぎて、しがみついてないと置いて行かれそうになる。
「そういえば、永瀬は実家帰省するの?」
気を遣ってくれてるのか、自然に周りに会話振れる陽キャなのか、広瀬が俺にも会話のボールを投げてくれる。
「え、永瀬って一人暮らし?」
それに驚いたのが宮田。
宮田、今日会ってからずっと驚いてる気がする。
毎回しっかりリアクションしてくれるし感情出してくれるから一緒にいて楽しいし、飽きない。
広瀬に負けず劣らず陽キャの予感。
そっか、広瀬には「知り合いの家に居候してる」って言ってあるけど、宮田には言ってなかったのか。
広瀬と同じ高級住宅街に面する駅が最寄りで、そこに一人暮らししてるとは考えにくいか。
「あ、知り合いの家に居候してるから、実家には帰るよ。」
「えぇ、まじ?永瀬なら一人暮らしできそうだけどな…。」
「ちょっとだけ一人暮らししてたんだけど、でも今居候してる先の人が心配してくれて、一緒に住まわせてくれることになって。」
「へぇ、でもなかなか居候させてくれるってないよな。永瀬もすごいし、その居候先の人もすごいわ…親戚とかではないの?」
「親戚…ではないかな。でも近所のお兄ちゃん、みたいな感じだけど。」
「そうなん?それは俺も初耳だわ。」
前もここまでしっかりは言わなかったから、広瀬もびっくりしてる。
先生のことがバレたら、って不安になる気持ちもあるけど、初めてみんなと遊びに行くってこともあって浮かれてるみたいだ。
いつもより饒舌にしゃべっちゃう。
気を付けていかないと。
びゅんびゅんと変わっていく景色を車窓から眺めて、気を引き締めた。
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