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17:家族団欒
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「スー、精霊様についてはくれぐれも、私達家族だけの時にするようにな」
テーヴァスがスーへ釘を刺す。精霊が見えるスキルの話は、フォルツァ侯爵家の内部と、レリヒー教会の上層部のみが知る事実。
もしレリヒー教会の反主流派に漏れてしまえば、スーを聖女と持ち上げて権力闘争を仕掛ける可能性がある為だ。
スーはまだ六歳。ただのお飾りとして信仰に捧げられるのは忍びない。
しかしいずれは何らかの形で教会に顔を出すようになる。精霊が見えるのみに留まらず、その声を聞く事が出来る者は少ない。
国教であるレリヒー教会にとって、スーは聖女と崇めるべき人物なのだ。
「分かってるの! でもでも、精霊様のお力を借りて勇者シオンの助けになれるように頑張るの!!」
そんな自分の将来をまだ知る由もない女の子。
愛するお兄様を支えたい。その純粋な想いに対し、シオンは今まで苦しまされて来た。
スーが自分を構えば構うほど、鬱陶しく感じてしまう。そんな自分が嫌だった。
しかし今は違う。スキルが手に入るかもしれない。僅かな希望が見えた。
もし“追放されし者”の称号を得る事が出来れば、何らかのスキルが発現するかもしれないと分かったのだ。
「んー? 甘えん坊なスーが僕達の旅に着いて来れるとは思えないなぁ。
冒険って大変なんだよ? ほら、今日もニンジンを残してたでしょ? 好き嫌いしているようじゃ厳しい旅には耐えられないんじゃないかなー?」
からかうようなシオンの発言に、テーヴァスは違和感を覚えた。
(どこか雰囲気が違うような……)
「あらあら、じゃあ好き嫌いしない私なら着いて行けそうね?」
「お姉様にはお父様とお母様を支えていてもらわなきゃ。僕が安心して旅に出れるのはお姉様のお陰だもん」
「ではお母様がシオンに着いて行くわ」
「お母様が着いて来るとなるとお付きの人達で大行列になっちゃうよ」
一つ一つ丁寧に答えるシオン。以前であればもっと必死に、真面目に答えていたように思う。もしくは聞き流すか。
しかし今では余裕を持って返答し、冗談も返せている。
妻も娘達も、とても嬉しそうにシオンと会話している。
(……男になったか?)
「旦那様」
スススッ、と侍女がテーヴァスへ近付き、周りから見えないように手紙を差し出す。
目は家族を眺めたままその手紙を受け取ってテーブルの下で開く。
“王城にて急転。直接お伝えしたく”
書かれた文字を確認し、手紙を差し出したまま控えていた侍女へ指示を出す。
「執務室へ」
無言で頷き、下がる侍女。
手紙の差出人はレリック。王城での事を報告したいから直接会いたいという内容に対し、テーヴァスが応えた形になる。
「さて、私はそろそろ執務室へ戻らねばならん」
「あら、お仕事ですか? せっかくシオンが帰って来たというのに。
また次の旅に出てしまえばお話しさえ出来なくなるのですよ?」
咎めるようなマーテルの視線。シオンより仕事を優先する事を批判する訳でなく、シオンの旅を少しでも遅らせろという妻からの命令に近いお願いだ。
「私は父に対して恋しいという想いはなかった。あったのは認めてほしいという願望だけだったがな。
シオンよ、寂しいか?」
問われたシオンはすっと背筋を伸ばして答える。
「いえ、お父様。きっと強くなって戻ってみせます」
シオンの意思を感じさせる瞳を見やり、大きく頷くテーヴァス。
「期待しているぞ。
マーテル、後は談話室に場を移しなさい。私も仕事が終わったら向かおう」
分かりました、とマーテルは立ち上がり、子供達を連れて談話室へと向かった。
テーヴァスがスーへ釘を刺す。精霊が見えるスキルの話は、フォルツァ侯爵家の内部と、レリヒー教会の上層部のみが知る事実。
もしレリヒー教会の反主流派に漏れてしまえば、スーを聖女と持ち上げて権力闘争を仕掛ける可能性がある為だ。
スーはまだ六歳。ただのお飾りとして信仰に捧げられるのは忍びない。
しかしいずれは何らかの形で教会に顔を出すようになる。精霊が見えるのみに留まらず、その声を聞く事が出来る者は少ない。
国教であるレリヒー教会にとって、スーは聖女と崇めるべき人物なのだ。
「分かってるの! でもでも、精霊様のお力を借りて勇者シオンの助けになれるように頑張るの!!」
そんな自分の将来をまだ知る由もない女の子。
愛するお兄様を支えたい。その純粋な想いに対し、シオンは今まで苦しまされて来た。
スーが自分を構えば構うほど、鬱陶しく感じてしまう。そんな自分が嫌だった。
しかし今は違う。スキルが手に入るかもしれない。僅かな希望が見えた。
もし“追放されし者”の称号を得る事が出来れば、何らかのスキルが発現するかもしれないと分かったのだ。
「んー? 甘えん坊なスーが僕達の旅に着いて来れるとは思えないなぁ。
冒険って大変なんだよ? ほら、今日もニンジンを残してたでしょ? 好き嫌いしているようじゃ厳しい旅には耐えられないんじゃないかなー?」
からかうようなシオンの発言に、テーヴァスは違和感を覚えた。
(どこか雰囲気が違うような……)
「あらあら、じゃあ好き嫌いしない私なら着いて行けそうね?」
「お姉様にはお父様とお母様を支えていてもらわなきゃ。僕が安心して旅に出れるのはお姉様のお陰だもん」
「ではお母様がシオンに着いて行くわ」
「お母様が着いて来るとなるとお付きの人達で大行列になっちゃうよ」
一つ一つ丁寧に答えるシオン。以前であればもっと必死に、真面目に答えていたように思う。もしくは聞き流すか。
しかし今では余裕を持って返答し、冗談も返せている。
妻も娘達も、とても嬉しそうにシオンと会話している。
(……男になったか?)
「旦那様」
スススッ、と侍女がテーヴァスへ近付き、周りから見えないように手紙を差し出す。
目は家族を眺めたままその手紙を受け取ってテーブルの下で開く。
“王城にて急転。直接お伝えしたく”
書かれた文字を確認し、手紙を差し出したまま控えていた侍女へ指示を出す。
「執務室へ」
無言で頷き、下がる侍女。
手紙の差出人はレリック。王城での事を報告したいから直接会いたいという内容に対し、テーヴァスが応えた形になる。
「さて、私はそろそろ執務室へ戻らねばならん」
「あら、お仕事ですか? せっかくシオンが帰って来たというのに。
また次の旅に出てしまえばお話しさえ出来なくなるのですよ?」
咎めるようなマーテルの視線。シオンより仕事を優先する事を批判する訳でなく、シオンの旅を少しでも遅らせろという妻からの命令に近いお願いだ。
「私は父に対して恋しいという想いはなかった。あったのは認めてほしいという願望だけだったがな。
シオンよ、寂しいか?」
問われたシオンはすっと背筋を伸ばして答える。
「いえ、お父様。きっと強くなって戻ってみせます」
シオンの意思を感じさせる瞳を見やり、大きく頷くテーヴァス。
「期待しているぞ。
マーテル、後は談話室に場を移しなさい。私も仕事が終わったら向かおう」
分かりました、とマーテルは立ち上がり、子供達を連れて談話室へと向かった。
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