世界で俺だけが幼馴染の事を知らない

なつのさんち

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Main story

風呂上がりクールタイム

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 気持ち悪い……。
 女の風呂が長いって話、浴槽に浸かっている時間が長いのかと思ったら髪の毛や身体を洗う時間も長かったんだな。
 いくらぬるま湯だったとはいえ、ほぼ全身お湯に浸かって待っていたのだからのぼせて当たり前だと思う。
 しかも風呂の蓋を閉めっぱなしだったから酸素も薄かったし頭が痛い。
 少し隙間を作って空気の入れ替えをすれば良かったのかもしれないが、そこから覗き見していると思われても癪だ。
 あれだけ見るのを躊躇してた癖に、隙間から覗くなんてむっつりスケベだと言われたら堪らん。
 スケベ呼ばわりならまだいい。むっつりスケベはダメだ。
 どっちでもいいわそんな事。
 ボーっとした頭で自室の天井を見上げる。
 わざわざ脱衣所まで持って行ったスウェットをそのまま抱えて、腰にバスタオルを巻いたまま部屋に戻って来たのだ。
 もうちょっと落ち着いたら飲み物を取りに行こう。
 あ、何か嫌な予感がする。窓と部屋の扉に鍵掛けておくべきだったか。

ガチャッ

 案の定部屋の扉が開く。Tシャツにスパッツ姿の羽那子はなこだ。
 マズイな、せめてパンツだけでも履いておけば良かった……。

「羽那子、見ての通り今裸だから、服を着るから出てってくれ」

「何で? 一緒にお風呂に入った仲じゃん」

 お前それ絶対学校で言うなよ!?
 いや、クラスメイト達は俺達の事そんな目で見てたのだろうか。
 改めて考えるとめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
 明日からも今まで通りの学校生活を送れるだろうか。不安だ。

「分かった、出ていかなくていいからこれ被っててくれ」

 ベッドの上にあったタオルケットを羽那子目掛けて投げる。上手く顔を隠せた。
 その隙にパンツを履いてスウェットのズボンも履く。
 うっ……、急に動いたから目がチカチカする……。
 パタリとベッドへ横になる。

「あーあー、無理してお風呂に浸かってるからそうなるんだよ。
 はい、炭酸水」

 羽那子がペットボトルを寄越す。炭酸水?

「味がなくてただシュワシュワするだけの水。カロリーないしおいしいよ?」

 味がないのにおいしいのか? ベッドに胡坐をかいて座り、ペットボトルのキャップを外す。
 ふむ。確かにこれは、うまいな。
 もしかしてこれも、羽那子と俺との間で共通する思い出の飲み物だったり……?

「学校でみっきーに勧められて買ったんだー。おいしいよね!」

「何じゃそれ」

 少ししんみりしてしまった俺の感情を返してほしい。
 何か嫌味の一つでも言ってやろうと考えていると、ドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえて来た。
 羽那子の家の風呂に入りに行ったという伊千香いちかが戻って来たのだろう。

ガチャ!

「お兄ちゃんったらはなちゃんと一緒にお風呂入ったんだってーって何でお兄ちゃん裸なの!!?
 私お邪魔だった!? 出て行くから!! 音とか気にしなくていいからね!!!」

 うるさい落ち着け。ってかお前がけしかけたんだろうふざけんな!

「入ったけど真っ暗でね、隠れてたんだよー」

「何それアブノーマル」

 妹のボキャブラリーにアブノーマルという単語が入っているのがとてもショッキング。
 いつまでも幼く無垢であればいいものを……。

「で、背中洗った?」

「洗いっこしよって言ったらお断りされちゃった」

「恥だねお兄ちゃん。男の恥だよ!!」

「兄に対して据え膳食わぬは男の恥と罵る妹がいて堪るか!!」

 クラクラクラッ。ダメだ、叫んだら意識が遠のきかけた。

「もう放っておいてくれ、しんどいんだ……」

 再びベッドに横になる。ペットボトルを額に付けて涼む。
 はぁ……、しんど。
 俺が大人しくなったのを見てか、羽那子が俺の隣に寝転ぶ。

「おっと、後はお若い二人に任せるという事で……」

 やり手おばさんが去って行った。

 何もしねぇよ。いや、出来ねぇよ……。 
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