世界で俺だけが幼馴染の事を知らない

なつのさんち

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Main story

ボケとツッコミとツッコミボケとノリツッコミと……

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 家の玄関前で美紀みきを待ち、そのまま俺と伊千香いちか羽那子はなこで登校。

「昨日はお兄ちゃんが長湯だったからお風呂ははなちゃんの家で借りたんですよ」

 おい、時系列が違うぞ。しかも何やら伊千香が妖しい笑顔を浮かべている。不穏な気配。

「ええなぁ、幼馴染みならではやなぁ」

「お兄ちゃん、ずいぶん長い間お風呂に入ってたみたいだけど、何してたの?」

「何って、風呂入ってただけだろ」

「お風呂の蓋閉めて潜ってたからのぼせたんだよねー」

 伊千香、これが狙いか!?
 俺が伊千香に嵌められて羽那子と一緒に風呂に入らされた事を美紀に教えるつもりだ。

「お風呂の蓋を閉めた? 潜水艦ごっこでもしてたん?」

「そ、そうなんだよ! あの真っ暗で狭くて音が響いてじめじめした空間が好きなんだ!!」

 勢いで叫んでしまったが、潜水艦の仲が真っ暗で狭くて音が響いてじめじめしているかどうかは知らない。
 俺の返事をボケだと受け取ったのか、美紀がビシッと手を横に出した。

「何でやねん、船内に水があったら沈んでしまうやろ!」

 ……それは適切なツッコミなのか?

「でも何で潜水艦ごっこしてたって事をはなちゃんが知ってんの?
 もしかして一緒にお風呂に入ってたんちゃうかー?」

 うっ、このタイミングで適切な返し。しかしこれはボケツッコミのノリなので、まだ軌道修正が可能なはず!
 こういう場合どういうツッコミが正しいのだろか。
 下手な返しをしてしまうと場が白けて、隠し事があるのではと疑われてしまう!
 考えろ、考えるんだ伊千郎いちろう!!

「そうだよー。昨日は久しぶりに一緒にお風呂入ったんだー。
 お風呂場を真っ暗にしてお湯に浸かってたんだけど、身体を洗うところを見るのはさすがに恥ずかしいからっていっくんがお風呂の蓋を閉めて隠れちゃったんだよ」

 考え過ぎてタイミングが後れたー!
 羽那子によって真実が暴露されてしまった……。
 いくら幼馴染みとはいえ、俺が羽那子に関する記憶を持っていない事を美紀は知っている。
 つまり、出会って数日しか経っていない女の子と一緒にお風呂に入ったと思われかねない!!

「はははっ、何でやねーん!」

 羽那子のボケだと判断した美紀が羽那子にツッコミを入れる。

「もう、はなちゃんてばおもろいなぁ。
 いくら幼馴染みやからって高校生にもなって一緒にお風呂入る訳ないやんかなー」

 なー、と俺に笑いかける美紀。
 えーっと、これは単純に同意を得ようとしているだけだよな?
 若干笑顔が引き攣っていて薄ら寒い何かを感じるのは、俺の気のせいだよな……!?

「そ、そうそう! 羽那子は昔からよくボケるタイプだからな!!
 でもちょっと誤解を与えかねないタイプのボケはな、止めてほしいよなって思うよな!!」

 ハハハハハ、と美紀に合わせて笑う。
 大丈夫、もう少しで民人たみとはやしさんと合流する十字路に差し掛かる。
 あと少しを逃げ切れば有耶無耶に出来る!!

「お兄ちゃん、はなちゃんの記憶、ないんだよね?」

 え? そうだけど……。

「何ではなちゃんの記憶がないのに、イチローははなちゃんが昔からよくボケるタイプやって、知ってんのかな?」

 ……え? いや、何となくそんな気がしただけで……。

「どういう事かちゃぁ~んと聞かせてもらわんとアカンみたいやなぁ~!」

 こういう場合、俺は何も悪くないのに何故男だからという理由でこちらが責められる事になるのだろうか。
 俺はただ先にお風呂に入っていただけ。そこに羽那子が入って来た。全裸で。
 俺は悪くないんだ。被害者とは言わないが、俺はただそこにいただけなんだ。
 なのに何で俺が怒られる事になるのだろうか酷くない???

「また今朝も面白そうな話が聞けそーじゃん」

「伊千郎、お前も大変だな。で、お風呂が何だって?」

 お前ら合流するタイミングが遅いんだよ!!

 
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