60 / 72
Main story
妹の忠告
しおりを挟む「ホントに送って行かなくていいのか?」
「大丈夫、明るい道だけを通って帰れるから」
夕食後、しばらくして里奈が帰る時間に。
伊千香が一緒にお風呂に入ろうと誘いに来たが、里奈は着替えがないからとまた入ろうね、と言っていた。
どうやらこの二人は一緒に風呂に入った事があるようだ。兄の彼女と一緒に入るもんなのだろうか。彼氏の家のお風呂に入る機会ってどんな時だ?
そんな事を考えながら家の玄関の前に立ち、何度も振り返って手を振る里奈を見送った。
家に戻りキッチンへ行くと伊千香が俺と里奈の分の食器を洗ってくれていた。
「ごめんな、洗い物も風呂の掃除も任せてしまって」
「いいよいいよ、風邪引いてる時くらい。
それより里奈さんをもっと大切にしないとダメだよ」
手を止めず顔だけ俺の方へ向け、伊千香は眉をひそめる。
「私ははなちゃんの事、幼馴染みとしては好きだしずっと仲良くしていきたいって思ってるけど、お兄ちゃんが絡むとはなちゃんは行き過ぎる。
何て言うか、お兄ちゃんさえ自分の傍にいれば、後は何もいらないって思ってるように見えるんだよね」
それがちょっと淋しかったりするんだけど、と続ける伊千香。
「はなちゃんはお兄ちゃんの事だけを見てる。お兄ちゃんの隣にいる里奈さんの事は目に入ってない。
だからすっごく里奈さんは傷付いてると思う。
その分、お兄ちゃんの方からはなちゃんと距離を作るべきだと思うよ。はなちゃんとではなく、里奈さんとのお付き合いを続けたいのであれば」
「そうだな……」
「あれ? 今日はやけに素直だね。おっと」
伊千香のスマホが通知を告げる。伊千香は手を洗ってテーブルに置いていたスマホを取る。
「あ、里奈さんだ」
兄の彼女とやり取りする女子中学生。伊千香がそんな事をするなんて想像もしていなかったのでビックリする。
「へー、何だ。私がごちゃごちゃ言う必要ないみたいだったね。
お兄ちゃん、やるじゃん」
ん? 何がやるじゃんなのか分からないが、里奈から俺の事についてメッセージが来た事は分かる。
もう家に着いたんだろうか。
よく考えると、里奈は俺の家族を知っているが、俺は里奈の家族も家がどこにあるかも知らない。
ちょっとこれは良くない状況だな。どこかのタイミングで確認しておかなくては。
「さて、お兄ちゃん先にお風呂行って来たら?
私は洗い物終わらせたら友達に電話するつもりだから」
スマホをテーブルに置き直し、伊千香が洗い物を再開する。
友達と電話か。長くなりそうだし、さっさと先に入ってしまおう。
部屋に戻り着替えを用意し、また階段を下りて脱衣所へ。少し迷ったが、扉に鍵を掛けておく。
浴槽にお湯が溜めてあるが、俺は体調不良で学校を休んだ身だ。シャワーで済ませておく。
浴室内のリモコンで給湯温度を少し上げ、熱めのお湯を浴びる。気持ちが良い。さっぱりする。
全身洗い終え、バスタオルで身体を拭いてから脱衣所へ戻る。
ガチャ
ん? 扉を開けようとしたのかな?
「伊千香か? もうすぐ出るからちょっとだけ待って」
声を掛けたが返事はなかった。先に入れって言ったくせに。せっかちか?
寝間着を着てから鍵を開け、脱衣所を出る。リビングやダイニングを探しても、伊千香はいなかった。
階段を上がって伊千香の部屋の前を通ると、中から伊千香の声が聞こえる。どうやら電話をしているようだ。
『そう、お兄ちゃんがやっと気付いてくれたって里奈さんが喜んでて、私も嬉しくなっちゃってさ!』
……俺が聞いて良い内容じゃない気がするので、声は掛けずに通り過ぎる。
少しわざとらしく音が鳴るように部屋の扉を閉め、ベッドに横になる。
伊千香、誰と電話してるんだろう。学校の友達に兄とその恋人の事を相談してるとか?
恥ずかしいから止めてほしい……。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる