4 / 29
好きなのに理由って必要ですか? と彼女は言った
「謝って下さい!」
しおりを挟む「好きなのに理由って必要ですか?」
え……? えっ!?
「好きだなと思ったんですよ、柊人さんの事。だから告白しました。
ダメ、ですか?」
(ダメでは)ないです。
いやいや、ダメじゃないけどさぁ、いいのそれで!?
大学の講義が終わり、冬花ちゃんと連絡を取り合って俺の大学の駅近くにあるファストフード店で待ち合わせをした。
俺はガチガチに緊張しながら冬花ちゃんの待っているテーブル席へ向かい、お腹が減っているか聞き、ちょっと摘まめる物を買って来るねと話すという難しい課題を達成したのだ。
ミッションコンプリート! いやね、これだけの事で俺はもう精神的に参っているんだ。
分かる? 俺って男前じゃないしさ、特別背も高い訳じゃない。お金持ちでもないし人に自慢できる特技がある訳でもないんだ。そしてコミュ力もないです。
そんな俺が、みんなが振り向くような超絶美少女の向かい側の席に座ってんの。しかもこの席ガラス越しに大通りから丸見えなんスよ!?
これはご褒美を通り越して罰ゲームなんじゃないかと思う訳です。ます。
で、ふと思った訳。冬花ちゃんはそんな俺の何が好きなんだろう、と。聞きたいよね? 普通聞きたいじゃんね?
それに対する答えがコレだもの。
ちなみに俺の答えはコチラ。
Q、好きなのに理由って必要ですか?
A、必要ですよ! 一番大事でしょうに!!
好きな理由がないと、納得が出来ないじゃないか! 例えば男前だから、とかお金持ちだから、とか分かりやすい理由がないと安心出来ぬ!!
いや、俺にはその理由に当たる物がないんだけども。
ともかく理由なく好きになったのなら、理由なく好きじゃなくなる可能性があるって事でしょう!? そういう事でしょう!!?
俺はいつこのコから捨てられるやも知れぬ恐怖と戦いながらお付き合いしなきゃって事ですか……。
胃に穴が空く予感!!!
「あれ? 冬花ちゃんじゃん、どしたの? 家この辺なの?」
「冬花ちゃんと塾以外で会うなんて、運命じゃね!?
この人お兄さん? あんまり似てないけど」
やたらとテンションの高い2人組が絡んで来た。すごく今風の男子高校生って雰囲気。冬花ちゃんの塾の男友達か何かだろうか。鬱陶しいけど冬花ちゃんの知り合いである手前、無碍にする事は出来ない。俺のせいで冬花ちゃんの評判が落ちるとか耐えられない。
「話し掛けないで下さい、迷惑です」
えーっ!? どストレートにお断りしたな!!
冬花ちゃんの態度も表情も雰囲気もまとめて急変したから変化に付いて行けないわ。可愛い女の子からクールビューティな女性に変身した感じ。クイッて眼鏡を上げる感じとか超クール。
普段からそんなあしらわれ方に慣れているのか、2人組はへらへらしたまま。メンタル強ぇなおい。
「お兄さん、冬花ちゃん塾でいっつも冷たいんスよ。家でもそうなのかなぁって思ってたらお兄さんと一緒に出掛けてんの見てビックリっス!
あれっスか、ブラコンってヤツっスか!?」
「一緒にお風呂入ってるスか!? 羨ましい!! 爆発しろ!!!」
ゲラゲラ笑いながら店を出て行く彼ら。何だったんだ今のは……。悪いコ達ではなさそうだし大丈夫っぽいけど。
あ、俺を兄だと勘違いしたままだった、否定しておくべきだったか。
「すみません、塾の人達がご迷惑をお掛けしました」
クールビューティから可愛い女の子に戻った冬花ちゃんが表情をくしゃっとさせて俺に謝ってくれる。くしゃっとしてても可愛い……。
いや、全然大丈夫。むしろ申し訳ない。
「ごめんね、お兄さんって言われた時すぐに否定すれば良かったね」
「えっ、何でですか?」
「だって、こんな俺が冬花ちゃんのお兄さんだって思われたらさ、何か申し訳ないなって」
「……、何でですか?」
うわっ、またクールビューティに戻った! え、何で!? 何がダメだったんだろう……。
「ほら、冬花ちゃんって、その……、か、可愛いじゃん? それなのにさ、こんな俺が兄だなんて勘違いされたままだとさ、塾で噂になるんじゃないかって思って。
冬花ちゃんのお兄さんってブおt」
ダンッ!! うっわぁ!! いきなり冬花ちゃんがテーブル叩いた!!!
うっわみんな見てるし、超見られてるし、冬花ちゃんが俺を睨んで来るし怖ぇ!!!!
「謝って下さい!」
ええぇぇぇ、分かんないマジで分かんない!
ちょっとこの展開分かんないですぅぅぅ!!
「柊人さんを好きな私に謝って下さいっ!!」
ファッ!!!!??? ドユコト? 俺の事が好きな冬花ちゃんに謝れ?
ちょっとホントに分かんないですってば!!!
「柊人さんは私が好きな人の事を否定するんですか!? 私は柊人さんが好きなんです。顔も、話し方も、仕草も、私を気遣ってくれる優しさも、全部好きです。好きになってから知った柊人さんも好きです。実際に話してみたら幻滅したとか、そんな事はありません!
信じて、くれませんか……?」
信じる! 俺冬花ちゃんの事信じるよ!!
俺の全存在を賭けて信じるから、もう外に出ようお願います!!!
周りの視線が痛いのぉ~!!
胃に穴が空いてる予感!!!
10
あなたにおすすめの小説
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる