100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

まーくん

文字の大きさ
20 / 132
ようこそ異世界へ

王女様と再会しました

しおりを挟む
街に繰り出した俺達が最初に向かったのは、王都の流行発信地と言われている服屋。

安いのにデザインセンスが良いと、若い女の子達に人気だそうだ。

もちろんマリンさん情報なのだが。

入り口の扉には冒険者マークが貼ってある。

このマークのある店は、冒険者割引が効くらしい。

それもランクに合わせて割引率が変わるらしいから、昨日C級に上がった俺達には財布に優しい。

なんと全商品40%引きになるそうなんだ。

勢い込んで店の前まで来て、異変に気付いた。

非常に弱いが誰かがこちらを監視している。

危機察知能力を最小限にしていたので、分かり難かったが間違いない。

しかもこの薄い気配は高度な気配遮断能力を持っている者に違いなく、最低でも3人はいるようだ。

気配察知を少し強くしたら、周りの強い悪意に強烈な目眩が!

危なかった、また意識が刈り取られるところだった。

気配察知を最低に戻す。

でもこれではっきりした。

たしかにこちらを監視しているようだが、俺達に向けてじゃない。

店の中のようだ。

最近、危機察知能力を連発していたので能力が強化されてきたみたいで、視線や悪意の対象まで何となく分かるようになってきた。

高嶺の花に対する羨望や商売仇への憎しみから来るものなど、店に向けられている悪意に紛れて、店の中を心配するような、悪意では無い善意の視線もいくつか感じとれる。

とりあえず、俺達に向けてのものじゃ無ければ良しとしよう。
というか、この程度の視線や悪意を気にしていたら、この街には住めないし。

「さあ入ろうか。」

ミーアの背中を押して、店の中に入った。

「カラーン!いらっしゃいませ!」

「この娘、ミーアの普段着を何着かと、下着を何セットか用意してあげてくれますか。」

入るなり愛想良くしてくれたお姉さんにミーアの着る物を見繕ってくれるように頼む。

ミーアは俺に見て欲しそうだけど、俺のセンスよりお姉さんの方が確実だしね。

「まあ、良いお兄さんね。ミーアちゃん、お姉さんが一番似合うのを探してあげるわね。」

お姉さんが微笑ましそうに俺達を見て、ミーアを奥の方に連れて行った。

少し妬みの感情を感じたけど、あのくらいは問題無いだろう。

うん?何か視線を感じる?
間違いなく俺に対してだ。
でも悪意は感じ無いな。

視線の先を追う。

数人の店員に囲まれた少女が、明らかにこちらに視線を向けていた。



>>>>>>>>>>>>>

今日は久しぶりに、お忍びで街に出てくるためのドレスを買いにこの店に来ています。

王都の流行発信地と評判のこの店の服はわたしの大のお気に入りです。

さすがにお城の中で着るわけにはいきませんが、お忍びで街を散策する時はこの店の服と決めています。

いつもはお城に服をたくさん持って来てもらい、お母様と一緒に選ぶのですが、今日は店を訪れることにしました。

先日のシルバーウルフの件もあり、お父様やお母様が気遣って下さったようです。

本来ならランス達が護衛の任に就くのですが、ランス達に側に居られたらせっかく念願が叶ったというのに台無しですよね。

だから今日は魔法師団に頼んで少し離れて見守って戴くことにしました。

魔法師団の方達、気配を消すのがお上手なので、お忍びがバレることも無いでしょう。




「うん?この感じ、もしかしてあの時の?」

わたしはシルバーウルフに襲われた時に助けてくれた謎のお方とよく似た気配を店の中で感じました。

しかも今はあの時とは違い、はっきりと気配を感じ取れます。

お城で魔力波長台帳を調べた時は残念ながら見つかりませんでしたけど、間違いなくあの波長と符合しますわ。

気配の方に視線を向けると、わたしよりも少し年上の男性と、少し下と思われる少女が入り口近くで店員と話していました。

いきなりお声掛けするわけにもいきませんし、どう致しましょうか。

こんなことならランスも連れて来るべきでした。

店のオーナーや店長があれこれと服を持って来ては一生懸命わたしに似合うものを探して下さっているのですが、あの方に夢中で気もそぞろですわ。

あっ少女が店員さんと奥に行ってしまわれました。

あの方がこちらを向かれた瞬間、目が合ってしまいました。

わたしは思い切って、あの方のところに近づいて行きます。

突然のわたしの行動に、侍女や護衛の女騎士さんも驚いておられます。

あの方はやはりわたしに気付かれておられたようです。

わたしをジッと見ておられますわ。

「あの、もし間違いだったらごめんなさい。

あなたはわたし達をシルバーウルフから守っ下さった方ですわね。」

いきなり突拍子も無い話しを致しました。

もしあの方でなければ、意味が分からず動揺を見せるはず。

「あー、やっぱりあなたはあの時のお姫様ですよね。

やっぱりわたしのことが見えていたのですね。目が合ったような気がしていたのです。」

「あの節は本当にありがとうございました。

あなた様の顔が見えていたわけではないのですが、薄らと気配だけを察知出来たのです。

もしご都合が宜しければ、これからお礼をさせて頂きたく思いますが。

両親も喜ぶと思います。」

わたしとしましては、命の恩人であるこの方にお城でおもてなし差し上げたいところです。

それにあれだけの魔法が使えるのですから、魔法師団へもお誘いしたいという思いもあります。

いえ、この方が望まれたらの話しではありますが。

「如何でしょうか?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...