28 / 132
ようこそ異世界へ
このお屋敷、お城と繋がっているみたいです
しおりを挟む
その日の晩ご飯は、王妃様とイリヤ姫様も一緒に食べることになった。
晩ご飯の支度が出来るまで、王妃様、セバスさん、マイヤーさんは、俺とイリヤ姫様の出会いの話しで盛り上がっている。
途中、王家専属の吟遊詩人達がやってきて、詩にすると言い出したので、それだけはイリヤ姫様とふたりで全面的にお断りしたんだ。
ただ、ふたりで必死に懇願する姿が仲良く見えたとかで、そのことだけは詩にされていたと、大入りの大衆演劇になってから気付いたんだけどね。
ともかく、晩ご飯も終わり食後のお茶も堪能した王妃様達は、お城へと帰って行った。
玄関からでは無くて地下室の隠し扉から。
驚いている俺にセバスさんが教えてくれる。
この屋敷は建てた時からお城と地下で繋がっているのだと。
先王が住んでいたのだから繋がっていてもおかしくないんだけどね。
どおりで警護兵が少ないはずだよ。
ちなみに、地下通路はお城の地下室の隠し扉と繋がっていて、歩いて30分くらいだそうだ。
地下室に降りてみると暗いはずの地下通路に煌々と灯りが灯っていて、通路の端には馬車止めや御者控え室まであった。
その控え室で待っていたのか、すでに馬車は出発の準備を終えていた。
王妃様達が帰ったのを見計らって、俺はミーアを迎えにスタイロンさんの店に急いだ。
「ヒロシ~!」
嬉しそうな顔で俺に抱きついてくるミーア。
厳ついスタイロンさんとふたりで不安だったんだろうな。
俺はミーアを抱きしめてあげる。
「もおー、なかなか帰って来ないから、心配したんだよ。」
怒り調子な言葉と裏腹に満面の笑みが溢れていた。
「ミーア、あのお屋敷はさー、お城と繋がっていてね、いつ王妃様達が来るかわからないんだ。
どっか他に引っ越そうか。」
「ミーアが魔人だから?
人間の姿が不味かったら、猫の姿になっていようか?
だって、王様に逆らったら大変なことになるでしょう?」
ミーアがうわ目使いに聞いてくる。
たしかに理由もなく下賜された家を出るのは不味い気がする。
「でもミーア、猫に変身するのは嫌じゃないの?」
「うーん、別に嫌じゃないよ。
それに猫の姿の方が魔力の消費も少ないしね。
それに、ヒロシは猫の姿も好きだったでしょ。」
はい、大好物です。
「よし、じゃあミーアは俺のところで住み込みをしていることにしてやる。
なに、専属冒険者にはよくあることさ。」
スタイロンさんの案で決まり。
王妃様や姫様が頻繁に来るであろう屋敷に人間の姿のミーアを住まわせるのはなにかと問題ありそうだから、ミーアには猫に変身して屋敷に居てもらうことにした。
でも冒険者として外で活動する時は人間の姿じゃないと不味いから、人間の姿のミーアはスタイロンさんのところに住み込みしていることにしたんだ。
早速猫の姿になったミーアを抱いてスタイロンさんに御礼を言った後、俺達は屋敷に戻った。
「ヒロシ様、お帰りなさいませ。
おや、ミーア様は如何されましたか?」
セバスさんの質問は想定内。
「いくら冒険者としての相棒でも、ひとつ屋根の下は良くないかと思ってね。王妃様達も来られるしな。
だから、スタイロンさんの店に住み込みにしてもらったんだ。
ミーアはあの店の専属になったからね。」
「承知致しました。賢明なご判断だと思います。
それで、そちらは?」
「ああ、そこで寂しそうにしていたから拾ってきた。
不味かったか?」
「いえ、首輪も付いていませんし、飼い猫ではないと思います。
宜しいのではないでしょうか。」
俺が懐から取り出した子猫を見て、セバスさんの顔も綻ぶ。
やっぱり可愛い小動物は最強だな。
「それで、その子はなんとお呼びすれば?」
セバスさんの満面の笑みが早く教えろと圧を掛けてくる。
名前かー。考えて無かった。
「ニャーはどうだ?」
いつの間にか揃っているメイドさん達一同が聞かなかった振りをしている。
やっぱりダメか。
「シャルなんていうのは…」
やっぱり無言。
皆んなが期待の目を向けてくるが、残念なことに、俺のネーミングセンスは最悪みたいだ。
それからいくつかの名前候補を出してみたが、どれも不評みたいだった。
俺は自棄になって、叫ぶ。
「じゃあ.タマは?」
さっきまでソッポを向いていたメイドさん達が一斉にこちらを向く。
しまった!いくらなんでも猫にタマって。俺はいったい何を考えてたんた。
「ご、ごめん。冗談「「「タマ!すっごく可愛いです。」」」…へえっ?」
この世界のネーミングセンス分からん。
こうして猫の姿のミーアは俺を除く全員一致でタマになったのだ。
俺としては不本意だが、まぁ、ミーアもお気に入りみたいだし、良しとするか。
早速ミーアの部屋が俺の隣り、元々ミーアが使う予定だったところになった。
ミーアの世話係は、メイドさんが交代でしてくれるみたい。
セバスさんとマイヤーさんもローテーションに入っていたのは、知らなかったことにしておくよ。
晩ご飯の支度が出来るまで、王妃様、セバスさん、マイヤーさんは、俺とイリヤ姫様の出会いの話しで盛り上がっている。
途中、王家専属の吟遊詩人達がやってきて、詩にすると言い出したので、それだけはイリヤ姫様とふたりで全面的にお断りしたんだ。
ただ、ふたりで必死に懇願する姿が仲良く見えたとかで、そのことだけは詩にされていたと、大入りの大衆演劇になってから気付いたんだけどね。
ともかく、晩ご飯も終わり食後のお茶も堪能した王妃様達は、お城へと帰って行った。
玄関からでは無くて地下室の隠し扉から。
驚いている俺にセバスさんが教えてくれる。
この屋敷は建てた時からお城と地下で繋がっているのだと。
先王が住んでいたのだから繋がっていてもおかしくないんだけどね。
どおりで警護兵が少ないはずだよ。
ちなみに、地下通路はお城の地下室の隠し扉と繋がっていて、歩いて30分くらいだそうだ。
地下室に降りてみると暗いはずの地下通路に煌々と灯りが灯っていて、通路の端には馬車止めや御者控え室まであった。
その控え室で待っていたのか、すでに馬車は出発の準備を終えていた。
王妃様達が帰ったのを見計らって、俺はミーアを迎えにスタイロンさんの店に急いだ。
「ヒロシ~!」
嬉しそうな顔で俺に抱きついてくるミーア。
厳ついスタイロンさんとふたりで不安だったんだろうな。
俺はミーアを抱きしめてあげる。
「もおー、なかなか帰って来ないから、心配したんだよ。」
怒り調子な言葉と裏腹に満面の笑みが溢れていた。
「ミーア、あのお屋敷はさー、お城と繋がっていてね、いつ王妃様達が来るかわからないんだ。
どっか他に引っ越そうか。」
「ミーアが魔人だから?
人間の姿が不味かったら、猫の姿になっていようか?
だって、王様に逆らったら大変なことになるでしょう?」
ミーアがうわ目使いに聞いてくる。
たしかに理由もなく下賜された家を出るのは不味い気がする。
「でもミーア、猫に変身するのは嫌じゃないの?」
「うーん、別に嫌じゃないよ。
それに猫の姿の方が魔力の消費も少ないしね。
それに、ヒロシは猫の姿も好きだったでしょ。」
はい、大好物です。
「よし、じゃあミーアは俺のところで住み込みをしていることにしてやる。
なに、専属冒険者にはよくあることさ。」
スタイロンさんの案で決まり。
王妃様や姫様が頻繁に来るであろう屋敷に人間の姿のミーアを住まわせるのはなにかと問題ありそうだから、ミーアには猫に変身して屋敷に居てもらうことにした。
でも冒険者として外で活動する時は人間の姿じゃないと不味いから、人間の姿のミーアはスタイロンさんのところに住み込みしていることにしたんだ。
早速猫の姿になったミーアを抱いてスタイロンさんに御礼を言った後、俺達は屋敷に戻った。
「ヒロシ様、お帰りなさいませ。
おや、ミーア様は如何されましたか?」
セバスさんの質問は想定内。
「いくら冒険者としての相棒でも、ひとつ屋根の下は良くないかと思ってね。王妃様達も来られるしな。
だから、スタイロンさんの店に住み込みにしてもらったんだ。
ミーアはあの店の専属になったからね。」
「承知致しました。賢明なご判断だと思います。
それで、そちらは?」
「ああ、そこで寂しそうにしていたから拾ってきた。
不味かったか?」
「いえ、首輪も付いていませんし、飼い猫ではないと思います。
宜しいのではないでしょうか。」
俺が懐から取り出した子猫を見て、セバスさんの顔も綻ぶ。
やっぱり可愛い小動物は最強だな。
「それで、その子はなんとお呼びすれば?」
セバスさんの満面の笑みが早く教えろと圧を掛けてくる。
名前かー。考えて無かった。
「ニャーはどうだ?」
いつの間にか揃っているメイドさん達一同が聞かなかった振りをしている。
やっぱりダメか。
「シャルなんていうのは…」
やっぱり無言。
皆んなが期待の目を向けてくるが、残念なことに、俺のネーミングセンスは最悪みたいだ。
それからいくつかの名前候補を出してみたが、どれも不評みたいだった。
俺は自棄になって、叫ぶ。
「じゃあ.タマは?」
さっきまでソッポを向いていたメイドさん達が一斉にこちらを向く。
しまった!いくらなんでも猫にタマって。俺はいったい何を考えてたんた。
「ご、ごめん。冗談「「「タマ!すっごく可愛いです。」」」…へえっ?」
この世界のネーミングセンス分からん。
こうして猫の姿のミーアは俺を除く全員一致でタマになったのだ。
俺としては不本意だが、まぁ、ミーアもお気に入りみたいだし、良しとするか。
早速ミーアの部屋が俺の隣り、元々ミーアが使う予定だったところになった。
ミーアの世話係は、メイドさんが交代でしてくれるみたい。
セバスさんとマイヤーさんもローテーションに入っていたのは、知らなかったことにしておくよ。
11
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる