33 / 132
ようこそ異世界へ
国王陛下は本気みたいですね
しおりを挟む
「例えばイリヤを娶るとかな。」
お湯にのんびり浸かっている陛下の少し間延びした声から漏れた衝撃的な言葉に思わず吹き出してしまった。
「うん?イリヤは嫌か?」
少し顔が怖い。
「い、いえ、嫌とかそう言うのじゃ無くてですね。
お姫様ですよね。俺なんて庶民も庶民、キングオブ庶民なんですから無理でしょう。」
「うん?庶民は分かるがキングオブなんとかとはなんだ。
キングと言うことは王か?
じゃあなんの問題も無いじゃないか。」
「そ、そうじゃなくて、そうだ、お姫様が嫌がるのではありませんか?」
「それは無い。王妃がよくここに来るだろう。あれはイリヤがここに来たがるからだ。
そちに好意が無いわけなかろう。
まあ、ふたりとも未だ成人前だ。
婚姻は数年後となるだろうが、婚約だけでもどうだ?」
陛下にここまで言ってもらったのだから、これ以上は不敬罪になるだろうし、イリヤ王女様って可愛いし。
「不束者ですが、よろしくお願いします。」
「それは女が言うセリフだ。ガハハ。
とにかく、めでたい。
よし、近いうちに婚約披露パーティーをやろう。」
温泉に当てられたのか、真っ赤な顔いっぱいに笑いをたたえた陛下は、立派なナニを豪快に振り回して更衣室に消えて行った。
しばらくして俺も温泉を出る。
しかしえらいことになってしまった。
目立つのが嫌で静かにしているつもりだったのに、王女様と婚約ってどういうこと。
思いっきり目立つじゃないか。
庶民はもちろん、貴族達全てを敵に回すようなものだ。
この世界で本当に100年も生き残れるのだろうか。
「ヒロシ様、あらやだイリヤの旦那様ってお呼びした方がいいかしら。うふふ。」
「もぉ、お母様ったら。
ヒロシ様が困っておられるじゃないですか。
ヒ、ヒロシ様。
ふ、不束者ですがよろしくお願い致します。」
ウチのみんなもニコニコしちゃって。
「こちらこそ、生粋の庶民ですがよろしくお願い致します。」
「旦那様、姫様との婚約内定おめでとうございます。
ささやかではございますが、祝賀の宴を用意させて頂きましたので、こちらにどうぞ。
王妃様、姫様、国王陛下が既にお待ちになって居られます。
一緒にこちらへ。
おっと、わたしとしたことが、嬉しさのあまり忘れておりました。
さ、こちらのコーヒー牛乳をどうぞ。」
その場で腰に手を当ててコーヒー牛乳を一気に飲み干す。
やっぱり風呂上がりはこれに限る。
王妃様や姫様と食堂に向かうと、豪勢な食事が並んでいた。
イリヤ様との婚約の話しってまだついさっきのことなのに、こんな準備が出来てるなんて、どういうこと?
陛下も既にワインを飲んでるし。
知らぬは俺ばかりということか。
とりあえず、なってしまったことはどうしようもない。
しばらくは流れに身を任せよう。
陛下から婚約内定を言い渡されて3カ月が経った。
その間、俺は午前中はミーアと一緒にラスク亭とスタイロンさんの店の依頼をこなし、午後からはお城でマナーや近隣諸国について学んでいる。
マナーの中には食事方法やダンス、貴族としての作法など多岐にわたり、その他にも領地経営や帝王学なども学ばされている。
普通の中学生だった俺に貴族のマナーなんて分かるわけがないんだけど、案外難しくない。
3年の夏に学校の研修旅行でアメリカに行ったんだけど、その時に教わったテーブルマナーで基本は良いらしい。
言葉使いもそんなに注意はされなかったよ。
マナーの先生には本当に庶民の出自かって聞かれたけど、あっちの世界の方が文明が進んでいるから、その分全体的な水準が高いみたい。
だけど、貴族の作法には閉口した。
話し方とかじゃなくて腹の探り合いみたいな会話の仕方とか、足元を見られないための駆け引きの仕方とか、果てには決闘の仕方まで、細かな決め事や暗黙の了解がたくさんあって覚えきれないんだ。
あとは、勉強については褒められた。
算術については、あっちの方が何百年も進んでいるからね。こちらの宮廷学者よりにも知識では負けない。
科学や物理などは過剰すぎる知識を持っているので、こちらに合わせるのが大変なくらい。
言葉に関しては、話すのはどこの国の言葉でも全く問題ないみたいだ。書くのはできないけどね。
でも文法は日本語に似ているから単語さえ覚えればどこの国の文字もかけそう。
運動は....うん体力が有り余ってるからね。
ダンスについては褒められたよ。音感とリズムがいいって。
あっちに比べてこちらの音楽はリズムも遅くて単調だし、音域もそんなに広くないから、ハードロックを愛聴していた俺としては欠伸が出るくらいだ。
あっそうそう、イリヤ王女様の兄弟つまり第1王子のフランシス様や第1王女のエレーヌ様にもお会いした。
フランシス様は18歳で今年成人になられたばかり。
王太子として政務に忙しい日々を送っておられるそうだ。
エレーヌ様は17歳で隣国ジーポン王国の王太子と婚約されており、18歳の誕生日に嫁ぐことが決まってるそうだ。
おふたりとも気さくな方で、フランシス様とは魔法やスキルの話しで盛り上がるし、エレーヌ様とは編み物の話しで盛り上がる。
特に編み物についてはあちらの世界の方が進んでいるみたいで、俺の編み方を熱心に研究されている。
「ジーポン王国に行ったら王太子様に編んであげたい」って、可愛らしいよね。
こんな感じであっという間の3カ月間だったよ。
お湯にのんびり浸かっている陛下の少し間延びした声から漏れた衝撃的な言葉に思わず吹き出してしまった。
「うん?イリヤは嫌か?」
少し顔が怖い。
「い、いえ、嫌とかそう言うのじゃ無くてですね。
お姫様ですよね。俺なんて庶民も庶民、キングオブ庶民なんですから無理でしょう。」
「うん?庶民は分かるがキングオブなんとかとはなんだ。
キングと言うことは王か?
じゃあなんの問題も無いじゃないか。」
「そ、そうじゃなくて、そうだ、お姫様が嫌がるのではありませんか?」
「それは無い。王妃がよくここに来るだろう。あれはイリヤがここに来たがるからだ。
そちに好意が無いわけなかろう。
まあ、ふたりとも未だ成人前だ。
婚姻は数年後となるだろうが、婚約だけでもどうだ?」
陛下にここまで言ってもらったのだから、これ以上は不敬罪になるだろうし、イリヤ王女様って可愛いし。
「不束者ですが、よろしくお願いします。」
「それは女が言うセリフだ。ガハハ。
とにかく、めでたい。
よし、近いうちに婚約披露パーティーをやろう。」
温泉に当てられたのか、真っ赤な顔いっぱいに笑いをたたえた陛下は、立派なナニを豪快に振り回して更衣室に消えて行った。
しばらくして俺も温泉を出る。
しかしえらいことになってしまった。
目立つのが嫌で静かにしているつもりだったのに、王女様と婚約ってどういうこと。
思いっきり目立つじゃないか。
庶民はもちろん、貴族達全てを敵に回すようなものだ。
この世界で本当に100年も生き残れるのだろうか。
「ヒロシ様、あらやだイリヤの旦那様ってお呼びした方がいいかしら。うふふ。」
「もぉ、お母様ったら。
ヒロシ様が困っておられるじゃないですか。
ヒ、ヒロシ様。
ふ、不束者ですがよろしくお願い致します。」
ウチのみんなもニコニコしちゃって。
「こちらこそ、生粋の庶民ですがよろしくお願い致します。」
「旦那様、姫様との婚約内定おめでとうございます。
ささやかではございますが、祝賀の宴を用意させて頂きましたので、こちらにどうぞ。
王妃様、姫様、国王陛下が既にお待ちになって居られます。
一緒にこちらへ。
おっと、わたしとしたことが、嬉しさのあまり忘れておりました。
さ、こちらのコーヒー牛乳をどうぞ。」
その場で腰に手を当ててコーヒー牛乳を一気に飲み干す。
やっぱり風呂上がりはこれに限る。
王妃様や姫様と食堂に向かうと、豪勢な食事が並んでいた。
イリヤ様との婚約の話しってまだついさっきのことなのに、こんな準備が出来てるなんて、どういうこと?
陛下も既にワインを飲んでるし。
知らぬは俺ばかりということか。
とりあえず、なってしまったことはどうしようもない。
しばらくは流れに身を任せよう。
陛下から婚約内定を言い渡されて3カ月が経った。
その間、俺は午前中はミーアと一緒にラスク亭とスタイロンさんの店の依頼をこなし、午後からはお城でマナーや近隣諸国について学んでいる。
マナーの中には食事方法やダンス、貴族としての作法など多岐にわたり、その他にも領地経営や帝王学なども学ばされている。
普通の中学生だった俺に貴族のマナーなんて分かるわけがないんだけど、案外難しくない。
3年の夏に学校の研修旅行でアメリカに行ったんだけど、その時に教わったテーブルマナーで基本は良いらしい。
言葉使いもそんなに注意はされなかったよ。
マナーの先生には本当に庶民の出自かって聞かれたけど、あっちの世界の方が文明が進んでいるから、その分全体的な水準が高いみたい。
だけど、貴族の作法には閉口した。
話し方とかじゃなくて腹の探り合いみたいな会話の仕方とか、足元を見られないための駆け引きの仕方とか、果てには決闘の仕方まで、細かな決め事や暗黙の了解がたくさんあって覚えきれないんだ。
あとは、勉強については褒められた。
算術については、あっちの方が何百年も進んでいるからね。こちらの宮廷学者よりにも知識では負けない。
科学や物理などは過剰すぎる知識を持っているので、こちらに合わせるのが大変なくらい。
言葉に関しては、話すのはどこの国の言葉でも全く問題ないみたいだ。書くのはできないけどね。
でも文法は日本語に似ているから単語さえ覚えればどこの国の文字もかけそう。
運動は....うん体力が有り余ってるからね。
ダンスについては褒められたよ。音感とリズムがいいって。
あっちに比べてこちらの音楽はリズムも遅くて単調だし、音域もそんなに広くないから、ハードロックを愛聴していた俺としては欠伸が出るくらいだ。
あっそうそう、イリヤ王女様の兄弟つまり第1王子のフランシス様や第1王女のエレーヌ様にもお会いした。
フランシス様は18歳で今年成人になられたばかり。
王太子として政務に忙しい日々を送っておられるそうだ。
エレーヌ様は17歳で隣国ジーポン王国の王太子と婚約されており、18歳の誕生日に嫁ぐことが決まってるそうだ。
おふたりとも気さくな方で、フランシス様とは魔法やスキルの話しで盛り上がるし、エレーヌ様とは編み物の話しで盛り上がる。
特に編み物についてはあちらの世界の方が進んでいるみたいで、俺の編み方を熱心に研究されている。
「ジーポン王国に行ったら王太子様に編んであげたい」って、可愛らしいよね。
こんな感じであっという間の3カ月間だったよ。
1
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる