100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

まーくん

文字の大きさ
37 / 132
ようこそ異世界へ

アルマニ領に行こう

しおりを挟む
セバスさんからアルマニ領の哀しい話しを聞いて、イリヤ王女様はすすり泣いている。

俺もイリヤ王女様も生まれる前のことだし、アリオ様のことは知らない。
ただ、戦争やら魔物の脅威が日常的なこの世界では、ある意味感情移入してしまうのかもしれない。

平和な世界から来た俺にとっては哀しく遠い昔話で感情移入までいかないのだが。

それでも、アルマニ領を2度とそんな悲劇にさせないと、俺はひとり心に誓うのだった。

その後会場に戻った俺とイリヤ王女様が解放されたのは、日付が変わってしばらくしてからのことだった。

3日後、屋敷にいた俺はお城に呼ばれた。

そして正式に公爵に陞爵され、アルマニ領の領主となったんだ。

上手く騙されたような気がしなくもないけど、セバスさんから聞いたアルマニ領の悲劇を考えると、何か使命感みたいなものも湧いてきたし。

陛下や王妃様、イリヤ王女様と話しをして、今住んでいる屋敷はそのまま王都の別邸として置いておき、一旦アルマニ領に向かうことになった。

王女殿下の伴侶として新たに領主となる俺が、アルマニ領に入ることで、復興の進むアルマニ領に更なる活気が出るだろうとの考えからだ。

イリヤ様は一緒に行けないことを寂しがったけど、未だ向こうの受け入れ体制が整っていないだろうから、危険があるかもしれないからね。

王家騎士団から10人ほどが護衛について来てくれることになったし、屋敷からもセバスさんとサリナさんが来てくれることになった。

そして、それから1週間後、屋敷前に停まっている2頭立ての豪華な馬車に荷物を積み込み、俺達はアルマニ領に向けて出発した。

もちろん俺の膝の上にはタマの姿となったミーアが丸くなっているよ。

ちなみに馬車にはサスペンションを着けてある。

板バネなんだけど、鍛冶屋に無理を言って作ってもらったんだ。

何に使うかなんて説明してないよ。

だってラノベでも馬車のサスペンションってすごく驚かれるし、注目されるじゃない。

公爵になっただけでも目立って大変なのに、これ以上目立ちたくないしね。

舗装されていない街道でもほとんど揺れを感じさせないから、馭者やセバスさん達もサスペンションの効果に満足そうだ。

アルマニ領までは馬車で1週間の旅になる。

途中4つの街で宿泊し、3回の野宿になる。
道中3回盗賊団に狙われた。

3回ともあらかじめ気配察知で分かっていたから、気配遮断結界を全体に掛けて気付かれずに済んだけどね。

当然休憩時間にトイレに行くとか言って、サクッと壊滅させといたよ。

だって他の人達が襲われたら危ないからね。

民を守るのは領主の務めだよ。



屋敷を出てからちょうど1週間後、予定通りアルマニ領に入る。

領境の検問所では、アルマニ領の代官と警備隊長が出迎えてくれた。

「これはこれは、遠路お疲れ様でした。わたしはアルマニ領の代官職を預かっておりますステファンと申します。

こちらは警備隊長のマティスです。

ヒロシ様におかれましてはこの度の陞爵並びにイリヤ王女との婚約、誠に喜ばしく存じます。

また新しくアルマニ領の領主としてお迎えするにあたり、領民を代表して歓迎致します。」

「ありがとうございます。ヒロシ・デ・アルマニです。
わたしはお会いしたことがありませんが、亡き父に負けぬよう、良政を行いたいと思っておりますので、よろしくお願いします。」

「こんなご立派な御子息がおられて本当に良かった。

ヒロシ様、ご立派だったお父上の意思を受け継ぎ、このアルマニ領を昔のような豊かで繁栄した地にして下さいませ。」

陛下の考えられた設定じゃ、俺はアリオ様の隠し子ってことになってるからね。

ステファンさんもマティスさんも号泣しているよ。

ちょっと後ろめたいけど、しようがないよね。

「ごほん。お取り込み中のところ申し訳ありません。

わたくし、アルマニ公爵家の執事長を賜っております、セバスと申します。

公爵様におかれましては、長旅のお疲れが残っておられるご様子。

お城の方にご案内頂ければありがたいのですが。」

「こ、これはわたしとしたことが…

つい感動のあまり、我を忘れてしまいました。

では、早速ご案内させて頂きます。

ところで、セバス様とおっしゃられると、先王の時に侍従長を務めておられた前ユズル男爵様では?」

「ええ、今はヒロシ様の執事長ですが。」

「おお、王国始まって以来の天才と名高い前ユズル男爵様までご一緒だとは…

本当にこの上ない喜びだ。くうっ くっくっ ううっ うっうっ…」

おーい、また泣き出したよ。
いつになったらお城に着くんだろうか。




ステファンさん、マティスさんに案内されてお城に向かう。

領境の検問から15分ほど移動すると、舗装された石畳みの街道が見えてきた。

街道の両側には宿屋や食堂、飲み屋などが並んでおり、旅姿の人々が出入りしている。

更に進むと、城壁に囲まれた門が現れた。

ここからが城内になるようだ。

マティスさんが先に進み、門番に話しかけている。

馬車が到着する頃には門が大きく開けられ、警備隊のメンバーが整列している。

「旦那様、窓から手を振ってあげて下さい。」

セバスさんにそう声を掛けられて俺は窓から手をゆっくりと振る。

出来るだけにこやかに、そして威厳を持って。

俺なりに頑張ったんだけど、やっぱりぎこちなかったんだろうな。

セリナさんが苦笑してセバスさんに叱られていたからね。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...