100年生きられなきゃ異世界やり直し~俺の異世界生活はラノベみたいにはならないけど、それなりにスローライフを楽しんでいます~

まーくん

文字の大きさ
118 / 132
エピローグ

その人の名は

しおりを挟む
取引き先のホームパーティーに向かう途中で、俺は運命の出会いをすることになった。

ひとりの女性が靴の紐が切れて困っているってベタなシチュエーションに出くわした。

清楚な佇まいに愛らしい顔つき、でも意思の強さを感じる知性的な女性。

一目ぼれとかじゃなくて、なんとなく俺の第六感が彼女を引き付ける。

俺は予備で持っていた靴紐をその彼女に渡してあげた。

何故そんなに靴紐を持っているかって。

あっちの世界で俺は何回も殺されているんだ。何事にも用心深くなっているのは当然だろう。

靴紐だってTPOに合わせて10本くらい持ち合わせているぞ。

彼女とはそこで別れ、少し遅くなったのでパーティー会場へ急ぐ。




結果から言うと、得意先令嬢との恋愛はなかったよ。

ホームパーティー会場について酒と食事をして終わり。

あちらも日本企業に合わせた社交辞令ってやつだね。

親父に結果を連絡しても、「そうか」の一言で終わったから、それで良かったのだろう。

もちろんその取引き先企業とは、その後も問題無くお付き合いさせて頂いた。

その後、ロシアでは靴紐の彼女と再会すること無く、俺は別の国へと移動した。




それから20年。45歳になった俺は社内の内紛に巻き込まれる。

俺が海外を飛び回っている間に、社内は社長となった兄貴を推す社長派と俺を社長に擁立しようと考えている常務派の2つに分かれていたんだ。

俺には社長になりたいなんて気持ちは全く無かったんだけど、それは会社の実権を取りたい常務の陰謀だった。

兄貴も次の社長は自分の子供って考えていたから、俺が邪魔だったのかもしれない。

まぁ、俺にはあっちの世界で持ったスキルがあるし、この程度のことは慣れっこだったから、何の問題も無い。

兄貴から適当に退職金をせしめてとっとと会社を辞めた。

その後常務派がどうなったかなんて知らないよ。




日本に帰って来た俺は、東京の郊外にマンションを購入してミーアとふたりで暮らし始める。

実はこの辺り地元ではパワースポットとして有名なところで、魔力が特に濃いところだったんだ。

現代日本に魔力を感じられる人なんていないから、誰も気付かないだろうけど俺達には分かる。

ここでは少しだけ魔法が使えるようになった。

ミーアは変身出来るくらい。
俺は収納くらいかな。

でもこの2つがあればこの先の生活が楽になるのは間違いない。

だって収納には食べ切れないくらいの食糧と金塊が入っているんだからね。

一応働き先はリモートワーク出来るところを選んだ。

外国語が堪能で商社の海外駐在経験豊富だから、貿易事務関係の会社に入ったんだ。

これでミーアと一日中一緒に居られるね。


金塊は少しづつ海外のインターネットサイトを通して売却していった。

まとまった取引きをして入手先を問い質されても困るからな。

少しづつ金を現金化しているが、あまり使うことが無いため貯金はどんどん貯まっていく。

もう働く必要も無いんだけど、何かしていないと落ち着かないんだよね。



しばらく経ったある日、会社からロシアの現地企業に連絡を入れて欲しいとの依頼を受ける。

輸入申請されている数と実際に入ってきた数が合わないんだけど、確認した相手側のロシア訛りがひどくて何を言っているか分からないから、代わりに対応して欲しいとのことだった。

最近はインターネットの発達でパソコンを使ってテレビ電話が出来るようになってきた。

まだ通信速度の問題で完全とは言えないって聞いたけど、顔を見て話せるだけで充分だ。

俺はパソコンで指定されたインターネットアドレスに接続する。

画面には俺と同じくらいの女性の顔が。

「「あっ!」」


ロシアで靴紐をあげた彼女だった。

彼女が向こうの会社の担当者みたいで、普段はロシアの西北にある小さな港町で俺と同じく貿易事務をしているとのこと。

あの日はたまたま友人の結婚式でモスクワに来ていたらしい。

トラブルの件については実に単純ですぐに解決した。

それ以来、彼女とはテレビ電話で時々話す間柄になった。

彼女の名はイリア。偶然似た名前なのか生まれ変わりなのかは分からない。

俺が彼女に運命を感じたのと同じように彼女も何かを感じていたらしいから、やっぱり生まれ変わりなのかも。

別に彼女と付き合いたいとか、結婚したいとかそんなことはみじんも思っていない。

だって彼女はあのイリヤじゃないんだから。


向こうも早くに旦那様を亡くしているみたいで一人暮らしみたいだ。

俺達はミーアも交えていろいろと会話を楽しんだ。

ミーアはイリアさんと会う時は人間の姿に変身して俺の子供のように振舞っている。

以前イリヤとお茶を飲みながらたわいもない話しをしていた時のことを思い出すよ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...