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第1章 新たな生活を始めようか

ヒロシ、山を買ったってよう2

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マンションに戻ってきたヒロシは隣の部屋のミーアを起こしに行く。

「ミーアそろそろ起きないか。」

「う~ん、ヒロシ~~オハヨー。」

「ミーアおはよう。ちょっと一緒に来て欲しいところがあるんだけど。どう?」

「いいよー、どこ?」

「こっち、こっち」

ミーアの手を引いて隣に部屋へ。

「何これ、魔法陣じゃん。」

「そう転移の魔方陣。これで行くんだよ。」

ミーアの手を引いて魔方陣に移動。送信の魔方陣を起動する。

「ふわあー。すごい山の中だね!!」

魔方陣の光が消えて石の小屋を出ると、そこに広がる辺り一面の木にミーアが驚きの声をあげている。

「ここに2人で住める家を建てようか。ムーン大陸に最初に行った時みたいにさー。」

「いいね!そうしようよ。どんな家が良いかなあー。」

「そうだね、よく考えて建てようね。とりあえず一旦戻ろうか。」

「うん。楽しみだねー。」



「ここが玄関でしょー、それで部屋数は1,2,う~ん10くらいあれば良いかな?」

マンションに戻るとミーアは早速紙に家の絵を描き始めた。

「さてと、先に偽装工作を仕掛けておくかな。」

ヒロシは山から持ってきた石のブロックを前に土魔法を発動する。

「ゴーレム生成!」

いつもの武骨なゴーレムではなく丸みのある身体つきに小さな頭、細く長い手足。

そう、ヒロシが生成したゴーレムは人間の形をしている。

「うーん、こんなところかな。」

その姿は75歳の榎木広志そのものだった。

「よし、ゴーレム広志、起動!」

ヒロシのコールと共にゴーレム広志が動き出す。

最初はゆっくり動きながら指の曲げ伸ばし、膝の曲げ伸ばしを何回か行い、そして気を付けの姿勢からおもむろに上半身を90度曲げ言葉を発した。

「ヒロシ様、この度はわたしを生成して頂きありがとうございました。ヒロシ様に忠誠を誓うことをお約束いたします。」

「まあ、そんなに堅苦しくしなくていいからさあ。君には榎木広志としてこのマンションの住人になって欲しいんだよ。
とは言っても特に何をする必要もない。宅配便を受け取ったり、昼間に近くの公園を少し散歩したりするくらいでいいんだ。

とにかく、榎木広志がここに元気に住んでいることさえアピールできればそれでいいんだ。

簡単な言葉と会話の内容は記憶させておいたからね。想定外の質問を受けたりした場合は、念話で俺に聞いてくれたらいいから。

わかった?」

「はいヒロシ様。会話の受け答えについてはAI学習に取り込みました。
また、これまでの記憶についてもヒロシ様から送られたものを時系列に整理し、AIとの紐付けが完了しております。」

「了解。俺とミーアはあっちとこっちを行ったり来たりすることになると思う。

しばらくしたら向こうにいる時間の方が多くなると思うけどしっかり頼むよ。」

「承知致しました。ヒロシ様。」

「じゃあ早速今日からお願いするね。」

いつの間にかミーアがこちらに近寄ってきていた。

「ヒロシー、また変なもの作ったねー。でも前のヒロシにそっくりだよ。
間違えちゃいそうだねー。」

「ミーアがそう言うなら大丈夫かな。さあ向こうに行って家を建てようか。」

「うん。」

俺達2人は魔方陣に乗って山に向かった。


「ミーア、家の絵は描けたかい?」

「出来てるよ。ほら。えーとね、あれがこうして、ここがこうで、これとこれが......」

ミーアが自信満々に渡してきた絵を見て唖然とする。

部屋がたくさんあるのは分かるが、玄関も無ければ水回りなど生活に必要なものが全く見当たらない。

でもなんとなくミーアが言いたいことは分かる気がする。
何せミーアとは300年近い付き合いだからね。

「土魔法、ゴーレム家を作って!」

いつものように土をゴーレムに代えて移動させそれをブロックとして積み上げていく。

勝手に移動しながら次々にブロック化して積みあがっていくからあっという間に形が出来ていく。

今回は小さなゴーレムで1辺50cmになるようにしたから、細かいところも生成できるようになっている。

「相変わらずヒロシの魔法はすごいねー。あっという間に形になっていくよー。」

大体積みあがった後は10cmサイズにしたゴーレムを生成、細かいところを作っていく。

小一時間後、俺のイメージ通りに全ての石が積み上がり、家ができた。

「うん、こんなもんかな。ミーア、どうだい?」

「すごいよヒロシー。僕の描いた絵の通りなのー。」

俺はミーアの言葉に苦笑しながら、ミーアに「さあ、内装を始めようか。」と手を引いて中に入っていった。

内部もきれいに仕上がっていてほとんど手を入れるところが無いくらい。

「おっと便器とかエアコン、冷蔵庫とか必要な資材が届いたようだな。ミーアちょっと取りに行ってくるよ。」

俺はマンションに戻り、届いたばかりの資材を魔方陣に載せて山へと運び込む。

「これを取り付けてくれるゴーレムが必要だな。ゴーレム生成 電気工事士!」

俺も日本に戻ってきてから魔法関連で何もしていなかったわけではない。様々な職種の知識を持って帰ってきた魔石に記憶させ、様々な機能を持ったゴーレムを作れるようになっていたのだ。

それにここはエレメントスではなく、奥深い山間であっても日本だ。
今ではモバイル通信の中心になっている衛星通信を使えばインターネットを使い放題。
いくらでも新しい知識を魔石に取り込むことができる。

こうして電気工事のノウハウを持ったゴーレムが次々と電気設備を取り付けていく。

ところが、しばらくして全てのゴーレムが作業を止めてこちらにやってきた。

「うん?あっ、しまった。発電設備を作り忘れているよ。」

俺は少し離れたところで大量の巨大ゴーレムを作成し、300mほど離れた川からの水路を作らせると共に、その開いた大穴を利用して小型水力発電装置を設置させた。

やがて水路を流れてきた大量の水が水力発電装置に流れ込み無事に発電が開始されると、再び電気工事ゴーレムが動き出し、発電機から家までの配線を引いていく。

「おっと、水があふれる前に川に戻さなきゃな。」

発電機を設置した池から川下に向かって新しい水路を構築。水を川に戻すことで無事水源と電気の確保が完了した。

電気工事ゴーレムが全ての仕事を終え土へと戻っていく。

「さあミーア、中に入ろうか。」
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