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第6章 ランスとイリヤ
19 【王城での報告】
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<<ネクター視点>>
魔物の大発生から数日経った。
今王都は、特需に沸いている。
貴重な魔物の素材が大量に入荷されたためだ。
しかも王都の近郊で討伐されたおかげであり得ないくらい新鮮な上に、風魔法による切り口が1カ所だけという、ほぼ無傷の状態なので高値で取り引きされている。
本来なら、そのほとんどを討伐したマサル殿が、大半の利益を得る資格があるが、彼に欲が無いのは今に始まったことではない。
そのまま冒険者達に渡そうととするので、その場でルールを決めた。
1.解体や王都への運び入れは、騎士団も行う。
冒険者が解体したものについては、冒険者が所有する権利を有するが、売り上げの1割はカトウ公爵に渡すこととする。
2.素材の売買は、冒険者ギルドを通して適性価格で行うこと。
3.素材の売買は国内のみとする。
以上3点。
カトウ公爵家への報酬は別途考えるが、素材からの最低限の報酬は取ってもらわないと、他の貴族達から反感をかう恐れがある。
また貴重な素材も多く、他国にそれらが流れた場合、流れ無かった国との間に余計な軋轢を作るのは避けたいところだ。
ともかく、王都は近年稀にみる好景気に沸いている。
もちろん、カトウ運輸を通じて素材は王国各地に流通しているため、王国中が恩恵を受けていると言えよう。
さて、今日はマサル殿が先日の調査報告に来る予定だ。
「陛下、カトウ公爵が謁見を求めてお越しになっております。」
「わかった。この部屋で会おう。
ナーラ宰相も同席させてくれ。
後、この部屋には誰も近づかぬよう配慮願う。」
「承知致しました。」
1ヶ月ほど前に、宰相のモリアートが家長を息子に譲り引退した。
その際に宰相職も辞任したため、急遽ヘンリーを宰相に抜擢したのだ。
モリアートの奴、これからは嫁と2人で全国を廻りながら観光や名産を楽しむと言っておったわ。
マサル殿に馬車を発注した時から、おかしいと思っておったのだ。
しばらくして、マサル殿とヘンリーが執務室に入って来た。
「マサル殿、ご苦労であったな。
して、調査結果はどうであった?」
「はい、原因ははっきりしました。
まず西側に発生した動物達ですが、やはり南側に発生した魔物に追われて森を出てきたようです。
魔物については、動物達を追いかけていたというよりも、魔物自体が追われていました。
これは森の木の倒れ方や森の中で圧迫死していた動物の死骸が食べられていなかったことからも証明できます。
魔物が何故大量発生して、何に追われていたかということですが、少し込み入った話しになります。
まず魔物の大量発生ですが、森の南側、ナーラ領側ですがそこに縦穴があり、大量の瘴気が出ておりました。
恐らくその瘴気に当てられた周辺の動物達が魔物化したと思われます。
次にその瘴気が何故発生したのかですが、実際にその縦穴を探ってみると、長い横穴に繋がっており、その先にはナージャがいました。」
「ナージャというと?」
「ヘンリー様、わたしがこの地に来てすぐにナーラ領で瘴気の大量発生があったことを覚えておられますでしょうか?」
「マサル殿にジャン達と調査に行ってもらった時だな。
確かマリス様や竜に会ったと………あっ、あの時の竜の名前が確かナージャだったな!」
「その通りです。マリス様から旧都の守護を任されていたあの竜です。
あの後、彼は瘴気の発生場所を探し続けていたのですが遂に見つけました。
瘴気が漏れている岩盤をブレスで破壊すると、そこに瘴気の発生原因となる物質があったそうです。
この物質については、後で説明します。
ナージャが吐いたブレスは、壁を壊した後、勢い余ってそのまま岩盤を貫き、森に繋がる横穴を開けてしまったのです。
そのせいで、元々あった縦穴とナージャが開けた横穴が偶然繋がり、大量の瘴気が森に流れ込んだということです。」
「なんということだ。真実は小説より奇なりというが、信じ難い内容だな。
我等は過去からの情報を持っておるから、信じられるが他の者に信じろと言うのは無理があるな。」
「その後しばらくしてナージャが自分が開けた横穴を通って、それに繋がっている縦穴を抜けると森に出ました。」
「なるほど、突如現れた竜に驚いた魔物達が、一斉に逃げ出したということだな。」
「その通りです。一応森の中を上空から確認しましたが、魔物の姿はどこにもありませんでした。」
「魔物の件についてはわかった。
それで瘴気の方だが。」
「はい、瘴気の正体は、我々の世界にあった『放射能』と呼ばれる物質でした。
ナージャが既にそこにあったものは全て燃やし切ったと言っていましたし、実際に瘴気を浄化した後は、その発生を確認出来ませんでした。」
「とりあえずは大丈夫だな。調査ご苦労であったな、マサル殿。」
とりあえずの騒動は、一件落着というところか。
さて、ランス君とイリヤちゃんへのご褒美を考えなければな。
魔物の大発生から数日経った。
今王都は、特需に沸いている。
貴重な魔物の素材が大量に入荷されたためだ。
しかも王都の近郊で討伐されたおかげであり得ないくらい新鮮な上に、風魔法による切り口が1カ所だけという、ほぼ無傷の状態なので高値で取り引きされている。
本来なら、そのほとんどを討伐したマサル殿が、大半の利益を得る資格があるが、彼に欲が無いのは今に始まったことではない。
そのまま冒険者達に渡そうととするので、その場でルールを決めた。
1.解体や王都への運び入れは、騎士団も行う。
冒険者が解体したものについては、冒険者が所有する権利を有するが、売り上げの1割はカトウ公爵に渡すこととする。
2.素材の売買は、冒険者ギルドを通して適性価格で行うこと。
3.素材の売買は国内のみとする。
以上3点。
カトウ公爵家への報酬は別途考えるが、素材からの最低限の報酬は取ってもらわないと、他の貴族達から反感をかう恐れがある。
また貴重な素材も多く、他国にそれらが流れた場合、流れ無かった国との間に余計な軋轢を作るのは避けたいところだ。
ともかく、王都は近年稀にみる好景気に沸いている。
もちろん、カトウ運輸を通じて素材は王国各地に流通しているため、王国中が恩恵を受けていると言えよう。
さて、今日はマサル殿が先日の調査報告に来る予定だ。
「陛下、カトウ公爵が謁見を求めてお越しになっております。」
「わかった。この部屋で会おう。
ナーラ宰相も同席させてくれ。
後、この部屋には誰も近づかぬよう配慮願う。」
「承知致しました。」
1ヶ月ほど前に、宰相のモリアートが家長を息子に譲り引退した。
その際に宰相職も辞任したため、急遽ヘンリーを宰相に抜擢したのだ。
モリアートの奴、これからは嫁と2人で全国を廻りながら観光や名産を楽しむと言っておったわ。
マサル殿に馬車を発注した時から、おかしいと思っておったのだ。
しばらくして、マサル殿とヘンリーが執務室に入って来た。
「マサル殿、ご苦労であったな。
して、調査結果はどうであった?」
「はい、原因ははっきりしました。
まず西側に発生した動物達ですが、やはり南側に発生した魔物に追われて森を出てきたようです。
魔物については、動物達を追いかけていたというよりも、魔物自体が追われていました。
これは森の木の倒れ方や森の中で圧迫死していた動物の死骸が食べられていなかったことからも証明できます。
魔物が何故大量発生して、何に追われていたかということですが、少し込み入った話しになります。
まず魔物の大量発生ですが、森の南側、ナーラ領側ですがそこに縦穴があり、大量の瘴気が出ておりました。
恐らくその瘴気に当てられた周辺の動物達が魔物化したと思われます。
次にその瘴気が何故発生したのかですが、実際にその縦穴を探ってみると、長い横穴に繋がっており、その先にはナージャがいました。」
「ナージャというと?」
「ヘンリー様、わたしがこの地に来てすぐにナーラ領で瘴気の大量発生があったことを覚えておられますでしょうか?」
「マサル殿にジャン達と調査に行ってもらった時だな。
確かマリス様や竜に会ったと………あっ、あの時の竜の名前が確かナージャだったな!」
「その通りです。マリス様から旧都の守護を任されていたあの竜です。
あの後、彼は瘴気の発生場所を探し続けていたのですが遂に見つけました。
瘴気が漏れている岩盤をブレスで破壊すると、そこに瘴気の発生原因となる物質があったそうです。
この物質については、後で説明します。
ナージャが吐いたブレスは、壁を壊した後、勢い余ってそのまま岩盤を貫き、森に繋がる横穴を開けてしまったのです。
そのせいで、元々あった縦穴とナージャが開けた横穴が偶然繋がり、大量の瘴気が森に流れ込んだということです。」
「なんということだ。真実は小説より奇なりというが、信じ難い内容だな。
我等は過去からの情報を持っておるから、信じられるが他の者に信じろと言うのは無理があるな。」
「その後しばらくしてナージャが自分が開けた横穴を通って、それに繋がっている縦穴を抜けると森に出ました。」
「なるほど、突如現れた竜に驚いた魔物達が、一斉に逃げ出したということだな。」
「その通りです。一応森の中を上空から確認しましたが、魔物の姿はどこにもありませんでした。」
「魔物の件についてはわかった。
それで瘴気の方だが。」
「はい、瘴気の正体は、我々の世界にあった『放射能』と呼ばれる物質でした。
ナージャが既にそこにあったものは全て燃やし切ったと言っていましたし、実際に瘴気を浄化した後は、その発生を確認出来ませんでした。」
「とりあえずは大丈夫だな。調査ご苦労であったな、マサル殿。」
とりあえずの騒動は、一件落着というところか。
さて、ランス君とイリヤちゃんへのご褒美を考えなければな。
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