最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

まーくん

文字の大きさ
160 / 382
第7章 研究室と亜人大陸

19 【閑話 デカの思い出】

しおりを挟む
<<デカ視点>>
わたしは、ヤライ族のデカ。
元気な8歳の女の子です。

今日はお父様の誕生日。
お父様に何かプレゼントをしたくて、森に来たの。

もちろんお父様には内緒よ。

おっきな森にはキノコや果物なんかがいっぱいあるの。

奥の方に入ると怖い魔物や動物がいるから、危ないって言われてるの。

だから森の奥には近づかないように気をつけなくっちゃ。


森の中に入って行くとキノコがあった。

これは食べられるヤツね。
こっちは毒キノコだわ。

あっ、あそこにウサギがいた!
よく太っていて美味しそう。

お父様はウサギの肉が大好物だったわね。

捕まえなきゃ。
精霊様、力を貸して下さいね。

わたしは、風の精霊魔法を使って、ウサギを射ようとした。

あっ外れた。

驚いたウサギが逃げていく。

待って!

わたしは、夢中でウサギを追いかけた。

しばらくして、ウサギを見失ったわたしが我に返るとそこは深い森の奥だった。

「…………帰り道が分からないよう。」

どうしよう。

途方に暮れる。
まだ8歳のわたしには、どうすることもできない。

そんな時、遠くでオオカミの遠吠えが聞こえた。

わたしは怖くてその場にうずくまり、ただただ1人で森に来たことを後悔することしか出来ない。

元々薄暗い森の中、時間だけが過ぎていく。

ガサ…ガサガサ……

心細さにすすり泣きしていた時、少し離れたところで、草が擦れ合う音がした。

何かいる。

直感でそう思った。

そして、その瞬間草の間からオオカミの顔が覗いた。

オオカミと目が合った。

オオカミがヨダレを流しながらこちらに近づいて来る。

いやっ、来ないで!

わたしの願いも虚しくあと少しのところまで、オオカミが近づいて来た。

わたしは目を瞑って神様に祈るしかできない。

シュッ! ギャン!!

オオカミの悲鳴にも似た声に、恐る恐る目を開ける。

目の前にオオカミは血を流して横たわっていた。

カサッ…カサッ…

また何かが近づいて来る。

今度はエルフだった。

でも少し身体の色が黒い。

あっダークエルフだ。

わたし達の国を植民地にして、食べ物なんかを無理やり奪っていく悪い人達。

たまに、若い人が連れ去られていくって、隣の家のマシおばさんが言ってたっけ。

わたしも捕まって連れて行かれるのかなぁ。

そんなことを考えていると、そのダークエルフに声を掛けられた。

「こんな森の中で何をしている?」

「ウサギを追いかけてたら、迷い込んじゃったの。」

泣きべそをかきながら答えると、ダークエルフは優しく抱き寄せてくれた。

「こんなところで1人で心細かっただろう。

これをお食べ。」

ダークエルフは、腰に付けた袋から干し肉を出してわたしにくれた。

わたしのお腹は、干し肉を見た途端に『キュウ~』と鳴った。

わたしは恥ずかしくて、横で笑い転げるダークエルフを睨みつけた。

「あははは……

ごっごめんね。笑ったりして。
レディに失礼だったね。

僕の名前は、アーク。見た通りダークエルフだ。

君は?」

「デカ、ヤライ族のデカ。」

わたしは、恥ずかしさも忘れて干し肉に齧り付きながら答えた。

「そうか、ヤライのデカか。
干し肉はもっとあるから好きなだけお食べ。」

アークはそう言うと、水筒から水も分けてくれた。

それから、わたしはお父様の誕生日プレゼントを探しに森に来たこと、ウサギを追いかけていたらどこにいるのか分からなくなったことをアークに話した。

「ちょっとここで待っててね。」

そう言うとアークは、草の中に消えてしまった。

また1人になって不安になったけど、5分くらいで手にウサギを持ったアークが戻って来た。

「はい、お父様へのプレゼント。

君にはこれをあげるよ。受け取ってくれるかな。」

ウサギと一緒に渡されたのは、赤い小さな球に糸を通した首飾りだった。

「ありがとう。大切にするね。」

わたしの言葉にアークは嬉しそうに頷いた。

「さあ、家に帰ろうか。」

アークはわたしの手を取ってゆっくりと歩き出した。

途中、わたしとアークはいろんな話しをした。

「さあ、ここを真っ直ぐに行くとヤライだよ。

ここでお別れだ。

また逢えたらいいね。」

「うん、ありがとう。また逢いたいね。」

こうして、わたしはアークと別れて家へと帰った。

もちろん、お父様には大目玉を食らったけど、アークのことは話さなかった。

そうそう、ウサギは美味しかったよ。

またいつかアークと逢えたらいいな。

わたしは赤い球を見ながらそう神様にお願いしたんだ。





しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

処理中です...